推し活×スポーツ

プロ野球と​推し活|史上最多2,700万​人動員の​裏に​ある​「推し球団」​文化

プロ野球ファンは、推し活という言葉が生まれる何十年も前から推し活をしてきました。

野球場でタオルを掲げる観客席の様子

ファンは推しのユニフォームを着てコール(応援歌)を歌い、遠征してホームとビジターの現場に通います。この記事では、日本最古の推し活ともいえるプロ野球のファン文化を、最新データとともに掘り下げます。

この記事の背景:研究所は2025年4月、Podcast第4回とnote記事「スポーツファンを”推し”に変える驚くべき仕掛けとは」でプロ野球・Jリーグ・Bリーグの推し活化を分析しました。本記事はその内容を、2026年の最新データ(2025年シーズンの史上最多動員など)で更新したものです。

データ: 2025年、史上最多の約2,700万人

NPB(日本野球機構)の公式発表によると、2025年のセ・パ公式戦の入場者数は約2,700万人で、史上最多を更新しました。テレビの地上波中継が減ったと言われて久しいのに、球場にはかつてないほど観客が入っています。ファンの楽しみ方が「見る」から「参加する」へ移ったことを、この数字ははっきり示しています。

一方で、ファン人口自体は減っているのに動員が伸びているという指摘もあります。つまり、ひとりのファンがより頻繁に、より深く球場へ通うようになっています。これはまさに推し活型の消費構造です。

集英社オンラインの分析記事も、優勝を逃した球団まで過去最高動員となった要因として、12球団の推し活戦略を挙げています。その例が、「コンビ推し」トークイベント、選手との2ショット撮影、女性先着プレゼントです。球団公式ストアには、「推し活グッズ」のカテゴリが常設されるようになりました。マスに放送で届ける時代から、推しに現場で会わせる時代へ、プロ野球のビジネスモデルは静かに書き換わりました。

プロ野球は「推し活の原型」をすべて持っている

プロ野球の文化推し活での言い方
応援歌・チャンステーマコール・オタ芸の源流
私設応援団ファンダムの自治組織
ビジター遠征遠征・参戦
推し球団のユニフォーム・タオル推しカラーグッズ
選手アクスタ・選手プロデュースグッズアクスタ・特典文化
選手の誕生日企画・記念グッズ生誕祭
親子三代で同じ球団世代を超えた箱推し

なかでも応援歌の文化は特筆に値します。プロ野球では多くの選手に専用の応援歌があり、スタンドのファンが歌詞を暗記していて、打席のたびに大合唱が起きます。「推しごとに専用コールがある」文化を数十年前から続けてきたのは、世界のスポーツを見渡してもプロ野球くらいのものです。トランペットと太鼓を使う私設応援団のスタイルは、1970年代から広まったとされます。このスタイルは、日本のエンタメ現場のコール文化の源流のひとつになりました。

事例: 日本ハムの「選手推し」戦略

推し活シフトの成功例としてよく引かれるのが北海道日本ハムファイターズです。日本経済新聞の報道によると、日本ハムは簡単な質問に答えると相性の良い選手を薦めてくれるウェブサービスを導入し、選手個人グッズの種類も増やしました。箱推しのファンに「推し選手」を見つけてもらう仕組みを作り、2025年にはエスコンフィールド移転後最速で主催試合の動員100万人を突破しました。

日本ハムの取り組みは、まず箱(球団・球場体験)で出会ってもらい、次に個(推し選手)で応援を深めてもらうという順序に特徴があります。推し活の言葉でいえば、球団側が箱推しから単推しへの自然な移行を設計しています。ファンの応援が深まるほど、来場頻度もグッズ単価も上がります。アイドル業界が磨いてきたファン育成の段階を、球団はデータとサービスで再現しました。

エスコンフィールドを含む北海道ボールパークFビレッジも、温泉・サウナ・飲食・宿泊を備えた「野球を見ない人も楽しい聖地」として設計されています。来場者は試合に加えて、施設での滞在も楽しめます。

2020年代の変化: 「推し球団」から「推し選手」へ

近年のプロ野球の推し活化を象徴するのが、選手個人単位のグッズ展開です。かつて「個人推し」向けのグッズは、背番号ユニフォームくらいでした。いまでは選手ごとのアクリルスタンド、フォトカード、誕生日記念グッズなど、アイドル並みに細分化されています。

2010年代の「カープ女子」ブーム以降、女性ファンの存在は完全に定着しました。各球団は、女性向けイベントデーやデザイングッズを当たり前のように用意しています。「推しがいる」人が人口の4割を超えた時代の標準に、プロ野球も合わせています。

2026年には、スポーツ×IPの「出会いの設計」がプロ野球でも本格的に始まりました。ポケモンは、12球団それぞれにパートナーポケモンを設定する「ポケモンベースボールフェスタ2026」を2月に発表し、各球場で展開しました。7月にはJリーグ60クラブとのコラボも発表され、クラブ×キャラクターの組み合わせで「推しとの出会い」を配る手法が、野球からサッカーへ広がりました(Podcast第59回で取材)。

推し活未来研究所メモ:ライト層の体験化とコア層の推し活化

研究所は、プロ野球の2025年の史上最多動員を、「ライト層の体験化」と「コア層の推し活化」が同時に進んだ結果と見ています。12球団はそれぞれ、初観戦から沼にはまるまでの段階を整えつつあります。ボールパークで初観戦の家族を迎え入れ、相性診断で推し選手を見つけてもらい、個人グッズと誕生日企画で応援を深めてもらう流れです。

一方で、コア層に頼りすぎることには注意が必要です。ひとりのファンの支出額を伸ばす設計は効率的に見えますが、推し活疲れと同じ構造の消耗を招きます。世代を超えて推せるというプロ野球最大の資産を活かすには、「深く推す人」と「ゆるく推す人」の両方に居場所がある球場設計が必要です。この設計ができるかどうかが、次の10年の分かれ目になるはずです。

球団・スポーツ団体の推し活施策のご相談は、株式会社KAZAORIまで。

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よくある質問

プロ野球の観客動員はどのくらいですか?

NPBの公式発表によると、2025年のセ・パ公式戦の入場者数は約2,700万人に達し、史上最多を更新しました。1試合平均では3万人を超える計算になります。

野球観戦も推し活に含まれますか?

含まれます。推し球団のユニフォームを着て応援歌を歌い、遠征して球場に通うことは、推し活そのものです。選手個人を推す「推し選手」文化も、グッズやSNSの普及で年々広がっています。

推し選手はどうやって見つければいいですか?

出身地・ポジション・プレースタイル・ヒーローインタビューでの人柄など、何をきっかけにしてもかまいません。球団側も相性診断サービスや選手個人グッズを増やしています。「箱推し」から入って「推し選手」を見つける流れが一般的です。