推し活×カラオケ・アミューズメント|推し活ルームとコラボルームの事例
カラオケ店には、ライブ映像の鑑賞やファン同士の集まりに使える、推し活向けの部屋やプランがあります。個室・音響・大画面という既存の設備を、歌う以外の目的でも利用してもらう取り組みです。

カラオケ各社の推し活ルームやIPコラボを取り上げ、設備の使い方、料金、来店を促す特典を比較します。
「歌わないカラオケ」が市場を戻した
帝国データバンク「全国『カラオケ市場』動向調査(2024年度)」によれば、カラオケ市場規模は2024年度に約3,200億円まで回復する見込みとされていました。コロナ禍で落ち込んだ2021年度は1,740億円で、そこから約84%の増加です。コロナ前の2018年度(3,485億円)に迫る水準まで戻ったことになります。
回復の中身にも特徴があります。同調査は、その要因の一つに「歌わないカラオケ」利用の拡大を挙げています。アイドルイベントやコンサートのDVD・ライブビューイングを見るため、グループでルームを長時間貸し切る利用です。同調査は、この利用形態が新たなトレンドとして育っていると分析しています。業界紙フードリンクも「カラオケ24年度、コロナ前に迫るV字回復。推し活が追い風。」と報じ、推し活需要の取り込みが客単価引き上げに寄与したと指摘しました。
背景には市場全体の拡大もあります。ネットショップ担当者フォーラムが2026年3月に報じた調査では、推し活市場は約4.1兆円と推定されています。「推し活をしている」と答えた人は3割で、使う金額は月1万円未満が7割超でした。つまり推し活をする人の中心は、高額課金層ではなく、数千円で満足したい多数派です。防音個室を数時間借りる料金は、この層の予算によく合います。
アプローチ1:色でつくる「汎用ルーム」
カラオケ各社が先に整備したのは、特定IPに依存しない常設商材でした。
カラオケ館「カラ推し館」(秋葉原本店)
株式会社B&Vは2026年4月16日、秋葉原本店に推し活専用ルーム「カラ推し館」を新設したと発表しました。ルームは、業界最大級とうたう25色対応の照明演出と、マグネット仕様の飾り棚・額縁でグッズを展示できる壁面を備えています。11種類の推し色ドリンクや、プロジェクターによる大画面投影にも対応しています。
- 狙い:カラオケを「歌う場所」から「好きなものを仲間と共有し、特別な時間を過ごす空間」へ再定義し、店舗を差別化する
- 施策:照明・什器・ドリンクの三点セットを常設化。今後、必要なエリアへ順次展開予定
- 研究所の見立て:飾り棚をマグネット仕様にした点が実務的です。ファンは持ち込んだグッズを壁に並べ直すところから体験を始めます。店が装飾を用意するのではなく、ファンが飾る余地を用意した設計です
ビッグエコー「推し色ルーム」
先行したのは第一興商です。ビッグエコー新有楽町店は2025年3月28日のリニューアルオープンに合わせ、扉・壁・ソファなどを桃・緑・水色・青・黄色・白・黒・すみれ・赤・だいだい・オーロラの11色で統一した「推し色ルーム」を初導入しました。以降の全国展開の起点となった企画です。
- 狙い:ファンが共有する推しカラーだけで、版権許諾なしにコラボ的な体験を作る
- 施策:部屋そのものを色で分け、予約時に推しの色を選べるようにする
- 継続展開:同社はその後もIPコラボを継続的に投入しています
- 研究所の見立て:色は、最も安く世界観を作れる要素です。キャラクターを使わないため許諾も監修も不要で、企画から稼働までが速く済みます。IPコラボが取れない時期の「つなぎ」ではなく、常設の商材として持っておくべきものです
パセラリゾーツも「推し会」プランを自社サービスとして展開しています。推し活向けの汎用フォーマットを用意する動きは、業界共通になっています。
アプローチ2:IPでつくる「コラボルーム」
汎用ルームが常設の商材だとすれば、短期間に集客を伸ばすのは版権コラボです。
カラオケまねきねこ × 学園アイドルマスター
コシダカホールディングスのカラオケまねきねこは、コラボルーム企画の第二弾を2026年4月27日から6月7日まで実施しました。テーマは「猫耳メッセンジャー」です。予約受付は4月23日18時開始と発表されました(アイドルマスター公式サイト)。
- 狙い:年間約50タイトルとの継続コラボ実績を持つ同社が、人気タイトルの続編企画でリピート予約を取る
- 施策:テーマを変えた第二弾として再登場させ、予約開始日を告知で先出しする
- 研究所の見立て:予約開始4月23日、稼働開始4月27日という4日間のリードタイムが、同社の運営をよく表しています。装飾の差し替えだけで企画を切り替える型を作ってあるから、この速さで稼働できます。年50本という本数は、1本ごとの当たり外れを平準化する仕組みでもあります
ラウンドワン × なにわ男子
ラウンドワンは2025年8月29日18時から予約を開始し、翌30日利用分から吉祥寺店にコラボルームを増室しました。既存の千日前・池袋・所沢店に続く拡大です(ラウンドワン公式X)。
- 狙い:人気アイドルグループとの公式コラボで予約を集め、稼働率を最大化する
- 施策:反響を見てから店舗を追加する後追い型の増室
- 反響:公式は「たくさんのお客様のご利用」と告知しています
- 研究所の見立て:増室したことは、企画側が「取れない不満」を放置しなかったことを示しています。完売で人気を示すより、参加できる人数を増やすほうが、次の企画につながります
ビッグエコー × アイドルマスター SideM/星街すいせい
第一興商は2026年1月30日から3月31日まで「アイドルマスター SideM」とのコラボキャンペーンを全国展開しました。並行して2026年1月10日から2月28日には、ホロライブプロダクション所属VTuber・星街すいせいとのコラボを実施しました。特別コラボドリンクと歌唱キャンペーンに加え、東京・大阪の2店舗にコラボルームを設置していました。
- 狙い:歌唱キャンペーンとドリンク施策で参加の幅を広げ、旗艦店のルーム設置で深い体験を用意する
- 施策:歌唱キャンペーンとコラボドリンク(30店舗)で参加の間口を広げ、コラボルームは東京・大阪の2店舗に置く、という役割分担
- 研究所の見立て:全国のファンには「参加できるもの」を、行ける人には「行く理由」を用意しています。ルームは数を作れません。だからこそ、ルーム以外の参加経路を同じ企画に組み込む設計が効果を持ちます
JOYSOUND × VTuber「ぶいから夏フェス2025」
2025年8月29日から9月14日まで、VTuberとオンラインで1対1の交流ができる企画が開かれました。会場はJOYSOUND X1搭載の全国カラオケルームで、エクシングがJOYSOUNDで展開する「X PARK」を使っていました(PR TIMES)。声優・アーティスト系では、2025年8月8日にGRANRODEO×JOYSOUND直営店のコラボが始まりました。ノベルティ付きのコラボドリンクを全国30店舗限定で提供し、コラボルームはJOYSOUND水道橋店に設けました。スタンプキャンペーンも実施しました。
- 狙い:ルームを「歌う場所」から「推しと直接つながれる場所」へ再定義し、平日・オフピーク帯の稼働を増やす
- 施策:通信カラオケ機器の機能を使い、店舗設備そのもので体験を作る
- 研究所の見立て:装飾や景品ではなく機器を体験の中心に置いた点が、他社と違います。設備は模倣されにくく、次のIPにも載せ替えられます。機器を使った体験は、投資が効く領域です
アプローチ3:アミューズメントは「来店の目的」を配る
部屋を売るカラオケに対し、ゲームセンターはフロア全体に人を呼びます。定番は、プライズ景品とノベルティで来店理由を作る形です。GENDA GiGO EntertainmentのGiGOは、2025年9月12日から10月31日まで「僕のヒーローアカデミア」とのコラボキャンペーンを実施しました。期間限定プライズ景品、500円利用ごとの購入特典ノベルティ、コラボたい焼きを展開していました。2025年12月6日から2026年1月11日には「サラブレッドコレクション」のグループ店舗限定プライズを投入していました。バンダイナムコアミューズメントのナムコも2025年9月5日から11月3日まで、サンリオキャラクターズとの「ナムコdeハロウィン2025〜マーメイドファンタジー〜」を実施しました。
研究所が注目するのは、プライズ景品より「500円利用ごと」という条件設計です。今はランダムグッズに対する批判が強くなっています。そのなかで、確実に手に入るノベルティを利用額に紐づけるのは、射幸性を上げずに単価を上げる合理的な方法です。
成功パターンと失敗パターン
| 観点 | うまくいっている型 | つまずきやすい型 |
|---|---|---|
| 商材の持ち方 | 汎用の推し色ルームを常設し、IPコラボを上乗せする | IPコラボ頼みで、企画が取れない月は普通のカラオケに戻る |
| 予約設計 | 反響を見て増室・期間延長する(ラウンドワン吉祥寺店) | 完売を成果として発表し、参加できない層を放置する |
| 参加経路 | 全国キャンペーンと限定ルームを同じ企画に同居させる | 都市部数店舗のみで完結し、地方ファンに参加手段がない |
| 運用ルール | 持ち込み・撮影の可否を予約時点で明示する | 店舗ごとに運用が異なり、行ってみないと分からない |
| 会期後 | 常設商材へ体験を引き継ぐ | 装飾を即撤去し、次に来る理由が残らない |
つまずきやすい型は、いずれも個別企業の落ち度というより構造の問題です。カラオケのコラボは店舗単位で実施されることが多く、対応の可否が店舗ごとに分かれやすくなります。SNSでは「この店は持ち込みOKだったのに別店舗はNGだった」という、運用差への言及が見られます。コラボ終了後に装飾がすぐ撤去されて残念だったという声も上がっています。人気ルームの予約が取りにくいという不満も、同じ構造から生まれています。持ち込みや撮影の可否をチェーン全体でそろえるルールは、各社とも公表していません。
企業担当者向け:企画前チェックリスト
- キャラクターを使うか、色と什器だけで成立させるかを最初に決めた(版権許諾の要否が準備期間を左右する)
- 汎用ルームを先に用意し、IPコラボはその上に載せる構造にした
- 予約開始日時と受付方法を、稼働開始の数日前ではなく余裕をもって告知した
- 反響が想定を超えた場合の増室・期間延長・他店舗展開の判断基準を事前に決めた
- グッズ持ち込み、飾り付け、撮影、飲食物の可否を予約画面と店頭掲示の両方に明記した
- ルームに入れない人向けの参加経路(全国ドリンク、ノベルティ、スタンプ等)を同じ企画内に用意した
- ノベルティの獲得条件が、射幸性ではなく利用額や来店に紐づいている
- 会期終了後、装飾・什器・レシピのどれを常設側へ引き継ぐか決めた
- 現場スタッフに、作品名・キャラクター名・呼称・注意点を共有した
費用の分担は、IPホルダー側が版権許諾・グッズ制作・ノベルティ費用を負担し、店舗側が什器・POP・ドリンクレシピに対応する形が一般的とみられます。ただし、具体的な契約金額は公表されていません。準備期間は、まねきねこの事例のように予約開始から稼働まで数日で回せる企画もあります。一方、店舗改装を伴う推し色ルームの新設は、リニューアルに合わせた数カ月単位の計画になります。
推し活未来研究所メモ:部屋は「飾らせる」ほど強くなる
カラオケ各社の推し活ルームを並べて見えてくるのは、店が飾り込むほど良い部屋になるわけではないという逆説です。25色の照明も11色の内装も、それだけでは完成しません。ファンが持ち込んだアクスタやぬい、うちわを置いたときに、部屋はようやく完成します。マグネット式の飾り棚は、その考え方がいちばん分かりやすく表れた什器でした。
この構造は、本人不在の誕生日会が個室カラオケで定着したこととつながっています。ファンはもともと、自分たちで飾って祝う技術を持っています。店側の仕事は代わりに飾ることではなく、飾りやすくすること、そして飾ったものを安心して撮れる条件を用意することです。持ち込みと撮影のルールが店舗ごとにばらつくという課題が繰り返し指摘されるのは、そこが体験の中心だからです。
もう一点あります。カラオケ市場が3,200億円規模まで戻る追い風のひとつは「歌わない利用」でした。この事実は、カラオケという業種の定義を書き換える可能性を示しています。設備の稼働時間を売っている事業者は、その時間に何をしてもらうかを自由に設計できます。推し活は、その空白時間に最も相性の良い需要のひとつです。研究所の見方では、次に問われるのはコラボの本数より、コラボが終わった翌日もその部屋に来る理由が残っているかどうかです。
よくある質問
推し活ルームとは何ですか?
推しカラーの照明や飾り棚を備え、グッズを飾りながら過ごせるカラオケの専用ルームです。歌うだけでなく、映像鑑賞や撮影、推し語りの場として使われます。
コラボルームと推し活ルームはどう違いますか?
コラボルームは特定作品の版権許諾を受けた期間限定の企画、推し活ルームはキャラクターを使わない汎用の常設商材です。準備期間も費用構造も別物です。
なぜカラオケ市場は推し活で回復したのですか?
帝国データバンクの調査は「歌わないカラオケ」の拡大を回復要因に挙げています。ライブ映像鑑賞や推し会でルームを長時間貸し切る利用が増えたためです。
コラボルームを企画するとき最初に決めることは何ですか?
キャラクターを使うか、色や什器だけで成立させるかです。この選択で版権許諾の要否が決まり、準備期間も数日から数カ月まで大きく変わります。
予約が取れないほど人気なら成功と言えますか?
短期の話題化には成功しても、参加できなかったファンの不満は残ります。増室、期間延長、他店舗展開など、参加できなかったファンへの対応まで含めて評価すべきです。



