推し活×グッズ

推しぬいは​なぜ流​行った?​ぬい​撮り・​ぬい服・​お迎え文化と​市場の​広がり

最近、電車や街中で、バッグに小さなぬいぐるみをつけている人を見かける機会が増えたのではないでしょうか。「ぬい活」は、ぬいぐるみを持ち歩いたり、外出先で写真を撮ったりする楽しみ方です。ファンはぬいぐるみ本体に加えて、専用の服や収納用品も買っています。

バッグに下げられた推しぬいと、カフェでのぬい撮りのイメージ

ぬい活の楽しみ方やぬい撮りのコツは用語辞典にまとめています。この記事では、ぬい活が広がった背景を、ファンの購入動機と関連商品の市場データから整理します。

ぬい活を広げた3つの購入動機

ぬい活が伸びた理由は、ひとつではありません。性質の違う3つの動機を持つ人たちが、同じ時期に同じアイテムを買うようになりました。

  • ファッション:バッグに下げる装飾品として持つ。ラブブ人気で、この目的で買う人が一気に増えました
  • 推し活:推しを模したぬいを持ち歩き、ファンであることを表明する
  • いやし:特定のキャラでも推しでもなく、一緒にいることそのものが目的

ITmedia PC USERの取材記事は、ぬい活の実態をこの3類型に整理しています(ITmedia PC USER)。この3つは、互いに客を奪い合いません。ファッションで入った人が推しぬいを買い、いやしで持っていた人がぬい服を買います。買い始めるきっかけが3つあるので、市場は3つの方向に広がりました。

年表:言葉が一般化するまで

3つの動機が重なった時期は、売上の数字にもはっきり出ています。

時期出来事
2011年「推しメン」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート
2021年ぬい活関連34社の売上高 504億円(東京商工リサーチ集計)
2023年同 682億円
2024年度日本玩具協会調査でぬいぐるみ分野が前年比115.3%成長
2025年「ぬい活」が新語・流行語大賞にノミネート。ラブブが世界的ブームに
2025年ぬい活関連34社の売上高 849億円(2021年比 約1.7倍)
2026年8月日本経済新聞が「市場は10年で3倍」と報道

東京商工リサーチの集計によると、ぬい活関連34社の売上高は2021年に504億円でした。2025年には849億円となり、約1.7倍に伸びました。最終利益も28億円から54億円へ、こちらは約2倍です。黒字を維持している企業は、2025年で30社(34社の88.2%)にのぼります(東京商工リサーチ)。

ただし同じ集計は、増益企業数が2024年の19社から2025年は15社へ減ったことも示しています。市場は伸びているのに、利益を伸ばせている企業は減っています。この変化は、ブームが成熟局面に入りつつあるサインです。

長期の視点では、2026年8月31日の日本経済新聞が「『ぬい活』大人も沼る、ぬいぐるみと生活共に 市場は10年で3倍」との見出しで報じました(日本経済新聞)。若年層発の流行が大人世代へ広がっているという構図です。

仕組み:単価は低いのに、市場になる理由

市場全体の勢いに対して、1人あたりの支出額は意外なほど少額です。SHIBUYA109エンタテイメントは、15〜24歳女性を対象に調査を行いました。ぬい1体あたりの平均購入金額は3,282円で、洋服や収納用品を含む年間のぬい活支出は平均6,644円でした(ITmedia PC USER)。

推し活の支出としては、小さい額です。ライブ1本の遠征費にも届きません。それでも市場が成り立つのは、支出が一度で終わらないからです。

  • 本体を買う:3,000円前後
  • 服を買う・作る:季節ごと、衣装違いごとに増える
  • 連れ歩く道具を買う:ぬいポーチ、痛バッグ、撮影用のミニ小物
  • 手入れ・修理に払う:傷んでも買い替えず、直して使い続ける

本体が安いので始めやすく、服や小物などの周辺支出で客単価が上がります。ぬい活の経済は、本体ではなく周辺で回っています。持ち歩くぬいの内訳も、「推しぬい」と「キャラぬい」がほぼ同割合で、そこに「名前のないぬい」が約3割加わります。特定のIPを買う人だけで成り立っている市場ではありません。

供給側で起きたこと

もうひとつの要因は、ぬいぐるみを作れる事業者が増えたことです。多くのアイドル・VTuber公式ぬいぐるみは、中国のOEM工場に生産委託されています。1個からのぬいぐるみ製作を請け負う業者もあります。小ロット製造が現実的になったことで、少人数のグループや個人クリエイターでも公式ぬいを出せるようになりました。アクスタの歴史で紹介した「印刷技術の小ロット化がグッズを民主化した」という現象が、ぬいぐるみという立体でも起きています。

一方、海外発の販売手法も別のブームを生みました。中国の玩具メーカーPOP MARTは、「ラブブ(LABUBU)」を中身が見えないブラインドボックス形式で販売しています。ラブブはSNSの開封動画文化と結びつき、世界的なブームになりました。BLACKPINKのLISAがバッグに付けたことが、きっかけのひとつとされています。日本でも入手困難となり、高額転売や偽造品の流通が起きています(Impress Watch)。

この「見えない状態で売る」構造は、K-POPのランダムグッズと同じメカニズムです。日本の推しぬいが「絵柄を公開した通常販売・抽選販売」を主流としてきたのに対し、ラブブは射幸性で伸びました。同じぬいぐるみでも、売り方の系譜は別物です。

日本の推しぬいブラインドボックス系(POP MART等)海外コレクタブル(Jellycat/Squishmallows)
中身事前に公開開封まで不明事前に公開
主な購買動機推しへの愛着引き当てる高揚・SNS映え手触り・収集
価格帯3,000円前後1,800〜2,800円前後(正規)小型から大型まで幅広い
二次流通限定品中心転売と偽造品が常態化コレクター間の交換が中心

文化:「連れて行く」から「一緒に暮らす」へ

売り方の系譜は違っても、手元に来たあとの扱い方は共通しています。ぬい活の面白さは、行動が段階的に深くなることです。最初はバッグに下げるだけだった人が、そのうち旅先で撮るようになります。服を着替えさせるようになり、気づけばベッドを用意しています。

この深まり方がよく表れているのが、ぬいぐるみ修理サービス(通称ぬいぐるみ病院)の需給です。業界最初期のサービスは2013年開業の店舗を母体に、2014年から修理を開始しました。ところが報道によれば、依頼は初年度だけで約3,000体にのぼりました。処理能力は月100体に満たず、入院から退院まで3年待ちという状態が生じたといいます(日経クロストレンド)。

3年待ってでも直したいと考える人が、これだけいます。この数字は、ぬいぐるみが「壊れたら買い替えるモノ」ではなく、代わりのきかない個体として扱われている証拠です。ファンは「買う」ではなく「お迎えする」と言い、手放すときには「里帰り」と言います。こうした言い回しも、同じ感覚から生まれています。

自撮りの代わりという使い方

もうひとつ、近年強まっている使われ方があります。SNSに自分の顔を出したくない人が、自分の分身としてぬいぐるみを写すという使い方です。友人同士の旅行で、人物の集合写真とは別に「ぬいだけの集合写真」を撮ってSNSに上げる例が紹介されています(ITmedia PC USER)。

顔を出さずに旅の記録を残せるうえ、写真の中心にはぬいが写ります。ぬいは「推しの分身」であると同時に「自分の分身」でもあります。この二重性は、他のグッズ文化には見られないぬい活の特徴です。

一方で、外に連れ出すと汚れる・傷むことを嫌い、あえて家の中だけでぬい活を完結させる人もいます。ぬい活の正解は、外出型だけではありません。

マナーを巡る議論

2026年5月頃、飲食店のテーブルにぬいぐるみやアクスタを置いて撮影する行為の是非がSNS上で議論になりました。撮影自体を否定する声と、店に迷惑をかけない範囲なら問題ないという声が交錯し、いまも意見は分かれたままです。

現時点で共有されている実務的な線引きは、店の許可・卓上の占有・他の客の写り込みの3点です。撮る人は混雑時を避け、テーブルの上に広げず、小さな敷物を使って直接置かないようにします。ルールが明文化されていない領域だからこそ、店側の判断を先に聞くのがいちばん早い解決策になります。

実践:迎える前に確認しておきたいこと

線引きが定まっていない領域なので、迎える前に確認しておくことが大切です。

  • 入手経路を確認する:公式ストアの通常販売、抽選販売、ブラインドボックスで難易度がまったく違います。抽選・ブラインド系は正規ルートで買えない前提を持っておくと消耗しません
  • 転売品と偽造品を避ける:ラブブをはじめ人気ぬいには偽造品の流通が確認されています。正規価格を先に調べてから相場を見ます
  • サイズ規格を先に決める:ぬい服は15cm・20cmといった規格で流通します。手持ちのぬいの規格を測ってから買うと失敗が減ります
  • 二次創作の線引きを確認する:自作のぬいやぬい服は、権利者のガイドライン次第です。個人利用の範囲か、SNS投稿を伴うか、販売するかで扱いが変わります
  • 保管環境を作る:直射日光と湿気は、生地を傷める原因です。連れ歩かない期間の置き場所は、収納の基本と同じ考え方で決めます

権利まわりは、いちばん誤解が多いところです。キャラクターを模したぬいやぬい服の制作は、法律上は著作権者の許諾がなければ複製権・翻案権の侵害になりうる行為です。日本では、個人の範囲での制作を黙認する権利者が多くいます。一方で、SNS投稿は「個人・家庭内利用」の範囲を超えるという指摘があります(著作権法.jp)。ガイドラインを公開しているIPも増えているので、手を動かす前にまず公式の記載を確認するのが確実です。個別のケースは専門家にご相談ください。

最近1年の動き

2025年12月・「ぬい活」の一般語化:ITmedia PC USERが「なぜ『ぬい活』が流行?」を掲載しました。記事は新語・流行語大賞ノミネートを起点に、ラブブ人気・SHIBUYA109調査・若者心理までを整理しています。ファン向けメディアではない一般ITメディアがこのテーマを正面から扱ったことは、ぬい活が広く浸透した表れです。

ホテル業界の対応拡大:東横インがぬいぐるみ用のベッドとガウンを貸し出す宿泊プランを提供するなど、ぬいを「一緒に泊まる相手」として扱うサービスが一般ホテルチェーンへ波及しました。推し活への対応が、専門の業態からホテルのような生活インフラにまで広がった例です。

推し活未来研究所メモ:ぬいは「所有」ではなく「同居」の商品である

研究所では、推しぬいを他のグッズと同じ枠で扱うべきではないと考えています。アクスタやトレカが「飾る・並べる・守る」商品だとすれば、ぬいは「連れて行く・着替えさせる・治す」商品です。買った時点で体験が終わらず、時間がたつほどファンとぬいの関係が深くなります。ぬいぐるみ病院では、開業当初に「入院から退院まで3年待ち」の状態が生じたことも、ファンにとってぬいを持つことが所有より同居に近いからです。

企業側から見ると、ここには2つの含意があります。ひとつは、アフターサービスが差別化になることです。修理、クリーニング、パーツの補充、サイズ規格の公開などが「買ったあとの支え方」にあたります。多くの公式は、いまのところこれらに手をつけていません。もうひとつは、射幸性への依存が長期的にはリスクになることです。ブラインドボックスは、短期の話題性で売上を伸ばしやすい販売方法です。しかし偽造品と転売が同時に出回り、ブランドの信用が落ちます。日本の公式ぬいが持っている「欲しいものが欲しいだけ買える」という地味な強みは、実は数年単位で効いてくる資産です。

ファンにとっては、ぬい活を最初から全部やる必要はありません。バッグに下げるだけで終わっても、家の中だけで完結しても、それは立派なぬい活です。市場が大きくなると、「もっと持つべき」「もっと撮るべき」という空気が生まれます。ただ、この文化のもともとの動機は、静かに一緒にいることでした。市場規模の全体像は推し活の市場規模【2026年版】にまとめています。

グッズ企画・推し活対応サービスのご相談は株式会社KAZAORIまで。推され度チェック(無料診断)もご利用ください。

関連記事:ぬい活とは(用語辞典)/ぬい撮りとは/推しグッズの収納アイデア

よくある質問

「ぬい活」とはいつ頃から広まった言葉ですか?

数年前からファンの間で使われていましたが、2025年に一気に一般化しました。同年の「現代用語の基礎知識」選 新語・流行語大賞にノミネートされたことが、浸透を象徴する出来事とされています。

推しぬいにはどれくらいお金がかかりますか?

SHIBUYA109エンタテイメントが15〜24歳女性に行った調査では、ぬい1体あたりの平均購入金額が3,282円でした。洋服や収納用品を含む年間支出の平均は6,644円です。

推しぬいの服を自分で作って売ってもいいですか?

キャラクターの二次創作にあたるため、権利者のガイドライン確認が必要です。個人利用と、SNS投稿や販売を伴う場合とで許諾の要否が変わります。まず対象IPの公式ガイドラインを確認してください。

ぬいぐるみが傷んだら修理できますか?

全国発送に対応した専門の修理サービス(通称ぬいぐるみ病院)が複数あります。ただし需要が供給を大きく上回っており、時期によっては年単位で待つ可能性があります。

「ラブブ」は推しぬいなのですか?

厳密には推しを模したぬいではなく、中国のPOP MARTが展開するキャラクターです。ブラインドボックス販売とSNS発信でブームになり、ぬい活をする人を増やしたキャラクターとして語られます。