社内推し活とは?社員エンゲージメントを高める新しい組織づくりの考え方
「うちの社員は、会社を推してくれているだろうか?」

エンゲージメント向上に悩む企業が増えています。そうしたなか、推し活の構造を組織づくりに応用する「社内推し活」という考え方が注目され始めています。Podcast「推し活未来研究所」でも反響の大きかったテーマを、記事として整理しました。
データもこの流れを裏づけています。タニタの「推し活に関する意識・実態調査2026」では、勤め先に「推し活手当」や「推し活休暇」があれば仕事のモチベーションが上がると答えた人が約6割にのぼりました。推し活と働く意欲は、もう無関係ではありません。
社内推し活とは
社内推し活とは、推し活の行動様式を組織に取り入れ、社員が会社・仲間・プロダクトを「推せる」状態を作る取り組みです。
推し活には、エンゲージメントの理想形がすでに揃っています。
「言われなくても語りたくなる」「勝手に広めたくなる」という状態は、マーケティングでも人事でも強く求められています。推し活では、この状態が毎日自然に起きています。社内推し活は、その構造から学ぼうという発想です。
なぜエンゲージメント施策として有効なのか
1. 「推す」は命令できないからこそ強い
エンゲージメントサーベイの数値目標や理念研修では、「好き」は生まれません。推し活から分かるのは、人は自分で見つけた魅力しか推せないという点です。社内推し活の施策は「推させる」のではなく「推せる材料と場を用意する」ことに徹します。
2. 「布教」が採用と営業を変える
自社を推している社員の言葉には、求人広告や営業資料以上の説得力があります。リファラル採用や口コミの正体は、社員による「布教」です。
3. 「祝う文化」が心理的安全性を作る
推し活には祝う文化があります。ファンはデビュー日を祝い、小さな供給にも感謝します。これを組織に置き換えたものが、成果の大小を問わず祝い、感謝を言葉にする文化です。
明日から試せる小さな施策
| 施策 | 推し活でいうと |
|---|---|
| 社内の「推しメンバー紹介」投稿 | 布教 |
| プロジェクトの「周年」や節目を祝う | 生誕祭・周年祭 |
| 感謝を言葉にして送る仕組み(サンクスカード等) | ファンレター |
| 社員の「好き」を語る場(LT会・社内ラジオ) | 推し語り |
| プロダクトのファン(顧客)の声を全社で共有 | 現場レポ |
大切なのは、強制しない・数値化しすぎない・楽しくないことはやらないことです。推し活が義務になった瞬間に疲れが始まることは、推し活疲れのコラムで書いたとおりです。組織でも同じことが起きます。
導入の3ステップ
社内推し活は、制度設計から入ると失敗しやすいテーマです。小さく始めるには、次の順番で進めます。
- 観察する。社内にすでにある「推し行動」を探します。たとえば、同僚の仕事を自然に称賛している人や、プロダクトの話になると止まらない人です。ゼロから熱意を作るより、すでにある熱意を見つけるところから始めます
- ひとつだけ試す。上の表から1つ選び、有志だけで小さく始めます。全社展開は、施策が定着してからで十分です
- 「続いているか」で振り返る。最良の判定基準は、参加率やスコアより、強制しなくても続いているかどうかです。続かなかった施策は静かに終えて、次を試します
よくある失敗と回避のヒント
| 失敗パターン | なぜ起きるか | 回避のヒント |
|---|---|---|
| サンクスカードのノルマ化 | 効果を数字で示したくなる | 枚数目標を置かず、書きたい人が書ける状態を保つ |
| 表彰の序列化 | 「祝う」と「評価」の混同 | 成果の大小で祝う対象を絞らない。小さな節目こそ祝う |
| 経営層だけが盛り上がる | 熱量の押しつけ | 会社が整えるのは材料と場まで。推すかどうかは社員の自由に残す |
注意点:「推させる」施策は必ず失敗する
社内推し活で最も避けるべきなのは、強制参加のイベントやノルマ化した投稿でエンゲージメントを作ろうとすることです。推し活の熱意は、本人の自発性から生まれます。会社ができるのは、推せる材料(誇れる仕事・魅力的な仲間・応援したくなる物語)を整えることまでです。
推し活未来研究所メモ:ブランドづくりの土台
研究所は、社内推し活を人事施策であると同時に、ブランドづくりの前提と捉えています。社員が自社を推せていない状態で、顧客にだけ推してもらうのは難しいでしょう。ファンに伝わる熱意は、多くの場合まず社内から生まれるからです。エンゲージメント担当とマーケティング担当が一緒に「推される会社」を設計する体制は、これからの組織づくりの論点になると私たちは見ています。
まとめ
社内推し活は「社員を会社のファンにする」施策ではありません。社員がすでに持っている「好き」という気持ちを、自然に表せる仕組みを作る取り組みです。最初の一歩は、「祝う」「感謝を言語化する」といった小さな施策で十分です。
組織やブランドの「推され度」を診断するフレームワーク(OSHI-MAP®)を使った企業支援については、株式会社KAZAORIまでご相談ください。関連記事: 推し活マーケティングとは
よくある質問
社内推し活とは何ですか?
推し活の行動様式(応援する・魅力を語る・成果を祝う)を組織に取り入れ、社員が会社・仲間・プロダクトを「推せる」状態を作る取り組みのことです。
福利厚生の「推し活休暇」とは違うのですか?
推し活休暇(ライブ参戦などのための休暇制度)は社員の推し活を支援する福利厚生です。社内推し活はさらに一歩進んで、推し活の構造そのものを組織のエンゲージメント設計に応用する考え方を指します。
小さな会社でも社内推し活はできますか?
できます。むしろ顔が見える規模のほうが、感謝の言語化や節目を祝う文化は根づきやすい面があります。大がかりな制度より、サンクスカードやLT会のような小さな仕組みから始めるのが向いています。
社内推し活の効果はどう測ればいいですか?
数値化しすぎないことが前提です。目安になるのは、「施策が強制なしで続いているか」「社員が自分の言葉で会社や仲間の魅力を語る場面が増えたか」です。エンゲージメントサーベイの自由記述の変化も参考になります。



