名探偵コナン興収79.9億円が歴代93位に/Z世代の推し活は「固定費」に変化【週刊推し活ニュース 2026年5月1日号】

2026年4月24日〜4月30日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは「感情」ではなく「数字」で語られ始めた推し活でした。
マーケティング支援のReaplusは、Z世代女性4名に調査を行いました。参加者は推し活を「娯楽」ではなく毎月の固定費として捉えており、可処分所得の20〜60%を投資する人もいました。Oshicocoの調査でも、ランダムグッズを「嫌い」とする人が多数派だった一方、約4割が「好き」と回答しています。許容できる種類数については、8割以上が「10種以内」と答えています。矢野経済研究所の調査では、にじさんじプロジェクトとホロライブプロダクションがVTuberファンの90%以上に認知されていることも明らかになりました。
数字の動きは興行や資金調達にも及びました。『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』は興収79.9億円で歴代93位につけていました。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』も、興収27億円を突破していました。AIキャラクター事業のPictoriaは3.3億円を調達し、サンリオは自社パブリッシングによるゲーム事業への参入を発表しました。VTuber事務所カバーは権利侵害への法的対応が年149件に上ったと報告していました。
推し活消費の実態が、複数の調査データで裏付けられた
Oshicoco、Reaplus、矢野経済研究所 — 3つの調査が映した消費の輪郭
Z世代・推し活層に特化したマーケティング支援を手掛けるOshicocoは、「ランダムグッズに関する意識調査」を実施しました。対象は「推し活応援メディアOshicoco」のInstagramフォロワー(10代61%、20代前半16%、20代後半13%)でした。「嫌い」が多数派だったものの、全体の約4割が「好き」と回答しました。ジャンル別では、VTuber・歌い手推しは「好き」が約6割でした。一方、国内男性アイドル・2次元推しは「嫌い」が7割を超えていました。許容できる種類数は、8割以上が「10種以内」を希望していました(集計期間4月21日〜23日、有効回答165件)(アニメ!アニメ!)。
若年層マーケティング支援のReaplusは2026年3月30日、Z世代女性4名(社会人3名・大学生1名)を対象に、グループディスカッション形式の定性調査を実施しました(各約45分)。従来の「推しが出ていれば無条件で購入する」という消費行動は弱まり、実用性・特典・世界観の一致で判断する「投資判断」型の購買構造への転換が明らかになりました。可処分所得の20〜60%を推し活に投資する、副業を始める、就職条件に「推し活しやすさ」を組み込むといった行動も見られたといっていました(PR TIMES)。
矢野経済研究所は2025年11月、15〜44歳の男女25,277名を対象にアンケートを実施しました。このうち動画視聴を趣味としVTuberを好むと回答した1,200名を「VTuberファン」として抽出し、事務所別の認知状況を調べました。認知率トップは「にじさんじプロジェクト」と「ホロライブプロダクション」で、いずれもVTuberファンの90%以上が認知していました。「ぶいすぽっ!」と「あおぎり高校」が70%超で続いていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 3本の調査に共通するのは、推し活層を「熱量だけの存在」として扱っていない点です。Oshicocoは金額と種類数の許容範囲を数値化し、Reaplusは可処分所得の何割を投資しているかまで踏み込みました。企業側が施策を設計する際も、「刺されば買う」という前提を捨て、価格・特典・世界観の一致を個別に検証する段階に来ています。ファンの熱量を測るなら、Z世代の消費行動のような定量的な補助線が要ります。
劇場アニメ2作の興行収入が、記録を次々に更新した
名探偵コナン、ガンダム 閃光のハサウェイ — 興収記録を相次いで更新
劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』は、シリーズ第29弾として4月10日に全国526館で公開されました。初日3日間で動員231万8,009人・興収35億213万7,800円を記録しました。前作『隻眼の残像』比101.8%で、シリーズ史上No.1のスタートでした。4月19日までに、動員422万人・興収63億円を突破していました。4月24日〜26日の週末は、初登場の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』に次ぐ2位でした。同じ週末の成績は、動員67万4,000人・興収10億200万円でした。累計動員は533万人を超え、興収は79.9億円に達しました。興行通信社調べの歴代興収ランキングでは、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(79.0億円)を超えて93位につけていました。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(80.0億円)にも迫っていました(アニメ!アニメ!)。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』も、興行収入27億円、観客動員数159万人を突破しました。2021年公開の第1章に続く3部作の第2章にあたり、前作の興行収入を上回るヒットとなっていました。公開14週目となる5月1日からは、ファーストラン最後の入場者プレゼントとして「村瀬修功監督デザインイラストカード」を配布しました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: どちらの作品も、公開から数週間を経て動員・興収が積み上がる長期型のヒットです。初速だけで話題化を終えず、入場者プレゼントの追加や週次の数字更新をニュースとして発信し続けることで、劇場に足を運ぶ理由を作り続けている構図が見えます。長期上映を支える継続的な話題づくりは、単発イベントに依存しがちな企業のファンマーケティングにとっても参考になります。
食品と電力会社が、キャラクターで顧客接点をつくった
日本ピザハット、わかさ生活、TGオクトパスエナジー — 3社3様の接点づくり
日本ピザハットは4月24日から、「JOYすぎるピザハット」を合言葉にした企画を展開していました。新キャラクター「ハット星人」が登場するテレビCM3篇も、全国で放映されていました(博報堂・AOI Pro.企画制作)。同社マーケティングディビジョンの三角絵海氏は「『ピザハット』というブランド名は、多くの方に認知されている。一方で『どんなブランドか』と聞かれたときのイメージは、まだ十分に確立されていなかった」と述べました。同氏は、注文することで気持ちが上がる体験を提供するブランドとして、イメージを定着させたいとしていました。CMでは「2枚目無料」や、8・9・10がつく「ハットの日」に持ち帰りピザが810円になる訴求も行っていました(AdverTimes.)。
わかさ生活は、2006年に誕生した公式キャラクター「ブルブルくん」を、数年後にぬいぐるみにしました。「もっと身近に感じたい」というファンの声を受けた対応です。2023年9月にはジャスティン・ビーバーが京都観光中に同社を訪れ、Instagramでぬいぐるみを紹介したことも話題になっていました。2025年4月には京都市中京区に専門店「ブルブルくんのおみせ」をオープンしました。同社は、ファンが投稿する「ぬい撮り」写真を「極めて価値の高いコミュニケーション」と位置づけていたといいます。オフィスにもぬいぐるみを置き、従業員同士の共通言語として活用していたそうです(AdverTimes.)。
TGオクトパスエナジーと株式会社メタバースクリエイターズは、Roblox上のタイクーン形式ゲーム「Octopus Energy Tycoon」を共同開発・公開しました。ブランドキャラクター「コンスタンティン」を集めながら街を発展させる過程で、風車や太陽光パネル、EVカーが登場する設計でした。TGオクトパスエナジーは、東京ガスとOctopus Energy Groupの合弁会社です。同社は、子どもを含むファミリー層との新たな接点としてRobloxを活用したとしていました(Mogura VR)。
研究所メモ: ピザハットはCMのキャラクター、わかさ生活はぬいぐるみ、TGオクトパスエナジーはゲームと、それぞれ違う接点を選んでいます。ただし、狙いは共通しています。商品や料金の説明だけでは動かない層に、まず好きになってもらうきっかけを作ることです。わかさ生活の「共通言語」という言葉が象徴的です。キャラクターは社外向けの販促であると同時に、社内のブランド理解を揃える道具にもなり得ます。
タレントとキャラクターが、広告の主役に躍り出た
Luup×令和ロマン、スポーツビズ×キャプテン翼 — 広告とマネジメントの再定義
電動キックボードなどのシェアリングサービス「LUUP」を手掛けるLuupは4月28日、自社インフラを活用した広告事業への参入を発表しました。第一弾の広告主は、アパレルブランドを企画・販売するyutoriです。同日から、お笑いコンビ・令和ロマンを起用したyutoriのブランド「9090」のプロモーションを始めました。広告は車両ラッピングやポートの装飾、アプリ内バナーに対応していました。Luupによると、都内のポート数は8,100カ所(4月時点)で、大手コンビニ3社の店舗数合計を上回ります。Luupの岡井大輝CEOは理想的な広告事例として「ポケモンジェット」を挙げ、「乗る人がうれしい企画を目指したい」と語りました(AdverTimes.)。
アスリートマネジメント事業を手掛けるスポーツビズは4月23日、サッカー漫画『キャプテン翼』の主人公・大空翼とマネジメント契約を締結したと発表しました。この契約は、新事業「IPアスリートマネジメント」の第一弾です。新事業では実在アスリートに加え、物語から生まれたキャラクターを「IPアスリート」として、実在選手と並列にマネジメントしていました。実在アスリートとの共演によるコンテンツ開発や、グローバル市場への展開も予定していたといいます(Koubo)。
研究所メモ: LUUPはタレントの人気を街の広告媒体に結びつけ、スポーツビズは漫画キャラクターをアスリートの枠組みに入れました。どちらも、ファンの支持を集める人・キャラクターを、既存の広告カテゴリーの外側に置き直しています。自社にとっての「広告枠」や「マネジメント対象」の定義を疑うところから、新しい接点は生まれます。
美容ブランドが、顧客の声をもとに商品をつくり直した
Boldies×クレオズボーテ — 数万件の声からリブランディングを実施
Boldiesは4月22日、ヘアケアブランド「Cleo’s Beauté(クレオズボーテ)」のリブランディングと新製品発売を記念した発表会を開催しました。代表の中田千尋氏に加え、特別ゲストとしてモデルの山田優氏が登壇しました。同ブランドは2022年4月の誕生以来D2Cを主軸に展開し、累計販売数は100万個を突破していました。中田氏は「創業以来、自社ECの専属コンシェルジュを通じて数万件のお客様の声に向き合い、『香りの多様化』や『パッケージの洗練』への要望を形にした」と語りました。発表会では、Vaundyらのミュージックビデオを手がける小林光大氏を監督に起用したブランドムービー「Cleopatra in Tokyo」も初公開されました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 100万個という実績よりも、「数万件の声に向き合った」というプロセスの開示自体がブランディングになっている点が目を引きます。有名人の起用は多くの企業がやりますが、リブランディングの根拠を顧客の生の声に置いたと明言する企業は少数です。ファンとの関係を語るとき、結果の数字だけでなく設計の過程を見せる企業が増えています。
バーチャルライブの視聴体験が、配信技術で広がった
Epic Games×星街すいせい、SPWN — 視聴体験を広げる2つの技術
Epic Gamesは、VTuberの星街すいせい氏によるインタラクティブ音楽パフォーマンス「Hoshimachi Suisei LIVE 2026〜STELLAR in Fortnite〜」を発表しました。パフォーマンスは、5月2日20時(JST)からフォートナイト内で開催すると発表されました。Black Tower Studiosとのパートナーシップのもと、開発者が独自の島を制作できるツール「Unreal Editor for Fortnite」を使って開発されました。プレイヤーはステージを眺めるだけでなく、ゲーム内エモートと連動したインタラクションを通じてパフォーマンスの一部になれる設計でした(週刊アスキー)。
エンターテインメントプラットフォーム「SPWN」は、最大11視点の映像を自由に切り替えて視聴できた新機能「マルチアングル機能」を正式リリースしました。特定の出演者を追い続ける「推しカメラ」のような視聴体験を、オンライン配信で実現する機能でした。視点を切り替えても、コメントは統合表示のまま維持されていました。機能は、3月21日・22日開催の「VSPO! SHOWDOWN 2026 powered by RAGE」で初めて導入されました。人気VTuberグループ「ぶいすぽっ!」のメンバーが出演するこのeスポーツイベントで、視聴者は各選手のプレイ視点と試合全体を自由に切り替えられました(Mogura VR)。
研究所メモ: 星街すいせい氏の事例は、既存プラットフォーム(フォートナイト)にVTuberを迎え入れる形です。SPWNの事例は、配信の中で視聴者に「誰を見るか」を選んでもらう形で、方向性は逆です。どちらも、視聴者が受け身でいる時間を減らしている点は共通しています。ライブ配信を企画する企業にとって、視聴という行為のどこに選択の余地を残すかは、体験が記憶に残るかどうかを左右します。
IPを育てる企業が、事業拡大と防衛を同時に進めた
サンリオ、Pictoria、カバー — IP事業の拡大と防衛が同時に進む
サンリオは4月21日、自社パブリッシングによるゲームブランド「Sanrio Games」の立ち上げを発表しました。第1作目として、コンソールゲーム『サンリオパーティランド』を2026年秋にSwitch/Switch 2向けにグローバル同時発売します。3年間で10タイトル程度のリリースを計画していました。同社は450以上のキャラクターを保有する一方、グッズやテーマパークを展開できていない国・地域も多くありました。そこで、地理的制約を受けにくいゲームというプラットフォームを、ファンがキャラクターに触れるためのグローバル化の手段と位置づけていました(インサイド)。
AIキャラクターの企画・開発・運用を手掛けるPictoriaは、総額3.3億円の資金調達を実施しました。キヤノンマーケティングジャパン、みずほキャピタル、GOLDEN EGG Ventures、Skyland Venturesを引受先とする第三者割当増資に、みずほ銀行・きらぼし銀行・日本政策金融公庫からの融資を組み合わせた調達です。同社はAI VTuber「紡ネン」を運営していました。同社によると、法人向けにはAIキャラクターの企画からAI開発、音声合成、3Dキャラクターアセット制作、運用までを自社技術基盤で一貫して手がけていました。出版・証券・不動産・銀行・空港・プロスポーツ・自治体・商業施設など、幅広い業界に導入していました(Mogura VR)。
VTuberグループ「ホロライブ」を運営するカバーは4月30日、2025年度における権利侵害行為への対応状況を公開しました。訴訟・刑事事件を含む法的対応件数は149件、X・YouTube・TikTokを対象とした削除対応件数は1,411件に上っていました。SNSや匿名掲示板の悪質投稿への発信者情報開示請求、国外裁判所での訴訟、悪質まとめサイトの閉鎖、金銭目的の不当利用に対する警察連携での逮捕、生命・身体を脅かす投稿への刑事立件など、5つの領域で対応を行ったとしていました(インサイド)。
研究所メモ: サンリオとPictoriaは「IPを広げる」動き、カバーは「IPを守る」動きですが、背景は同じです。キャラクターやタレントの価値が大きくなるほど、無断利用や誹謗中傷のリスクも比例して増えます。ファンビジネスに参入する企業は、拡大のロードマップと同じ重さで、権利侵害への対応コストを事業計画に組み込む必要があります。
今週の所感
今週は企業が推し活の熱意を、数字と契約で扱い始めた週でした。
Reaplusの調査が明かした「可処分所得の20〜60%」という数字も、Oshicocoの「10種以内が8割」という許容範囲も、感覚ではなく調査で裏付けられています。スポーツビズが漫画のキャラクターを実在選手と並列にマネジメントし、カバーが権利侵害対応の件数を数字で開示したのも、同じ流れの延長です。ファンの熱意は、もはや「なんとなく強い」では語れません。企業側にも、定量的に向き合う姿勢が求められています。
一方で、わかさ生活の「共通言語」やクレオズボーテの「数万件の声」からは、数字に還元しきれない関係の積み重ねが基盤にあることも分かります。調査データで全体像をつかみつつ、推し活マーケティングの設計原則やZ世代の消費行動を手がかりに、自社のファンとの距離を見直してみてください。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



