ケツメイシAIが1週間で3,500曲生成/推し活市場3.9兆円へ支援サービス参入【週刊推し活ニュース 2026年4月24日号】

2026年4月17日〜4月23日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは「投資対象」として数字で語られ始めた推し活でした。
Brave groupがシリーズEで80億円超を調達し、累計調達額は約140億円に達しました。グリーホールディングスはグループ会社を通じて、Brave groupの筆頭株主となりました。同じ週には、株式会社A3が法人向け支援サービス「A3推し活部」を始めました。A3は国内の推し活市場規模を約3.9兆円、「推しにお金を使っている」人数を約1,997万人と推計していました。
技術面ではAIの実装が進みました。ケツメイシは、声を再現したAI「D-AI-ZO」を使ったファン参加型企画を実施しました。サービス開始から1週間で、3,500曲を超えるオリジナル曲フリが生成されていました。松任谷由実のAI音声プロジェクトも、高輪の新施設で上演された作品で初めて声優を務めました。
AIが声を再現し、ファンとの新しい接点をつくった
ケツメイシ×D-AI-ZO — AI音声が1週間で3,500曲を生成
ケツメイシが3月27日、音声生成AIを活用したプロジェクト「ケツメイシの#それでは聴いてください」を公開しました。2026年4月から始まった25周年記念の全国アリーナツアーに合わせた企画でした。特設サイトにメッセージを入力すると、ムービーが生成されました。ムービーでは、リーダー・大蔵さんの声をAIで再現した「D-AI-ZO」が、ケツメイシ楽曲のイントロに乗せて入力者の想いを読み上げていました。Xでは、「#ケツメイシ」「#それでは聴いてください」のハッシュタグを付けたファンのオリジナルムービー投稿が続きました。サービス開始から1週間で生成された曲は、3,500曲を超えていました。企画を手がけたクリエイティブディレクター安本一優氏は「一人ひとりが持つ“ケツメイシソングへの想い”を引き出し、ファン以外の方にもシェアしてもらえる新しい仕組みをつくれないか考えた」と説明しました(AdverTimes.)。
研究所メモ: AIが再現したのは「歌」ではなく「声」だった点が効いています。ファン一人ひとりの個人的な記憶をリーダーの声で読み上げる仕組みにしたことで、参加のハードルを大きく下げました。ロングセラーIPを持つ企業ほど、ファンの記憶をアーカイブとして掘り起こす仕掛けに転用できる余地があります。
松任谷由実×マンガローグ「火の鳥」— AI音声が声優に初挑戦
手塚治虫の「火の鳥 未来編」を題材にした体験型ライブパフォーマンス「MANGALOGUE:火の鳥」が、4月22日に開幕しました。会場は高輪ゲートウェイシティの複合ミュージアム「MoN Takanawa」で、会期は5月16日まででした。料金は4,500〜5,500円でした。企画運営はJR東日本文化創造財団で、TBSとBasculeが企画制作に参画していました。巨大LEDに手塚プロダクションが新たに着彩した原稿を映し出し、ロボットアーム「鉄腕アーム」がカメラ視点でコマを追う構成でした。キャストには山寺宏一、夏木マリ、梶裕貴、本郷奏多、古田新太らが名を連ねていました。松任谷由実のAI音声プロジェクト「Yumi AraI」も、AIハレルヤ/ダニューバー役で参加しました。歌手としてではなく声優として作品に登場したのは今回が初めてだといっていました(Musicman)。
研究所メモ: 現役アーティストのAI音声を「声優」という新しい役割で使った点が特徴です。AI版は本人の出演機会を奪わず、本人が担えない領域に配置されています。IPを長く運用してきた企業ほど、こうした役割分担の設計次第でアーティストの活動年数を実質的に延ばせます。
タレント起用の決め手に、ファンの声が入り始めた
Number_i×池田模範堂 — 「次は神宮寺さんが」というファンの期待
池田模範堂が4月17日、湿疹・皮ふ炎治療薬「ムヒベタV液」の新テレビCMを開始し、Number_iの神宮寺勇太を起用しました。同社は他ブランドでもNumber_iのメンバーを起用していました。「液体ムヒ/ムヒアルファEX」には平野紫耀を、「ヒビケア」には岸優太を起用済みでした。市場開発室リーダーの浜松英一氏は「次は神宮寺さんがイメージキャラクターになるのでは、というファンの方々の期待の声があったことも起用理由のひとつ」と説明しました。今回の起用で、池田模範堂の広告にNumber_iの3人がそろいました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 3ブランドで3人を個別起用し、ファンの側に「次は誰か」という期待を生んだ点が巧みです。池田模範堂は起用順を先に発表せず、ファンの声が上がるのを待ってから最後のメンバーを起用しました。複数商品ラインを持つ企業ほど、起用の”余白”を意図的に残す設計が使えます。
なにわ男子×ROUND1 — タイアップCMを4月25日から放映、3月のボウリング売上は5.7%増
ラウンドワンジャパンは、アミューズメント施設「ROUND1」の新テレビCMを4月25日から放映していました。昨年に続き、CDデビュー5周年を迎えるなにわ男子を起用し、タイアップ曲には「Gimme The Day」を採用しました。3月の国内総売上は112億5,000万円で、既存店売上高は前年比3.7%増(暦要因を除くと実質約6%増)でした。部門別では、ボウリングが5.7%増、カラオケが5.8%増、スポッチャが3.3%増、アミューズメントが2.6%増でした。経営企画部の山口寛訓氏は、昨年のなにわ男子起用キャンペーンが「幅広い世代の施設への関心を集めた」と述べました。同氏によると、比較的来店機会の少なかった女性客の掘り起こしも狙いでした(AdverTimes.)。
研究所メモ: ボウリングという成熟カテゴリーが、アイドル起用2年目で伸び続けている点が注目です。ラウンドワンは同じグループを継続起用し、タイアップを「毎年恒例」の来店動機に育てています。複合型の集客施設にとって、1つのタイアップで複数部門の稼働率を同時に押し上げられる好例です。
この春、老舗からインフラまでブランドの顔が誕生した
フジッコ、auエネルギー&ライフ — 周年施策で新しい顔をつくった
フジッコは4月1日、新たな公式キャラクター「おまめやん」「こんぶやん」を発表しました。2026年は、主要3ブランド(「ふじっ子」60周年、「おまめさん」50周年、「ふじっ子煮」55周年)の周年が重なりました。フジッコはこれを機に全従業員とその家族を対象に募集を行い、キャラクターを誕生させました。同じく4月1日には、「auでんき」を展開していたauエネルギー&ライフが新キャラクター「るんるんるんも」を発表しました。制作は、「すみっコぐらし」「リラックマ」を手がけるサンエックスです。「auでんき」サービス開始10周年を契機に、広報担当として入社した設定のキャラクターでした(AdverTimes.)。
研究所メモ: 食品の老舗とインフラ企業という異業種が、同じ4月1日に同じ発想でキャラクターを立てました。周年や節目のタイミングは、商品訴求より「企業の人格」を新しく作り直す好機になります。BtoC接点の薄い業種ほど、キャラクターが顧客との継続的な会話のきっかけになります。
ゲームとeスポーツに、大手IP企業と資本が動いた
サンリオ×東映 — 自社パブリッシングでゲーム事業に参入
サンリオは4月21日、初の自社ゲームブランド「Sanrio Games」を立ち上げると発表しました。第1弾として、「サンリオ パーティランド」をNintendo Switch/Switch 2向けに2026年秋に世界同時発売すると発表しました。今後3年間で10タイトル程度を展開する計画でした。開発・販促費として100億円を投じる方針をすでに示していました。辻朋邦社長はゲーム事業を「サンリオへの間口の一つ」にしたいと述べました。同じく4月21日、東映もゲーム事業ブランド「東映ゲームズ」の設立を発表しました。まずはPCプラットフォーム「Steam」で展開すると発表し、既存IPを使わないゼロからの新規タイトルを4月24日に発表しました。吉村文雄社長は、ゲーム事業を映画・テレビ・催事と並ぶ「新たな柱」と位置づけると説明しました(ファミ通.com、AdverTimes.)。
研究所メモ: 老舗IP企業2社が同じ週にゲーム自社パブリッシングへ踏み出しました。ライセンス許諾では手放していた「世界観」「ストーリー」の設計権を自社に取り戻す動きです。IPを他社に貸し出す立場の企業ほど、収益構造を自社に引き寄せる選択肢としてゲーム事業が視野に入ります。
eスタジアム×アクティオ — eスポーツ拠点運営へ資本提携
eスタジアムとアクティオは、2026年3月31日付で資本業務提携契約を締結しました。eスタジアムはNANKAIグループでeスポーツ施設を展開していましたが、アクティオは公共・民間施設の管理運営を手がけていました。アクティオはeスタジアムへ出資すると発表しました(金額非公表)。両社が協業するのは、施設運営品質の向上、eスポーツイベントの共同企画、新規施設の全国展開、自治体連携の強化の4領域でした。eスタジアムは、なんば本店を起点に全国9拠点を運営していました。親会社NANKAIの岡嶋信行社長は「鉄道会社の枠を越え、未来の都市体験を創造するeスポーツへの挑戦は象徴的なプロジェクト」とコメントしました(インサイド、GameBusiness.jp)。
研究所メモ: 1987年創業の施設管理会社が、eスポーツの「コミュニティ形成力」に着目して出資した構図です。ハコを作る力を持つ企業と、人を集める力を持つ企業が組んだ形です。自治体施設や商業施設の運営権を持つ企業にとって、eスポーツは空きスペースの稼働率を上げる具体的な選択肢になります。
VTuberが、資金・地域・旅行会社と結びついた
Brave group×グリー — シリーズEで累計調達140億円に
グリーホールディングスは4月22日、100%子会社REALITYを通じてBrave groupへ追加出資し、同社の筆頭株主となりました。Brave groupは「ぶいすぽっ!」「ヒメヒナ」「Neo-Porte」などを運営するVTuber企業です。シリーズEラウンドで80億円超を調達し、2017年の創業からの累計調達額は約140億円に達していました。ラウンドには16社の第三者割当増資と3社の融資を合わせ、国内外19社の投資家・金融機関が参画しました。みずほ銀行、キリンホールディングス、ニッポン放送、Kakao Investmentなどが名を連ねています。資金使途は海外市場でのIPローカライズ、既存IPの新事業展開、XR技術の研究開発、M&A・アライアンス推進の4つでした。Brave groupは従業員数432名、グループ会社数16社の規模でした(Mogura VR、KAI-YOU、ITmedia、BRIDGE、Brave group、インサイド)。
研究所メモ: 調達額そのものより、キリンホールディングスやニッポン放送といった事業会社が投資家に並んだ点が示唆的です。VTuberを、放送・飲料など既存事業とのIP連携先として見る企業が増えています。異業種からの出資は、VTuber企業にとって単なる資金以上に事業提携のきっかけになります。
ホロライブ — 全国7都市を巡るポップアップツアーを開催
ホロライブの全国7都市巡回ポップアップイベント「hololive BASE on Tour! 2026 Duet Stage!」が、5月1日から順次開催されました。最終会場の千葉は9月13日まででした。入場は無料でした。イベントには白上フブキ、大神ミオ、AZKiなど14名のタレントが参加し、音楽祭をテーマにした描き下ろしグッズも登場しました。着ぐるみグリーティングやARフォト体験、7会場すべてのスタンプを集めるとB2タペストリーがもらえたデジタルスタンプラリーも実施しました(Mogura VR)。
研究所メモ: 物販だけでなく、着ぐるみグリーティングやスタンプラリーを組み合わせ、7会場のうち複数を回ってもらう設計です。1会場で完結させず、遠征を前提にした回遊型のツアーにしています。グッズ販売中心のIPイベントを、体験型の周遊コンテンツへ拡張する選択肢として参考になります。
諸星めぐる×舟橋村 — VTuberコラボ日本酒がふるさと納税の返礼品に
民俗学系VTuberの諸星めぐると、富山の老舗酒蔵・桝田酒造店がコラボした純米大吟醸「満寿泉 ふなはし」が、富山県舟橋村のふるさと納税返礼品になりました。受付は4月22日に始まりました。舟橋村産コシヒカリ「ばんどり米」を精米歩合50%まで磨き上げた限定酒で、寄付金額は1万5,000円でした。寄付者全員には、諸星めぐるのアクリルボトルチャームが贈られました。5月1日には舟橋村長をゲストに迎えたコラボ配信も予定されていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 自治体の返礼品にVTuberを起用する事例は、地場の一次産業とファンダムを直接つなぐ数少ない方法です。村長本人が配信にゲスト出演するところまで踏み込んでいる点が特徴です。地域のPRを企業や自治体単独で完結させず、ファンコミュニティに開いています。人口の少ない自治体ほど、既存の広報予算では届かない層にリーチする手段になります。
HIS — VTuber旅動画コンテストで台湾旅行がグランプリに
旅行会社HISは、自社が企画したVTuber旅動画コンテスト「#旅してみたプロジェクト」の入賞作品を発表しました。110件を超える応募の中から、グランプリには兎沌とんによる台湾旅行動画が選ばれました。賞品はHIS首都圏発の国内日帰りバスツアー招待券です。HISのV旅賞受賞者3組の動画は、HIS渋谷本店の大型サイネージで5月1日から5月22日まで放映されました(Mogura VR)。
研究所メモ: 旅行会社が旅行動画を「発注」せず、VTuber側からの応募を募ってコンテスト形式にした点が効率的です。110件超の応募が集まり、一部の受賞作は店頭サイネージという実店舗の接点にまで還元されています。制作費をかけずにファン発の映像資産を集める仕組みとして、他の観光・宿泊業にも転用できます。
推し活市場3.9兆円に、支援サービスと数字が並んだ
コミューン「Commune Engage」— LINEでファンの行動を可視化
コミューン株式会社は4月21日、エンゲージメントプログラムSaaS「Commune Engage」の本格提供を始めました。顧客のあらゆる貢献行動を集約・可視化するサービスです。LINE公式アカウントをインターフェースに、購買だけでなくSNS投稿や店舗来店(QRチェックイン)、イベント参加などをポイント化・可視化していました。企業はこれにより、「熱量の高いファン」を早期に発見・育成できました。先行活用例として、創業350年の老舗酒蔵・玉乃光酒造がイベント参加とリピートの相関を可視化した事例が紹介されています。4月22日から24日には東京ビッグサイトの「マーケティングWeek春」でも紹介すると発表していました(PR TIMES、マナミナ)。
研究所メモ: 新規アプリを不要にし、LINEの友だち追加の延長で会員証発行まで完結させた設計が現実的です。購買力は低くても共感度の高い若年層の「熱量」を可視化できれば、勘に頼っていたファンマーケティングをデータで検証できるようになります。会員アプリを持たない中小の店舗・メーカーほど、導入しやすいサービスです。
A3「A3推し活部」— 累計5,000件のノウハウを法人に開放
IP活用商品を展開する株式会社A3は、2026年4月から法人向け支援サービス「A3推し活部」を提供しました。推し活市場への参入や事業拡大を目指す法人が対象です。A3は、自社ブランド「OSHI+」で培ったユーザーインサイト、累計5,000件以上のIP企画実績、会員数40万人超の自社プラットフォーム「eeo」を組み合わせ、戦略立案から製造・販売まで一貫して支援すると発表しました。A3の調査によると、国内15〜69歳の約3人に1人が「推しがいる」と回答しました。A3は、「推しにお金を使っている」人数を約1,997万人、国内市場規模を約3.9兆円と推計しています(PR TIMES)。
研究所メモ: 3.9兆円という市場規模の大きさより、「企画を実施したがファンの熱量を引き出せなかった」という失敗の声が背景にある点に注目しました。推し活は、文脈やカルチャーの理解が成否を分ける領域です。自社にノウハウがない企業ほど、こうした伴走型の支援サービスを使う価値があります。
Hamaru Strategy — ランダムグッズは89.9%が「嫌い」と回答
Hamaru Strategyは、3月28日から4月3日にかけて実施した「ランダムグッズに関する消費者意識調査2026」の中間報告を公開しました。告知はX(旧Twitter)とプレスリリースのみでしたが、延べ35,866件の回答が寄せられました。自由記述4問には、累計269万4,939文字のコメントが集まっていました。回答者は女性が85.7%、社会人が84.6%を占めていました。ランダムグッズに対して「非常に嫌い・嫌い」と回答した割合は、89.9%に達しました。嫌いな理由では、「欲しいものが手に入らない可能性がある」「通常販売のグッズよりお金が掛かる」がいずれも9割以上を占めました。多くの回答者が「嫌いと感じながら購入している」実態も明らかになっていました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 「嫌い」が約9割にのぼる一方で購入は続いている、という矛盾が可視化されたのが今回の意味です。批判の声が大きくても購買行動が止まらない以上、企業側は販売方式そのものを見直す動機を持ちにくい構造になっています。ランダム販売を採用する企業にとって、この調査結果はコンテンツへの印象悪化という中長期のコストを数字で示した資料になります。
今週の所感
今週は推し活が「勘」ではなく「数字」で語られ始めた週でした。
Brave groupの80億円調達、A3が示した3.9兆円という市場推計、Hamaru Strategyの35,866件の調査回答が並びました。いずれも、これまで感覚的に語られてきたファンの熱意を、投資判断や事業判断に使える形へ変える動きです。同時に、ケツメイシのAI曲フリや松任谷由実のAI声優挑戦のように、技術でファンとの接点を増やす実験も進みました。ファンの熱意を数字にする動きと、新しい体験に変える動きが、同じ週に並行して進んでいました。
企業がキャラクターを立てるにしても、タレントを起用するにしても、その先にいるファンの行動をどう可視化し、どう継続させるか。推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングの基本とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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