スレッズの月間利用者が3.5億人超に/鬼滅の刃×S.RIDEタクシーが都内を走る【週刊推し活ニュース 2025年7月11日号】

2025年7月4日〜7月10日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週は、推し活の接点が生活の動線そのものに広がった週でした。
Metaの「スレッズ」は2周年を迎え、月間アクティブユーザー数は3.5億を超えました。スレッズはネタバレ防止機能やDM機能で、ファン同士が交流しやすくしていました。ADKマーケティング・ソリューションズとブレインパッドは、IPビジネスの「感覚」をAIで可視化する「共創Labo」を紹介しました。
現場では、コラボの対象がモノから移動や体験へと広がりました。『鬼滅の刃』とタクシーアプリ「S.RIDE」のコラボでは、ラッピング車両8台が都内を走っていました。6月13日発売の「ちいかわ×サンリオキャラクターズ」は、即完売を受けて受注生産販売に切り替わりました。
さらに、ホテル三日月はXRイベントを開催すると発表しました。横須賀市はAR技術でスカジャンのバーチャル試着を展開しました。ENHYPENも、日本4都市を含む世界約40都市の映画館でVRコンサートを開きました。ホテル・自治体・音楽の現場で、XRの活用が同時に広がっていました。
SNSとAIが、推し活データの読み方を変え始めた
スレッズ — ネタバレ防止・DM機能で「推し活」コミュニティを支援
Metaが提供するSNS「スレッズ(Threads)」が、Instagramとは異なる独自の成長を遂げていました。2023年のサービス開始から5日間で1億アカウントを突破し、2025年3月時点で月間アクティブユーザー数が3.5億を超えました。同社は「パーソナライゼーション」「コミュニティ」「クリエイター」を機能開発の3本柱にしていました。テキストや画像にぼかしを入れる「ネタバレ防止機能」や、DMを送れるメッセージ機能も強化しました。スレッズではエンターテインメント分野のユーザー交流が盛んで、「推し活」のコミュニティとして注目を集めていました。ユーザーの3分の1以上は、Instagramとは異なるアカウントをフォローしていました。閲覧行動のうち返信が占める割合は50%に上っていました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 「返信が閲覧の半分を占める」という数字から、スレッズはコンテンツを見る場というより、会話する場だと分かります。ファンコミュニティを持つ企業がSNS運用を考えるとき、投稿の作り込みより、ファン同士のやり取りが起きやすい設計のほうが効果を上げる可能性があります。ファンマーケティングの基本ともあわせて読んでみてください。
ADKマーケティング・ソリューションズ×ブレインパッド — IPビジネスの「感覚」をAIで再現可能にする
ADKマーケティング・ソリューションズとブレインパッドは、「共創Labo」を展開していました。属人的になりがちなIP(知的財産)ビジネスの判断を、AIとデータで可視化・分析する取り組みでした。6月12日の「宣伝会議マーケティングサミット2025」に両社が登壇し、進行中の2プロジェクトを紹介しました。1つは、広告や映像の宗教的・文化的リスクを自動検知する「倫理チェックAIエージェント」です。もう1つは、蓄積データとAI技術を組み合わせて顧客像を描くペルソナ生成ツール「エモグラ」です。ブレインパッド側は「日本企業の約8割がDXに取り組むが、データやAI活用は他国に比べて出遅れている」と指摘しました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 映画の興行収入が目標に届かない理由が特定できない、といった課題は、多くの企業のIPビジネスに共通します。ファン理解を「勘」から「データ」に移す取り組みは、規模の大きいIPホルダーに限らず、自社のファンコミュニティを持つ企業にも応用できます。
音楽アーティストとの継続コラボが、体験を作った
資生堂×椎名林檎 — 美容液のキャンペーンソングをMVで公開
資生堂は7月9日、SHISEIDOブランドの美容液「アルティミューン」と椎名林檎のコラボレーションキャンペーン「ストレス解放区」を開始しました。書き下ろしのキャンペーンソング『実験中』のミュージックビデオを、椎名林檎の公式YouTubeサイトで公開しました。演奏シーンには石若駿さん、鳥越啓介さん、名越由貴夫さんといったライブサポートメンバーも参加していました。資生堂は昨年もリップ製品で椎名さんとコラボし、アリーナライブツアー「(生)林檎博’24ー景気の回復ー」を応援しました。今回のコラボは、その反響を受けて実現したものでした。7月10日からは六本木ヒルズカフェ/スペースで、フォトスポットやゲーム体験コーナーを備えた関連イベントも開催されていました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 商品の紹介動画としてではなく、アーティスト名義のミュージックビデオとして公開している点が特徴です。前年のリップコラボからライブツアーの応援へと関係を積み重ねてきたため、単発のタイアップでは得にくいファンの信頼を得ています。継続するコラボだからこそ、単価の高い美容液にも起用できたと考えられます。
飲食とスナックが、期間限定コラボで店頭を彩った週
モスバーガー×ハイキュー!!、カルビー×ちいかわ — 外食とスナックが打った夏限定策
モスバーガーが『ハイキュー!!』とコラボした夏の福袋「サマーラッキーバッグ」を数量限定で発売すると発表しました。福袋には食事補助券5,000円分(500円×10枚)が入っていました。東京都内4店舗と仙台市内4店舗には、キャラクターの等身大パネルを設置するとしていました。都内4店舗と仙台市内全12店舗の計16店舗では、コラボ番号札も導入するとしていました。実施期間は2025年7月3日から9月上旬でした(アニメ!アニメ!)。カルビーは「じゃがりこ細いやつ サラダ」と『ちいかわ』の初コラボを発表しました。デザインはカップ6種類、フタ12種類で、7月中旬から全国のコンビニエンスストアと「ちいかわらんど」限定で、数量限定で販売するとしていました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 食事補助券という現金同等の特典を福袋に入れる設計は、コラボグッズ目当ての客を通常の飲食利用にも誘導する仕組みです。パッケージだけを差し替えるじゃがりこの手法とは対照的に、体験の中に金銭的な価値を組み込む発想として参考になります。
ヱビスビール×荒木飛呂彦、うまい棒×エヴァ — 酒とお菓子の周年アニバーサリー施策
サッポロビールは、荒木飛呂彦描き下ろしデザインの「ヱビスビール」コラボ缶第2弾を2025年9月17日に発売しました。今年2月発売の第1弾は、明治期の美人画ポスターを現代風に描き直したデザインで好評でした。第2弾のテーマは「洋装」の美人画でした。2〜5月に東京で開催したコラボイベントは、大阪でも新たに開かれることが決まっていると発表されました(ORICON NEWS)。ムービックは『エヴァンゲリオン』30周年記念アイテムを発売すると発表し、全国のアニメイトで7月26日から「エヴァンゲリオン30周年記念フェア」を開催すると発表しました。国民的お菓子「うまい棒」とのコラボ商品「しん・えう”ぁんげりおん うまい棒」(30本入り、1,512円)も用意されていました(超!アニメディア)。
研究所メモ: ヱビスは「第2弾」、エヴァは「30周年」と、どちらも単発で終わらない積み重ねを打ち出しています。1回限りのコラボは、話題が一過性で終わりがちです。第◯弾・◯周年という区切りを設ければ、次の展開を待つファンを増やせます。
アパレル小売が、ファン発のキャラクターを店頭に迎えた
ビームス×ヒプノシスマイク — 「マンガート」が受注生産で限定スウェットを展開
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』と「マンガート ビームス」がコラボし、ビームス公式オンラインショップで完全受注販売を実施しました。商品は、6つのディビジョン(地域)ごとにカレッジ風フォントをデザインしたスウェットのセットアップです。トップス・ボトムスとも、価格は各13,200円(税込)に設定されていました。受注期間は2025年7月1日11時から7月27日23時59分まででした(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 完全受注販売に絞ることで、初回から仕入れ量の見込み違いによる過剰在庫を避ける設計です。1点13,200円という高単価アイテムほど、需要を確認してから作る受注方式のほうがリスクを抑えられます。
アベイル×カラフルピーチ — UUUM所属の実況グループがアパレル店頭に並ぶ
アパレルチェーンのアベイルが、UUUM所属の人気実況グループ「カラフルピーチ(からぴち)」のグッズを発売すると発表しました。販売開始は全国店舗が7月5日、オンラインが同日12時と発表されました。商品はメンバー11名の集合デザインが中心で、Tシャツやトートバッグ、ネックレス、イヤリングなどがありました。Tシャツ以外の商品は、1商品名につき1人1点まででした(インサイド)。
研究所メモ: アニメIPだけでなく、YouTubeの実況グループのグッズもアパレル量販店の店頭に並ぶようになりました。1商品名につき1人1点という購入制限は、転売対策であると同時に、より多くのファンにグッズを行き渡らせる工夫でもあります。
老舗IPどうしの掛け合わせが、コレクター需要を掘り起こした
遊戯王×サンリオキャラクターズ — 「ブラック・マジシャン×ハローキティ」で先行販売
「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」とサンリオキャラクターズのコラボグッズが、KAIBA CORPORATION STOREとサンリオアニメストアONLINEで7月6日まで先行販売されました。デザインは「ブラック・マジシャン×ハローキティ」「青眼の白龍×シナモロール」など、モンスターとキャラクターを掛け合わせたものです。価格はアクリルキーホルダーが660円、マグカップが2,035円で、店頭・通販での販売は8月8日に始まると発表されていました(インサイド)。
研究所メモ: 1990年代のカードゲームと、幅広い世代に浸透したサンリオを掛け合わせることで、遊戯王世代とサンリオ世代という異なる客層の重なりを作っています。先行販売と通常販売で時期をずらす手法も、複数回の購買機会を生む工夫です。
ちいかわ×サンリオキャラクターズ — 即完売を受けて全21アイテムを受注生産
サンリオは、6月13日に発売され即完売となった「ちいかわ×サンリオキャラクターズ」シリーズ全商品について、受注生産販売を実施しました。受注期間は7月10日12時から7月18日12時までで、サンリオオンラインショップ本店のみで受け付けていました。「ちいかわ&ハローキティ」「ハチワレ&シナモロール」などペアデザインの全21アイテムが対象です(インサイド)。
研究所メモ: 即完売してから受注生産に切り替えたサンリオの対応は、初回販売を需要調査として扱う設計です。売り切れで終わらせず、確認した需要をそのまま生産数に反映できれば、機会損失と過剰在庫の両方を避けられます。ランダムグッズ商法の設計を考えるうえでも参考になる事例です。
タクシーと地域の祭りが、推し活の舞台に変わった
S.RIDE×鬼滅の刃 — ラッピングタクシー8台が声優のCMを載せて走る
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の公開を記念し、タクシーアプリ「S.RIDE」とのコラボが7月8日にスタートしました。竈門炭治郎と柱たち計8名がデザインされたラッピングタクシー8台が、東京都内23区と武蔵野・三鷹地区を走っていました。利用者はアプリ上で、キャラクターアイコンで車両の位置を確かめて配車できました。後部座席のサイネージでは、花江夏樹さんら声優4名による限定CMも流れていました(GAME Watch)。
研究所メモ: タクシーという生活インフラの車体を、期間限定の広告面に変えた事例です。乗車という受動的な時間に声優のCMを流すことで、移動そのものをファン向けコンテンツの一部にしています。
青森ねぶた祭×ゴールデンカムイ — ロングセラー菓子「イギリストースト」とコラボ
『ゴールデンカムイ』と、8月2日から7日に催される「青森ねぶた祭」のコラボレーションが実施されると発表されました。日本の夏祭りとのコラボとしては第3弾です。今回のイラストでは、キャラクターが跳人(ハネト)衣装をまとっています。8月2日からは、青森県観光物産館アスパムにPOP UP SHOPも開設されると発表されていました。あわせて、青森のロングセラー商品「イギリストースト」とのコラボ商品が7月29日に発売されると発表されました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 祭りという期間限定の場に、グッズと商品化のタイミングを合わせています。現地に行けないファンにも、地域のロングセラー商品というかたちで「その時期だけ買えるもの」を用意している点が工夫です。
テクノロジーが、遠くのライブや地域の魅力を目の前に運んだ
ENHYPEN — 12K映像のVRコンサートを日本4都市を含む世界約40都市の映画館で
ENHYPENが、初のVRコンサートツアー「ENHYPEN VR CONCERT: IMMERSION」を開催しました。会場は、日本4都市(東京・大阪・愛知・福岡)を含む世界約40都市の映画館でした。12Kの高精細映像と7.1chサウンドで、没入感を高める作りです。ヘッドセットが自分の手の動きを認識し、ライトスティックを振るなどのインタラクション要素も用意されていました。主催するHYBE JAPANは、2024年に実施したTOMORROW X TOGETHERのVRコンサートで満足度99.5%という評価を得ていました。チケットは全席指定4,400円(109シネマズプレミアム新宿のみ5,000円)でした(Mogura VR)。
研究所メモ: 全国に配荷網を持つ映画館を会場にすることで、リアルライブの座席数という制約を超えています。チケットは4,400円で、遠征費用のかかるリアルライブより参加しやすく、地方のファンも足を運べる設計です。
holo Indie — ホロライブが二次創作ゲームを公式ブランド化
VTuber事務所ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社は、二次創作ゲームブランド「holo Indie」を展開していました。2023年11月の始動以来、2025年7月現在までに約30タイトルが配信されました。Steamのレビュー数が5,000を超える作品もありました。運営はグループ会社の株式会社シー・シー・エム・シーが担っています。クリエイターは「ゲームクリエイター・サポートプログラム」に参加すれば、作品で収益を得られました。従来、非公式の二次創作ゲームは収益化が難しく、クリエイターが活動を続けにくいという課題がありました。holo Indieは、この課題の解決を目的に発足しました(Mogura VR)。
研究所メモ: カバーは、非公式ファンゲームでは難しかった収益化を、公式ブランド化というかたちで可能にしています。約30タイトルという数は、ファンの創作活動を制限せず、公式の枠組みに取り込む発想がうまく働いていると分かる数字です。他のIPホルダーにも応用できる考え方だと思います。
ホテル三日月×XR、横須賀市×AR — 宿泊とまちづくりも、XRを取り入れる
ホテル三日月は、「お祭りランド」で期間限定XRイベント「未来×戦国フェス」を7月19日から8月31日まで開催すると発表しました。イベントでは、Meta Quest 3を使った2種類のMRシューティングゲームを提供しました(Mogura VR)。横須賀市は「メタバースヨコスカ」プロジェクトの一環として、アプリ「flah」でスカジャンをバーチャル試着できるAR施策を始めました。スカジャンの3Dデータは累計ダウンロード数5万件を超えていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 音楽ライブ・宿泊施設・自治体という異なる業種が、同じ週にXR技術を採用しました。共通しているのは、遠方や現地に行けない人にも体験の一部を提供しようとする狙いです。ハードウェアが安くなり、単発イベントでもXRを導入しやすくなっている様子がうかがえます。
今週の所感
今週は、コラボが「モノ」から「動くもの・訪れる場所」へと広がった週でした。
タクシーの車体、ホテルのXRイベント、自治体のAR試着。どれも従来のグッズ販売とは違い、体験そのものが商品になっています。一方で、ちいかわ×サンリオの即完売と受注生産、遊戯王×サンリオの先行販売のように、モノを介したIPコラボの人気も変わっていません。体験型と物販型、両方の設計を使い分ける発想が、これからのコラボ戦略には必要になりそうです。
スレッズの月間アクティブユーザー3.5億超という規模も、ファンが集まる場所がSNSプラットフォームそのものへと広がっていることを示しています。自社のファンがどのチャネルに、どのくらい熱心に集まっているのか。今週の動きは、推し活マーケティングの設計原則とあわせて読むと、その確認に役立ちます。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



