鬼滅の刃がファミマ全国1.6万店で"最終決戦"コラボ/吉本興業がVTuber企業バルスを買収【週刊推し活ニュース 2025年7月18日号】

2025年7月11日〜7月17日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは企業が推しコンテンツを自社の看板にしたでした。
鬼滅の刃の劇場版公開に合わせ、ファミリーマートは全国約16,300店舗でコラボ企画を始めました。同じ週に、VTuber事務所のカバーは音楽レーベル「hololive RECORDS」を設立しました。吉本興業グループも、VRライブ企業のバルスを買収しました。ファンコンテンツを一時的な販促に使う企業と、自社の恒久的な事業にする企業が、同じ時期に動きました。
もう一つの流れは、アイドルやキャラクターを企業の「顔」として起用する動きです。カルビーは超ときめき♡宣伝部を起用した通年シリーズを始めました。明治とFRUITS ZIPPERの「NEW OKASHI PROJECT」は2年目に入りました。店頭のリテールメディアで声優の声を流す企業や、広報キャラクターの記者会見を開く企業もありました。
一方で、ホロライブグッズの「66種類ランダム」販売には批判が集まりました。TSUTAYA IP書店は、すぐに販売形式を見直しました。接点が増えるほど、その設計の丁寧さが問われた一週間でした。
企業がアイドルグループを「宣伝部」役に起用した
カルビー×超ときめき♡宣伝部 — 通年シリーズでコンビニ新商品を訴求
カルビーは7月14日、6人組アイドル「超ときめき♡宣伝部」を起用した短尺動画シリーズ「カルビーとつげき宣伝部!」の配信を開始しました。シリーズは2026年3月まで続き、コンビニで展開する約40種の新商品を1本につき1商品ずつ紹介しました。動画ではメンバーが商品を「ときめく」「ときめかない」で判定した後に試食し、感想を述べました。カルビーは新商品の約6割をコンビニ向けに開発しており、このシリーズで10〜20代との接点を作る狙いとしていました(AdverTimes.)。
カルビーは2022年から2024年まで、「じゃがりこ」のTikTokショートドラマ「あげりこ学園」を展開しました。1話あたりの再生回数が100万回を超えた回もあります。
研究所メモ: カルビーは、2026年3月までという長い継続期間を最初から発表しています。単発のタイアップCMと違い、毎回同じフォーマットで新商品を紹介する「枠」を作っています。年間を通じて新商品を出し続ける企業ほど、都度企画を立てるより、更新し続けられるフォーマットを先に用意したほうが効率的です。
明治×FRUITS ZIPPER — 「NEW OKASHI PROJECT」が2年目に
明治は7月7日、原宿発のアイドルグループ「FRUITS ZIPPER」とともに「NEW OKASHI PROJECT」の第2章を始動しました。プロジェクトは2024年8月に始まり、2年目のテーマは「チョコっといい日になぁれ」です。FRUITS ZIPPERは2年連続で「明治おかし大使」を務めました。始動にあわせて継続動画を公開したほか、メンバーが「明治のお菓子の妖精」になった描き下ろしイラストもSNSで公開されました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 明治は1年目で終わらせず、テーマを変えて2年目に更新しました。同じタレントを起用し続けることで、ファンとブランドの関係は年ごとに深まります。単年契約のアンバサダー施策では得にくい「継続してきた」という信頼を、明治は2年目に入ったことで示しています。
声優・キャラクター・メタバースが、企業の接点を広げた
ストアギーク×マイナビ — 声優起用のサイネージ「ドラッグストアVOICE」
ストアギークとマイナビは7月15日、声優を起用したTikTok連動型コンテンツ「ドラッグストアVOICE」のメーカー向け提供を開始しました。店舗の棚に設置するリテールメディア「ストアギークサイネージ」とTikTokを連動させ、購買直前の消費者にアプローチする仕組みです。2025年2月1日から4月30日に実施したPoCでは、声優の山口勝平さんと平田広明さんを起用したオーラルケア・スキンケア動画を配信しました。実施店舗では、非実施店舗と比べてカテゴリ購買意向・購買効果ともに上昇したといいます(AdverTimes.)。
研究所メモ: この施策は、SNSで興味を持ってもらう段階と、店頭で購入を促す段階に同じ声優の声を使っています。動画とサイネージを別々の担当部署が作ると、声のトーンがずれがちです。同じ人の声を最初から最後まで使ったことが、購買直前の後押しになったと考えられます。
サンエックス「広報コロニャ」— 就任2周年で初の記者会見
サンエックスは7月11日、広報キャラクター「コロニャ」の就任2周年を記念し、東京都内のショールームで初の「記者会見」を実施しました。報道機関に加え、抽選で選ばれたファンを「記者」として招き、質疑応答やチェキ撮影を行いました。会見では全国22カ所のイベント参加などこれまでの活動を振り返り、コロニャをモチーフにした新商品4種も発表しました。来場者は2日間で合わせて約40人でした(AdverTimes.)。
研究所メモ: サンエックスは、招いたファンに「記者」の役割を任せました。広報担当に見立てたキャラクターが、実際に広報活動の実績を語り、ファンからの質問に答えます。企業の広報活動そのものをコンテンツにする発想で、キャラクターグッズの販促とは別の使い方です。
テレビ朝日×クラスター×電通 — Mステとメタバースを連動
テレビ朝日は7月18日から8月17日まで、メタバース空間「光と星のメタバース六本木」で体験型イベント「メタメタ大作戦2025」を開催しました。テレビ朝日・電通・クラスターの3社が共同出資する事業の第2弾で、昨年は計21万人以上が来場しました。7月18日放送の「ミュージックステーション SUPER SUMMER FES 2025」とも特別に連動しました。FRUITS ZIPPER、NiziU、CUTIE STREETなど計6組がアバターとして登場し、来場者がMステ名物の”階段おり”を一緒に体験できる企画を実施しました(AdverTimes.、ゲームハック、PR TIMES)。
研究所メモ: この企画は、番組を見る体験と会場に行く体験を同じ放送日に重ねています。テレビの前のファンとメタバースの来場者が、放送当日という同じ時間に集まる形です。そのため、番組の視聴がメタバース会場への来場のきっかけになります。放送とイベントを別々に企画してきた企業には、両方を同時に動かすこの発想が参考になります。
映画公開に合わせ、全国チェーンが作品色に染まった
鬼滅の刃×ファミリーマート — 劇場版公開に合わせ全国約1.6万店舗でコラボ企画を展開
ファミリーマートは7月15日から、全国約16,300店舗でコラボ企画「ファミマで炭治郎たちとひと休み」を始めました。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の7月18日公開を記念した企画です。店舗では「無限ころじゃが」など複数のコラボ商品や一番くじ、描き下ろしグッズを扱います。東京・浅草には、「藤の花の家紋の家」をイメージしたラッピング店舗もありました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: ファミリーマートは、全国16,300店舗での展開を公開日に合わせて始めました。全国チェーンの強みは店舗数そのものです。作品への関心が最も高まる公開週に、日常の買い物の場でコラボ企画を展開しています。そのため、映画を見ない客の目にも作品が触れます。
ワンピース×HIPSHOP — 「エッグヘッド編」24種のアンダーウェアを発売
アンダーウェアブランド「HIPSHOP」は、「ワンピース」とのコラボ第2弾「HIPSHOP ONE PIECE Series」を発表しました。「エッグヘッド編」をテーマにした新商品24種類を、7月19日に発売すると発表しました。価格は大人サイズが2,800円、キッズサイズが2,500円(税込)です。HIPSHOPは2024年の第1弾で114種類を発売しました。商品のパッケージは、部屋に飾ったりコレクションしたりして楽しめました(インサイド)。
研究所メモ: 全国チェーンの店頭ジャックとは対照的に、HIPSHOPは種類の多さでコレクション欲を刺激しています。前回114種類を出した実績があるからこそ、今回の24種類でも「集めきれない」という期待が生まれます。自社が持つ資産が「店舗数」なのか「バリエーション」なのかで、適したコラボの規模は変わります。
定番アパレルの棚に、キャラクターグッズが実用品として並んだ
ユニクロ×シルバニアファミリー、アベイル×ちいかわ — 実用品にキャラクターを添える
ユニクロは7月25日に、「シルバニアファミリー」のグラフィックTシャツ「UT」コレクションを発売しました。「赤ちゃんコレクション」をコンセプトにした全4種で、価格は各1,500円(税込)です(インサイド)。アベイルも7月12日から「ちいかわ」グッズを発売しました。漫画コマ風デザインの「冒険記録ノート」や、ペットボトルホルダーなどの保冷アイテムをそろえていました(インサイド)。
研究所メモ: 両社とも、Tシャツやノート、ペットボトルホルダーといった生活必需品にキャラクターをあしらっています。キャラクターグッズとして単体で売るより、毎日使うものの選択肢の一つとして並べる形です。日用品売り場という「日常」の棚に置くことで、ファン以外の客の目にも留まる点が共通しています。
飲食チェーンが、ゲームキャラクターで来店のきっかけを作った
コメダ珈琲店×ポケモン — オリジナルメニューと『Pokémon GO』を連動
コメダ珈琲店・おかげ庵は7月24日から、「ポケモンと、たっぷりくつろご。」キャンペーンを実施すると発表しました。キャンペーンでは「コダックのマンゴーミルク氷」などのオリジナルメニューを提供すると発表しました。7月17日から全国の店舗が『Pokémon GO』のポケストップやジムになると発表しました。期間中には伝説レイドバトルも開催すると発表しました(4Gamer.net)。
研究所メモ: 店内メニューという「来店してから」の体験に、アプリ内という「来店する前」の体験を重ねています。ポケストップやジムは、店に用がなくてもアプリを開けば目に入る仕掛けです。実店舗とアプリの両方で客と接点を持つ企業ほど、来店前と来店後の二つの仕掛けを作りやすくなります。
CoCo壱番屋×モンハンワイルズ、サーティワン×スーパーマリオ — クエスト形式の販促
カレーハウスCoCo壱番屋は7月18日から8月31日まで、『モンスターハンターワイルズ』とのコラボ「CoCo壱HUNTER」を実施すると発表しました。注文金額1,000円ごとにコースターを進呈する企画など、3種類の「クエスト」形式で客に参加を呼びかけました(インサイド)。サーティワンは7月1日から開催していた『スーパーマリオ』コラボに、7月18日から「マリオスプーン付きスペシャルダブルカップ」を追加しました(食品産業新聞社ニュースWEB)。
研究所メモ: 2社はどちらも、客の来店が1回で終わらないように企画を組んでいます。CoCo壱は複数の参加方法を用意するクエスト形式で、サーティワンは会期中の商品追加で、それぞれ「もう一度来る理由」を作りました。コラボは発表した直後に客が集中しがちです。来店の時期を分散させる工夫は、客数の底上げにつながります。
VTuber事業が、音楽・資本・炎上対応で経営の足場を固めた
カバー「hololive RECORDS」— 新規音楽レーベルを設立
VTuber事務所ホロライブプロダクションを運営するカバーは7月16日、新しい音楽レーベル「hololive RECORDS」の設立を発表しました。新レーベルは、これまでの音楽制作・流通体制を1つのレーベルとして位置づけ直したものです。6月25日には所属タレント「AZKi」さんが、音楽活動の拠点をビクターからホロライブへ移すと発表していました。この発表の背景には、今回のレーベル設立があったとみられます(ITmedia、KAI-YOU)。
研究所メモ: カバーは、外部レーベルに任せてきた音楽活動を、自社の名前のレーベルで扱うことにしました。タレントの人気に頼った収益から、著作権や流通を自社で持つ事業構造への移行だと読めます。カバーがファンコンテンツを一過性の話題で終わらせず、恒久的な事業の柱にしようとしていることが、レーベル名から読み取れます。
吉本興業グループ — VRライブ「SPWN」運営のバルスを買収
バルス株式会社は2025年7月14日付で、吉本興業グループの株式会社FANYへ全株式を譲渡し、子会社となりました。バルスは2017年の創業以来、VTuberプラットフォーム「SPWN」の運営やXRライブ制作を手がけてきた企業です。当時はお笑いとVTuberのコラボ企画や、吉本所属タレントを起用したアニメ制作、VTuberを活用した地域活性化プロジェクトなどが予定されていました(Mogura VR)。
研究所メモ: この買収で、お笑い興行の会社がバーチャルライブの技術と人材をまとめて手に入れました。実績のある企業を買う方が、自社でゼロから技術を育てるより早く進められます。この事例は、VTuberや推し活の領域が、資本の移動によって業界の力関係が入れ替わる段階に来ていることを示しています。
ホロライブグッズの「66種ランダム商法」— 批判を受け即座に販売方式を変更
SHIBUYA TSUTAYA IP書店は7月17日、ホロライブグッズの販売形式について謝罪しました。対象は、8月1日に開催された販売イベント「ホロナツパラダイス POP UP SHOP」で「66種類ランダム」の形式だった一部商品です。同店は、ユニットや期ごとに分けた5グループ(各12〜14種)でのランダム販売に変更すると発表しました。所属タレントの「戌神ころね」さんもX上で「これを自分のリスナーさんに笑顔で買ってね!とは言えない」と苦言を呈していました(インサイド)。
研究所メモ: 66種類という選択肢の多さは、コレクション欲ではなく不安をあおってしまいました。発表から謝罪、方式変更までを短期間で行った対応の速さも見どころです。ランダム商法はコレクション欲を刺激する定番の手法です。ただし選択肢の数がある線を超えると、「集める楽しさ」は一気に不満に変わります。
地方の放送局と広告技術が、VTuberという新しい回路を試した
岩手めんこいテレビ×ユニバースプロダクション — ご当地VTuberオーディションを開始
岩手県の放送局・岩手めんこいテレビと、VTuber事業を展開するユニバースプロダクションは業務提携を発表しました。両社は「岩手めんこいテレビ公認 岩手県ご当地VTuber」のライバーオーディションを始めました。募集期間は7月12日から8月17日まで、対象は18歳以上の女性で今後2年以上継続して活動できることが条件でした。合格者は2025年10月頃にデビューし、番組出演のほかプロモーション支援にも関わると発表されました(Mogura VR)。
研究所メモ: 地方局が、番組出演や地域の魅力の発信を担う公認VTuberのライバーを募集した事例です。2年以上という活動期間をあらかじめ条件にしている点も、単発のPR起用とは異なります。地域の魅力の発信を一過性の企画で終わらせず、人格を持ったキャラクターに継続して担ってもらう発想です。
Roblox「だるまゲーム」×かっぱ寿司 — 広告効果検証を兼ねたコラボ
メタバースプラットフォーム「Roblox」の人気ワールド『だるまゲーム』は、7月24日から8月22日まで「かっぱ寿司」とのコラボイベントを開催すると発表しました。このワールドの累計アクセス数は870万回を超えていました。イベントではかっぱ寿司の商品がペットとして登場しました。コラボは株式会社Brave groupと日本電気(NEC)の共同プロジェクトです。Roblox上の広告効果を可視化する取り組みの一環と位置づけられていました(Mogura VR)。
研究所メモ: かっぱ寿司は、870万回アクセスという既存の人気ワールドに広告を出す形をとりました。自社でメタバース空間を作らず、すでに人が集まっている場所を借りています。しかも今回はNECが広告効果を数値で検証する仕組みと組み合わせており、話題作りだけで終わらない設計です。
今週の所感
今週は、企業が推しコンテンツを自社の看板として扱う動きが目立ちました。ファミリーマートは劇場版の公開に合わせ、7月15日から8月4日まで全国約16,300店舗で鬼滅の刃のコラボ企画を展開しました。カバーは音楽レーベルという恒久的な仕組みを立ち上げています。吉本興業グループはVRライブ企業を買収し、その技術と人材をグループに加えました。単発のコラボと継続する事業投資が、同じ週に行われました。
一方で、ホロライブグッズの「66種類ランダム」販売には批判が集まり、販売店は翌17日に販売方式の変更を発表しました。ファンとの関係は、売り方ひとつで壊れかねません。声優の声、キャラクターの記者会見、アイドルの宣伝部起用など、企業がファンと接する方法は増えています。方法が増えるほど、一つひとつを丁寧に設計する必要があります。
自社のファンとの向き合い方を考える際は、推し活マーケティングの設計原則やコラボカフェの作り方とあわせて今週の動きを確認してください。
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