松村北斗が浜名湖パルパルの「ファン代表」に就任/FGOとJR東海が名古屋周遊の「推し旅」コラボ【週刊推し活ニュース 2025年7月25日号】

2025年7月18日〜7月24日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードはタレントとキャラクターの「素」を借りるでした。
静岡県浜松市の遊園地「浜名湖パルパル」は、開園66周年を迎えました。運営会社は、地元出身のSixTONES・松村北斗をファン「パルっ子」代表に起用しました。花王のヘアケアブランド「エッセンシャル」は、WebCMに出演するユニットROIROMに、新商品をモチーフにしたドリンクの監修を依頼しました。サントリーは、鈴木愛理が演じるキャラクター「限界ちゃん」を約2年半ぶりに復活させました。3社はいずれも、タレント本人の出身地や実演といった「本当らしさ」を中心に企画を組み立てていました。
一方で、老舗IPを企業広告に起用する動きも続きました。QTnetは、仮面ライダー7人を起用したセキュリティ啓発CMの第2弾を公開しました。明治は『鬼滅の刃』とのコラボで、作品初となるピールオフ広告を渋谷駅に掲出していました。ゲームIPでは、JR東海が「推し旅」施策として『Fate/Grand Order』とコラボしました。8月1日からは、名古屋を舞台にしたデジタルスタンプラリーが始まりました。
タレントとキャラクターの「素」を、ブランド体験に持ち込んだ
松村北斗×浜名湖パルパル — 地元出身タレントを66周年の代表に
静岡県浜松市の遊園地「浜名湖パルパル」は、7月18日に開園66周年を迎えました。運営する遠鉄観光開発はこれを機に、同県出身のSixTONES・松村北斗を特別アンバサダー「パルっ子」代表に起用しました。周年期間は2025年7月18日から2026年7月16日まででした。松村は、幼少期から同園を訪れていたことを公言していました。テレビCM「ただいま、パルパル。」は、松村がバスに乗って園に「帰ってくる」場面から始まりました。その後は過去の記憶と重なるように園内を巡る、密着ドキュメンタリー風の内容でした。CMはテレビのほか、浜松駅前の大型ビジョンでも放映されていました。公式YouTubeチャンネルなどでは、園内を紹介するインタビュー動画も配信していました(ORICON NEWS)。
タイトルの「ただいま」は「帰ってきた」と「只今」のダブルミーニングだといいます。
研究所メモ: この企画は、松村が地元出身であるという事実を中心に組み立てられています。全国区の有名人を呼ぶより、その土地で育った本人が記憶を語るほうが、施設への愛着に説得力が出ます。周年施策でアンバサダーを選ぶ企業は、知名度だけでなく「土地との接点」を条件に加える価値があります。
ROIROM×花王エッセンシャル — 出演ユニットがドリンクを監修するポップアップ
花王のヘアケアブランド「Essential」は7月24日から27日まで、東京・表参道のZero Base表参道で体験型カフェ「Essential 新感覚Cafe」を開催しました。カフェでは、7月12日発売の「ハイダメージ髪向け新シリーズ」が持つ“とろとろ”“ぷるぷる”“うるキラ”という3つのテクスチャーを、限定ドリンクで再現しました。ドリンクを監修したのは、同ブランドのWebCMに6月から出演していた男性ユニット「ROIROM」です。本多大夢さんと浜川路己さんがそれぞれ1種、両名で1種を担当しました。購入者はROIROMのサイン入りチェキ展示やヘアアレンジ体験も楽しめました(AdverTimes.)。
ドリンク購入とヘアアレンジ体験には、いずれも事前の整理券が必要でした。
研究所メモ: 花王は、新商品の質感という説明しにくい価値を、出演タレントに「監修」という当事者の立場で表現してもらっています。CMに出るだけでなく限定ドリンクの監修を依頼すると、ファンにとってこの施策は「見るだけの広告」から「タレントが関わった商品」に変わります。起用したタレントの役割を広告塔から共同開発者へ広げる方法は、他の美容・食品ブランドにも応用できます。
サントリー「限界ちゃん」復活 — TikTok600万回再生のキャラクターでハイボール需要喚起
サントリーは7月10日、カップ氷とハイボール缶を組み合わせる楽しみ方を提案するプロモーション動画「コンビニは冷蔵庫」を公開しました。同社は、アーティストの鈴木愛理が演じるキャラクター「限界ちゃん」を約2年半ぶりに復活させました。動画は、限界ちゃんが仕事帰りに自宅でハイボール缶を晩酌として楽しむ様子をミュージックビデオ形式で描いています。曲は動画のために書き下ろされたオリジナルソングです。動画は、対象コンビニでハイボール缶を買うとカップ氷が割引になるキャンペーンと連動していました。ターゲットは20〜30代のコンビニ利用者でした(AdverTimes.)。
歌詞には鈴木愛理にゆかりのあるフレーズも織り込まれ、SNSでは「可愛すぎてもう30回以上見ている」といったファンの反応が目立ちました。
研究所メモ: サントリーは、一度作ったキャラクターを眠らせたままにせず、需要期に合わせて再登場させました。新しいキャラクターを作るより、すでにファンが付いているキャラクターを復活させるほうが、早く反響を得られます。歌詞に演者ゆかりの要素を入れたことで、一般の視聴者に向けた訴求とファン向けの仕掛けを両立しています。
懐かしいヒーローとマンガのキャラクターで、広告と店頭を作り替えた
QTnet×仮面ライダー — 昭和ヒーロー世代の経営層にセキュリティを訴求
九州電力グループの通信事業者QTnetは7月17日、仮面ライダーとのコラボCM第2弾を公開しました。目的は、法人向けICTサービスブランド「QT PRO」の訴求でした。前回登場したライダー1号・2号・V3・ライダーマンに、今年は仮面ライダーX・アマゾン・ストロンガーが加わり、計7人が出演していました。QTnetは初期作品のライダーを起用し、当時子どもだった世代、つまり現役の経営層を狙いました。クラウド「栄光の7人ライダー」篇と脆弱性診断「ショッカーアジト」篇の2本を福岡エリアで放映し、公式YouTubeではディレクターズカット版も公開していました(PR TIMES)。
脆弱性診断篇では、対策を怠ったショッカーのアジトが自滅するコミカルな描写で、セキュリティの重要性を伝えていました。
研究所メモ: QTnetは、ターゲットの年齢から逆算し、その世代が子ども時代に見ていたヒーローを起用しました。IPコラボは若年層向けと思われがちです。しかし経営層が意思決定するBtoBサービスほど、懐かしさで顧客との心理的な距離を縮めやすくなります。自社の顧客が何歳の時に何を見ていたかを起点に起用するIPを選ぶ発想は、業種を問わず使えます。
明治おいしい牛乳×鬼滅の刃 — 渋谷駅で作品初のピールオフ広告
明治は7月21日から27日にかけて、『鬼滅の刃』のピールオフ広告を渋谷駅に掲出していました。駅の利用者は、名シーンをあしらった全30種類のオリジナルカードを剥がして持ち帰ることができました。カードがすべて剥がされると、「おいしさに全集中」のメッセージとともにOOH広告が現れました。広告には、炭治郎を含む4人のメンバーが「明治おいしい牛乳隊」として描き下ろされていました。この広告は、7月18日の劇場版公開にあわせた「明治おいしい牛乳」×『鬼滅の刃』キャンペーン第5弾の一環です。カードは21日・23日に1500枚ずつ、合計3000枚が掲出されました(ナタリー、GAME Watch、超!アニメディア、オタク総研)。
同キャンペーンでは、9月30日までオリジナルグッズのプレゼント企画も実施していました。
研究所メモ: この広告は、駅の利用者がカードを剥がすことで完成します。通り過ぎるだけの広告と違い、カードが剥がされないと全体像が見えません。そのため、駅という通過点でも人が立ち止まる理由ができました。OOH広告にファンが手を加えられる余地を残すと、完成までの過程がSNSで発信する材料になります。
出版とアパレルが、参加のハードルを遊びで下げた
集英社「部活やろうぜ!」— 部活マンガ200作品で新入部員の募集を後押し
集英社は4月2日から、全国の部活生や新入生を後押しする「部活やろうぜ!」キャンペーンを開始しました。特設サイトでは「部活」をテーマにしたマンガ約200作品を紹介し、その場で試し読みもできました。各作品のキャラカットを使った「部活勧誘ポスター」もダウンロード形式で配布し、実際の部活勧誘に使えるようにしました。『テニスの王子様』『アイシールド21』『黒子のバスケ』などのキャラクターが登場したスペシャルムービーも公開しました。特設サイトは開設後すぐにSNSで話題になり、ムービーの累計再生回数は公開から1週間で100万回を超えました(AdverTimes.)。
現役の教員や部活顧問からポスターの使用方法に関する問い合わせもあったといいます。
研究所メモ: 自社のIPを「読ませる」だけでなく、学校現場という第三者の場で「使ってもらう」設計にしています。ポスターを無料で配布したことで、自社では動かせない教員という立場の人が、ポスターを通じて作品を広める役を担いました。IPを持つ企業が部活離れのような社会課題に取り組むと、販促の枠を超えた協力者を得やすくなります。
グラニフ「みつけて!グラニフ!」— 旗艦店の謎解きで商品展開の幅を訴求
ファッションブランド「グラニフ」は、2025年春夏キャンペーンの一環として謎解きイベント「みつけて!グラニフ!」を開催しました。会場は公式オンラインストアと原宿の旗艦店で、旗艦店での企画名は「なぞとき?グラニフ!in graniph Tokyo」です。特設サイトの4ステージに加え、旗艦店では店舗全体を使ったリアル謎解きを実施しました。参加者は1階の5カ所を巡ると、2階へ進めました。謎をプリントした非売品Tシャツを通常商品と同様に陳列するなど、アパレルならではの仕掛けを盛り込みました。会期3日間で343人が挑戦し、既存顧客からは「こんなに雑貨の展開があるとは知らなかった」との声も上がりました(AdverTimes.)。
クリア後には2階併設カフェで、参加者限定のシークレットラテアートも提供されました。
研究所メモ: グラニフは謎解きの難易度をあえて高めに設定し、ブランドファンに加えて謎解きファンも呼び込みました。既存の什器や装飾を活用して費用を抑えながら、「本気で遊び心を表現する」というブランドの姿勢を来店者に体験してもらっています。店内を回ってほしい商品群がある店舗ほど、売り場を巡る動線そのものを遊びにする発想が役立ちます。
外食とプロ野球が、季節とストーリーでファンを動かした
ファミマ・マクドナルド・ロッテリア — 物価高でも続くハワイフェア
外食やコンビニ各社が今夏、「ハワイフェア」を相次いで展開しました。ファミリーマートは7月15日から「ファミマでうまアロハ〜♪」施策を始めました。同社は7月22日、ドーナツ「マラサダ」の販売数が発売初週で50万個を突破し、同社パンカテゴリの売上で1位になったと発表しました。「アサイーボウルアイス」も初週で15万5000個を突破しました。俳優の吉田鋼太郎と八木莉可子が出演するテレビCMも放映しました。マクドナルドは7月16日から限定バーガーを投入し、ロッテリアやピザーラ、丸亀製麺などもハワイをテーマにした商品を展開していました(AdverTimes.)。
ファミリーマートは前年のハワイフェアで計画比116%を達成しており、今年は110%を目指すとしていました。
研究所メモ: 「ハワイ旅行は高すぎて行けない」という状況だからこそ、企業はハワイを疑似体験として売り場に持ち込んでいます。行けない不満を否定せず、コンビニやファストフードという日常の場で旅先の気分だけを味わってもらう形です。これは、実際の旅行が遠のくほど代わりの疑似体験を用意できる企業が需要をつかむ、季節マーケティングの典型例です。
横浜DeNAベイスターズ — 試合結果と連動するショートドラマで新規ファン開拓
横浜DeNAベイスターズは4月から、公式SNSでシーズンの試合結果と連動するショートドラマ「神様、おねがい」を配信していました。最新話は2週間に一度、月曜日に更新されていました。主人公はベイスターズファンの大学生・浜辺きららです。死神に取りつかれた浜辺が「ベイスターズがリーグ優勝を達成したら助かる」と約束し、チームの戦いを見守るストーリーです。同社の長谷川武徳氏は「特に若い方々へのリーチ方法を検討していました」と話しました。企画・脚本は、クリエイティブディレクターの高崎卓馬氏が担当しました(AdverTimes.)。
視聴者は日々の試合結果を確認するたびに、主人公の運命を意識することになりました。
研究所メモ: この施策の新しさは、ドラマの完成度よりも、現実の試合結果と連動する「ゲーム性」を優先した点にあります。球団は縦型動画の品質を競う代わりに、ファンが毎日確認している試合結果を物語の展開に組み込みました。日々の活動データを持つ企業ほど、そのデータを物語の続きとして提示できる余地があります。
ゲームIPが、鉄道・スポーツ・食品のリアルな場に染み出した
FGO×JR東海「推し旅」— 名古屋を巡るデジタルスタンプラリー
アルマビアンカとJR東海は、『Fate/Grand Order』とのコラボイベント「JR東海×Fate/Grand Order Grand Journey 〜魅力探求都市 名古屋〜」を8月1日から10月26日まで開催すると発表しました。イベントはJR東海の「推し旅」施策の一つで、制服姿のマシュ、ネモ、イシュタル、太公望のオリジナルイラストを使うとしていました。東海道新幹線車内限定のボイスストーリーのほか、名古屋市内4カ所を巡るデジタルスタンプラリーも用意されるとしていました。全チェックポイントを巡ると、限定壁紙をダウンロードできるとしていました。アニメイト名古屋では乗車証明の提示で記念カードのノベルティも配布されるとしていました(インサイド)。
グッズはトレーディング缶バッジやアクリルスタンドなど20種類近くが用意されていました。
研究所メモ: 鉄道会社にとっての「推し旅」は、目的地そのものを楽しむ対象にする施策です。スタンプラリーをすべて巡らないと壁紙が手に入らないため、市内を巡ること自体がファンの目的になる設計です。その結果、名古屋市内での周辺消費にもつながります。移動そのものを商品として売る事業者ほど、IPと組んで「行く理由」を後付けできる余地は大きいはずです。
学園アイドルマスター×プロテイン — キャラクターの持ち味を成分に翻訳
Anidealは、『学園アイドルマスター』のキャラクター「花海咲季」「花海佑芽」とのコラボプロテインを発表しました。受注販売の期間は8月1日から9月2日まででした。商品はゲーム内アイテム「初星ホエイプロテイン」を再現したシェーカーとのセットでした。花海咲季のセットはダークチョコレート風味でアルギニン300mgを、花海佑芽のセットはオレンジ風味でクエン酸900mgを配合していました。価格はそれぞれ4,320円でした(インサイド)。
キャラクターごとに味と成分を変えることで、それぞれのファンが選べる構成にしていました。
研究所メモ: フレーバーだけでなく成分までキャラクターごとに変えている点が丁寧です。パッケージにイラストを貼るだけでなく、「このキャラクラならこの成分」という設定と実際の商品仕様を一致させています。これにより、ファンは購入理由を自分で説明できるようになります。実用品とのコラボほど、設定と仕様の一致が購買の決め手になります。
ポケモン×サンフレッチェ広島 — チームカラーのグッズで観戦を後押し
ポケモンは、「ポケモンセンターヒロシマ」のリニューアル記念商品第2弾として、プロサッカークラブ「サンフレッチェ広島」とのコラボグッズを発表しました。発売はオンラインが8月14日、店舗が16日からでした。デザインはチームカラーの紫を基調に、ヒメグマたちのエンブレムと「こわいかお」のリングマをあしらっていました。商品はタオルマフラーやTシャツ、ピカチュウの耳付きキッズキャップなど計16アイテムでした。8月16日のJ1リーグ第26節ガンバ大阪戦では、コラボ記念のフォトスポットやミニゲームも会場で実施を予定していました(インサイド、サンフレッチェ広島、GAME Watch、4Gamer.net)。
ポケモンは、地域の「ポケモンセンター」を拠点に、地元クラブとの連携を進めていました。
研究所メモ: ポケモンは、全国共通のキャラクターのグッズを、地域のスポーツクラブのチームカラーで作りました。ポケモンというIP自体は誰にとっても同じです。しかしチームカラーを使うことで、「広島のポケモングッズ」という他にない価値が生まれます。全国区のIPを持つ企業が地方拠点を持つなら、地元クラブとの色合わせは低コストで差別化できる手法です。
自治体と百貨店が、XRでファンとの接点を広げた
茨城の鉾田市×ななしいんく — VTuberでシティプロモーション
茨城県鉾田市は、VTuber事務所「ななしいんく」と連携したシティプロモーションを発表しました。VTuberを通じて市の認知を広げ、観光客を呼び込むのが狙いでした。「まちスパチャプロジェクト」の一環として、過去にも参加した因幡はねるさんらが出演する観光動画を制作しました。動画では、観光施設「サングリーン旭」や「フォレストパークメロンの森」、「ほこたメロンフェスティバル2025」の様子を紹介していました。7月20日から特産品やふるさと納税をテーマにしたYouTube生配信を複数回行うと発表しました。地元農園と協力したさつまいも・いちごの栽培企画や、VTuberコラボ商品の開発も予定していました(Mogura VR、PANORA、PR TIMES)。
「まちスパチャプロジェクト」はこれまで岩手県八幡平市や岡山県新見市など7自治体と協力してきました。
研究所メモ: 鉾田市は動画一本の露出で終わらせず、農作物の栽培やコラボ商品化を企画し、経済活動につなげる計画であり、丁寧な設計です。VTuberファンという10代から30代の層に、自治体が直接情報を届ける手段は限られています。鉾田市は、収穫物を市内の無人販売所で販売する企画やふるさと納税の寄附受付を通じて、ファンの関心を購入や寄附につなげる計画です。自治体のふるさと納税施策とIP起用は、成果指標を揃えやすい組み合わせです。
大丸・松坂屋 — VRChatのバーチャルフォト展示会を金沢と同時開催
大丸松坂屋百貨店は、バーチャル空間で撮影された写真作品を集めた「Daimaru Matsuzakaya Virtual Photo Awards vol.2」の受賞作品展を、2025年7月23日から27日まで開催しました。会場は金沢21世紀美術館の市民ギャラリーBと、VRChat内に設けられた展示スペース「ART Frame -Daimaru Matsuzakaya-」の2カ所で、いずれも入場無料でした。募集テーマ「(epoch) 時代を彩る1枚」で集まった作品から最優秀賞1点、優秀賞4点などが選出されました。同社は過去にも同様の展示会を2回開催しています(Mogura VR)。
VRChat内の展示空間は、同社が前年に制作した独自ワールドの中に設置されていました。
研究所メモ: 同社はリアル会場とVR会場で同時に開催し、来場できない人の関心も取りこぼさないようにしました。「現地に来る」ことが前提の百貨店という業態が、バーチャル空間の来場者も数に入れ始めています。地方美術館との連携も、東京一極集中になりがちなアート展示の間口を広げる工夫として参考になります。
初音ミク×XREAL — ARグラスで音楽花火をライブ演出
9月15日に、新潟県阿賀野市のサントピアワールドで「初音ミク 夜空プログラム 2025」が開催されました。7月18日には、このイベントでARグラス「XREAL One Pro」を活用した企画が発表されました。花火大会では音楽花火と初音ミクが特別ARコンテンツ上でコラボする演出が楽しめました。先着50名限定で「スペシャルAR音楽花火」の特別体験に参加できました。参加にはスマホアプリ「ホロモデル」と事前販売の有料チケットが必要で、参加者には限定のオリジナルチェキ風カードが配布されました(Mogura VR)。
「XREAL One Pro」は視野角を広げた上位モデルとして、7月にお披露目されたばかりの新型デバイスでした。
研究所メモ: この企画は、花火大会という完全にリアルなイベントに、ARグラスの体験を50名限定で加えています。体験の枠を先着の少人数に絞ることで、限られた人しかできない体験として話題になりやすくなります。全体を変えずに一部だけデジタル要素を足すこの規模は、地域の夏祭りに取り入れたい自治体や施設にとって現実的です。
アパレルと体験型ショップが、IPを日常に持ち込んだ
ユニクロ×ディズニー「MAGIC FOR ALL」10周年 — アーカイブを復刻
ユニクロとディズニーは、「MAGIC FOR ALL」プロジェクトの10周年を記念したアニバーサリー企画を、7月から2026年8月まで約1年間展開すると発表しました。その一つとして、アーカイブコレクションを8月4日から発売しました。コレクションには、2015年発売のミッキーマウスぬいぐるみを約10年ぶりに復刻した「MAGIC FOR ALL Timeless toy」(全3柄、各1,990円)、過去のUTを再デザインした「Timeless UT」(メンズ全7柄など)、6組のアーティストが手がけた「Disney Art UT」(メンズ全6柄)がありました。ディズニー、ピクサー、マーベル、『スター・ウォーズ』のキャラクターが揃いました(アニメ!アニメ!)。
いずれも全国のユニクロ店舗とオンラインストアで取り扱われていました(一部店舗のみの商品もありました)。
研究所メモ: ユニクロとディズニーは、10周年の中心に新商品ではなく「復刻」を選びました。復刻品は、当時買えなかった人には新商品と同じように映り、当時買った人には懐かしさも感じられる商品です。長期プロジェクトを持つ企業ほど、過去のアーカイブをそのまま再販するだけで、新規開発コストをかけずに周年施策の目玉を作れます。
ジョジョの奇妙な冒険 — 渋谷PARCOに公式の体験型ショップ初出店
『ジョジョの奇妙な冒険』初の体験型公式ショップ「THE★JOJO WORLD」が2025年7月24日、渋谷PARCOにオープンしました。7月17日のオープニングセレモニーには作者・荒木飛呂彦氏が登壇し、歴代主人公9人を描き下ろした等身大パネルの制作秘話を披露しました。店内には、触れると「スタンド使い」になる仕掛けがありました。ほかに、約120体のスタンドから自身の能力に近いものを診断できる「スタンド能力研究所」や、ドリンクやスイーツを楽しめる「イギーカフェ」もありました。単行本の全世界累計発行部数は1億2000万部を突破していました(アニメ!アニメ!)。
荒木氏は「ファンの生活に密接する、スタンドのようなお店になってほしい」と語りました。
研究所メモ: 原作者本人が新規イラストを描き下ろし、開業セレモニーにも登壇しました。ここまでを一体で設計した点に、大きな投資がうかがえます。グッズを並べるだけの公式ショップと違い、店舗そのものが原作の世界観の延長として作り込まれています。長期連載IPを持つ企業が旗艦店を出すなら、原作者の関与をどこまで引き出せるかが体験の質を左右します。
今週の所感
今週は、タレントやキャラクターの「本当らしさ」を中心に置いた施策が目立ちました。
例として、松村北斗の地元出身という事実、ROIROMによる限定ドリンクの監修、鈴木愛理が2年半ぶりに演じた「限界ちゃん」があります。各社はいずれも、起用したタレントに広告塔以上の役割を持たせ、本人の背景や技術を企画の中心に置きました。QTnetの仮面ライダーCMも、ターゲット世代の記憶という「本当らしさ」から逆算してキャスティングしています。
自治体とXRの組み合わせも、同じ構図で読み解けます。茨城県鉾田市は、VTuberの露出を農作物の栽培や販売につなげる計画を発表しました。初音ミクのAR花火の企画は、参加者を限定50名に絞って体験の濃さを保っていました。派手な露出量よりも、ファンとの関わり方を細かく設計できたかどうかが成果を分けています。
自社が起用するタレントやIPに本当らしさをどれだけ持たせられるかを考える際は、ファンマーケティングの視点や推し活マーケティングの設計原則とあわせて今週の動きを確認してください。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



