マクドナルドがポケモン転売で謝罪/MyDearestが累計30億円調達【週刊推し活ニュース 2025年8月15日号】

2025年8月8日〜8月14日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードはファンとの接点は価格帯を選ばなかったでした。
VRゲーム開発のMyDearestは、シリーズC追加ラウンドで約1.7億円を調達したと発表しました。5月の調達と合わせたシリーズC全体の調達額は約17億円、累計調達額は約30億円に達していました。ホロライブプロダクションの設立8周年を記念した体験型花火イベント「Shiny Sparklers Symphony」が、9月6日に開催されました(発表は7月18日)。チケットは配信・グッズ付きS席が15,300円(税込)でした。VTuber発の推し活市場は、スタートアップ投資からライブイベントまで規模を広げていました。
一方、丸美屋の「ちいかわふりかけ」は140円で販売されていました。明治は、「きのこの山・たけのこの里」のどっち派かをAIで判定する参加型イベントを、東京・新宿で無料開催しました。ポケモンカードをめぐっては、マクドナルドが8月11日に謝罪し、より厳格な購入制限を表明しました。数百円のお菓子から数十億円規模の投資まで、ファンを動かす施策が価格帯を問わず並んだ1週間でした。
VTuber経済圏で、投資と周年施策の規模が広がった
わかさ生活×にじさんじ・先斗寧 — 3年目に入ったブルーベリーの縁
わかさ生活は、「にじさんじ」所属の先斗寧を「8月のブルーベリー大収穫祭アンバサダー」に任命しました。コラボ企画の目的は、推し活専用アイケアサプリメント「ブルーベリーアイ LOVE YOU」と、同社が運営するブルーベリー専門店「WAKASA&Co.」の魅力を発信することでした。7月28日には、先斗寧のYouTubeチャンネルでタイアップ配信も行いました。対象商品の購入者には、コラボポストカードとマスコット「ブルブルくん」、リーフレットを提供していました。「WAKASA&Co.」で2,000円以上利用すると、コラボコースターがもらえました(期間:8月1日〜31日)(AdverTimes.)。
両者のつながりは、2023年4月の先斗寧の3Dお披露目に、ブルブルくんが祝いに駆けつけたことから始まりました。今回で3年目のコラボでした。
研究所メモ: わかさ生活はコラボを単発で終わらせず、毎年同じ時期に実施しています。8月8日「ブルーベリーの日」、先斗寧の誕生日、ブルブルくんの誕生日という複数の記念日を重ねている点が、続いている理由です。1回のキャンペーンの規模より、同じ時期に同じ相手と続ける積み重ねの方が、ファンの記憶に残ります。
ホロライブ設立8周年 — 花火とドローンが融合した体験型イベント
WONDERFUL花火開催委員会は、ホロライブプロダクション設立8周年を記念した体験型イベント「Shiny Sparklers Symphony」を開催しました。日程は9月6日、会場は千葉県立幕張海浜公園でした。来場者は、0期生のときのそら、ロボ子、AZKi、さくらみこ、星街すいせいによるオーディオコメンタリーを聴きながら、花火とドローン演出を楽しめました。使用楽曲はホロライブのオリジナル曲のみで、演出は花火会社「日本橋丸玉屋」が担当しました。チケットはB席7,000円からS席(配信・グッズ付き)15,300円などで、一般発売は8月16日19時からと発表されていました(インサイド)。
研究所メモ: このイベントは、花火大会という既存の興行形式に、VTuberの楽曲とコメンタリーを組み合わせています。主催者はゼロから会場や演出を作らず、日本橋丸玉屋という専門会社の技術を使うことで、投資を演出の質に集中させています。異業種の専門技術を借りる発想は、他のIPホルダーにも応用できます。
MyDearest — シリーズC追加調達で北米α世代市場を狙う
VRゲーム開発のMyDearestは、シリーズC追加ラウンドで約1.7億円を調達したと発表しました。5月の調達と合わせたシリーズC全体の調達額は約17億円、累計調達額は約30億円に達していました。同社は調達資金を、北米のα世代(10代前半〜中盤)向けVRゲーム開発の強化に充てる方針としていました。同社が2024年に立ち上げた「bazooka studio」ブランドは、世界で累計100万人以上のアクティブユーザーを記録していました。その約7割は米国のユーザーでした(Mogura VR)。
研究所メモ: 推し活・VTuber経済は、単発のグッズ収益だけでなく、投資家が資金を入れる事業として育っています。MyDearestは、α世代という次の推し活世代を、あらかじめ北米市場で狙っています。国内のファンビジネスがいずれたどる道筋を、先に進んでいる形です。推し活の市場規模を踏まえると、推し活市場が投資対象として大きくなっていることが分かります。
食品・飲食業界が、AIと推しの力でファンを巻き込んだ
明治「きのこ・たけのこ」— AIが判定する参加型イベント
明治は8月11日から12日の2日間、東京・新宿の「サナギ新宿」前イベントスペースで体験イベントを開催しました。「きのこの山・たけのこの里」の“どっち派”を、AIで判定するイベントです。2025年に発売50周年を迎える「きのこの山」を記念した調査では、世界20カ国中14カ国が「きのこ派」と回答しました。一方、日本では47都道府県中46が「たけのこ派」という結果でした。イベントでは最新AI「MOTHER」が、社員の顔画像と嗜好データ約167万パターンのデータベースを使い、来場者の顔写真から判定しました。MOTHERは、大阪・関西万博の複数パビリオンに関わる技術チームと共同開発されたものです(AdverTimes.)。
明治は、自宅から参加できるWeb版「MOTHER」も同時に公開しました。スマートフォンで顔写真を撮影すれば、会場と同様の判定を受けられました。
研究所メモ: 明治は、長年続く“どっち派論争”の判定方法を、好みの申告からAI判定という第三者の基準に置き換えました。ファンが自分で選ぶ余地を残しながら、客観的な判定という新しい参加体験を加えたことで、数十年続く論争が再び盛り上がっています。ロングセラー商品ほど、こうした新しい遊び方を加える工夫が有効です。
JO1×ほっともっと — アイドル起用でZ世代の新規顧客を狙う
プレナスは、持ち帰り弁当「ほっともっと」の新テレビCM「夏のよくばり牛カレー」篇を8月6日から放映しました。出演はボーイズグループ「JO1」です。プレナスはこのCMで、Z世代の新規顧客の獲得を狙っていました。楽曲にはJO1 THE MOVIE『未完成』-Bon Voyage-の主題歌「Bon Voyage」を使いました。8月4日からは、メンバーが一人ずつ食リポする動画も公開しました。今年はJO1の5周年イヤーで、同社は国内外での高い知名度が起用の決め手になったとしていました。担当者は「想像以上の反響」と手応えを語りました(AdverTimes.)。
研究所メモ: プレナスが、起用の目的を既存ファンの深耕ではなく新規顧客の獲得だと明言している点は参考になります。同社は、ブランドが目指す「明るく元気で楽しい」イメージとグループの世界観を一致させています。そのうえで、実際の来店行動まで動かせたかを確認する姿勢です。Z世代の消費行動を踏まえると、CMをきっかけに来店したファンをどう定着させるかが次の課題になります。
丸美屋、ミスタードーナツ — キャラクター食品で日常の棚を彩る
丸美屋食品工業は、「ちいかわふりかけ〈たまご&ビーフ〉」(140円)と「ちいかわ鬼辛カレー〈ビーフ〉」(194円、税込)を発売していました。販売は8月31日までの期間限定でした。ふりかけとカレーにはそれぞれオリジナルの「キラキラシール」が1枚入り、種類はふりかけ10種、カレー10種の計20種類でした(インサイド)。サンエックスは、「リラックマ」とミスタードーナツとのコラボアイテムを9月に発売すると発表しました。商品は、リラックマたちがドーナツを食べる姿を描いたぬいぐるみや文具です(アニメ!アニメ!、monolab.tokyo)。
研究所メモ: どちらも、日常的に買う食品にキャラクターを組み合わせ、低コストでファンと頻繁に接する機会を作っています。単価は低くても、期間限定シールやグッズが付くことで、日常の買い物が集める楽しみに変わります。ロングセラーIPほど、こうした小さな接点を途切れさせないことが、ファンに繰り返し思い出してもらうことにつながります。
転売という副作用が、企業のブランドと現場を揺さぶった
マクドナルド — ポケモンカードキャンペーンで謝罪、購入制限を強化
マクドナルドは8月11日、「ハッピーセット『ポケモン』販売に関する大切なお知らせと当社の対応について」を公開しました。8月9日から始まったポケモンカードの配布をめぐり、転売目的の大量購入や、それに伴う店頭・店舗周辺での混雑、注文商品の放置・廃棄が発生しました。マクドナルドは子どもと家族に楽しい食体験を提供する理念や、レストランとしての姿勢に反する状況だったとして謝罪しました。そのうえで、より厳格な個数制限、ルールを守らない客の購入拒否、違反者のアプリ退会処分などの対応を表明しました(Game*Spark)。
研究所メモ: マクドナルドは、謝罪の対象を「転売した客」ではなく「その結果ご迷惑をおかけした周辺住民やクルー」にまで広げています。同社は購入時点の対策に加えて、違反者へのアプリ退会処理の方針も表明しました。数量限定施策のリスクを、ブランド全体の問題として扱った対応です。
ヤクルト、コメ — 「売れすぎ商品」に広報はどう向き合うか
ヤクルトは、乳酸菌飲料「Yakult 1000」「Y1000」を2019年10月から2024年3月までに累計35億本以上販売しました。一方で、需要に生産が追いつかず、品薄が続きました。同社はサイトにお詫びを掲載し、富士小山ヤクルト工場の新設などで供給体制を強化していました。生活必需品であるコメも転売の対象になり、フリマアプリにコメ袋が並びました。これを受け、国は6月13日の政令改正で、6月23日から米穀の転売を規制しました(AdverTimes.)。
研究所メモ: ヤクルトの対応は、品薄への謝罪と生産体制の強化という王道の組み合わせです。一方でコメの事例は、企業の広報努力だけでは解決できず、法規制にまで至った点で異質です。数量限定商品を企画する企業は、企画の段階から転売対策の運用コストと限界を見込んでおく必要があります。
アパレル・小売が、キャラクターを日常の棚に並べた
ユニクロ、アベイル — ポケモンで大人と子供をつなぐ
ユニクロは8月11日、「ポケモンカードゲーム」と「Pokémon Trading Card Game Pocket」とのコラボUTコレクションを発売しました。ピカチュウなどのカードイラストやシルエットをTシャツとスウェットにデザインし、メンズとキッズで展開していました。価格はUT(メンズ)が各1,500円、UT(キッズ)が各990円(税込)です。店舗では実際に対戦で使える「特製ポケモンカードゲーム紙製プレイマット」も配布されました(インサイド)。アベイルは8月9日、「ポケットモンスター」グッズを全国店舗とオンラインで発売しました。長袖Tシャツ、ハーフプルオーバー、スタジャン、トラックパンツを、コダック、ゲンガー、ミミッキュ、ブラッキーのデザインで展開していました(インサイド)。
研究所メモ: 2社の展開は990円のキッズTシャツからで、価格帯を抑えて購入のハードルを下げています。家族連れの来店回数を増やす狙いが読み取れます。同じ週のグラニフとは対照的に、子供とファミリー層を主な対象に据え、単価より購入頻度を優先する設計です。
グラニフ×ゴジラ — 平成・VSシリーズをアパレルに再構成
グラニフは8月12日、「ゴジラ」とのコラボアパレルを発売しました。商品は、「ゴジラ(1984年)」から「ゴジラVSデストロイア」までの平成・VSゴジラシリーズがモチーフです。モスラやキングギドラなど、ライバル怪獣もデザインに加わっています。ビッグシルエットTシャツ各4,500円、ドライリラックスセットアップ7,900円、オープンカラーシャツ6,900円など全13種類を展開していました(GAME Watch、CINRA、Digital PR Platform)。
研究所メモ: グラニフは、平成・VSシリーズという30年以上前の作品を、当時を知る大人向けの価格で商品にしています。同じ「アパレル化」でも、今週のポケモン展開はキッズ990円からの低単価、グラニフは大人向けの高単価で、価格設計が対照的です。
テーマパークとゲームが、周年でこれまでの歩みを見せた
東京ディズニーシー開園24周年 — マーメイドラグーンを描いたグッズ
東京ディズニーシーは、開園記念日である9月4日に開園24周年記念グッズを発売すると発表しました。グッズは人気エリア・マーメイドラグーンがテーマで、カチューシャ2,600円、ポストカードセット750円、ぬいぐるみバッジ2,600円など約20種類でした。デザインには、ミニーマウスやデイジーダック、ミッキーマウスが音楽を奏でる姿が描かれていました。販売店舗はパーク内の「東京ディズニーシー:エンポーリオ」です(アニメ!アニメ!、シネマカフェ)。
研究所メモ: 24周年の節目に、新キャラクターを加えるのではなく、既存のマーメイドラグーンという1エリアを掘り下げています。パーク全体を扱わず1エリアに絞ることで、そのエリアのファンにとっては「自分のための年」という特別感が強まります。
ニーア15周年展 — シリーズ初の展覧会で歩みを時系列に
『ニーア』シリーズ初の展覧会「NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録」が、東京・池袋サンシャインシティで開催されていました。スクウェア・エニックスが展開するシリーズの15周年を記念したもので、会期は8月9日から31日まででした。展示では、シリーズの歴史を時系列で追いました。対象は、2010年の『NieR Replicant/Gestalt』から、2017年に世界的な大ヒットとなった『NieR:Automata』、その後の『NieR Re[in]carnation』まででした。舞台劇「ヨルハ」やアニメ「NieR:Automata Ver1.1a」までを網羅していました(Game*Spark)。
研究所メモ: この展覧会は、15年分の作品を時系列に並べる構成を軸に、シリーズ初の展覧会という新しい体験を生んでいます。過去の資産が積み上がっている企業ほど、ゼロから作るより既存の作品を編集する方が、費用対効果の高い周年施策になることを示す好例です。
異業種ライセンスと交通が、推し活の導線を広げた
ドラクエ×ゴルフ用品 — 異業種ライセンスで新しい客層に
スクウェア・エニックスは、『ドラゴンクエスト』のゴルフ用品ブランド「DRAGON QUEST GOLF」を2026年2月6日に発売すると発表していました。e-STOREで予約を受け付けていました。「冒険へ旅立とう!」をテーマに、スライムの顔をデザインしたゴルフボールやモンスター型ヘッドカバーを展開するとしていました。キャディバッグ(スライム)は59,400円(税込)で、細部までこだわった仕様でした(インサイド)。
研究所メモ: ゲーム本来の売り場ではないゴルフ用品店に、IPを持ち出す発想です。59,400円という高単価は、日常的にゴルフをする世代とドラクエ世代が重なるという読みがあってこそ成立します。ファンの年齢層が実際にお金を使う場所から逆算すると、IPの提携先の候補は広がります。
ナイキ×遊戯王 — 城之内克也のシューズを現実に
ナイキは、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の城之内克也が作中で着用したフットウェアをもとに、特別エディション「エア マックス95」を発表しました。9月5日開催のイベント「House of Duel」で発売すると発表されました(アニメ!アニメ!、超!アニメディア)。
研究所メモ: ナイキは、作中の設定をもとに現実の商品を作りました。キャラクターをプリントする代わりに、キャラクターが履いていたモデルを実在の型番で再現しています。そのため、コラボ商品を買うというより、「作品世界の一部を持ち帰る」体験に近くなっています。
JR東日本 — ポケモンスタンプラリーで沿線をめぐらせる
JR東日本は、「ポケットモンスター」とタイアップした「JR東日本 ポケモンメガスタンプラリー2025」を開催していました。首都圏エリア36駅にキャプテンピカチュウなどのスタンプを設置し、6駅・12駅・36駅の3コースと新幹線コースを用意していました。通常のスタンプ帳による6駅コースの賞品は指定のNewDaysで引き換え、12駅・36駅・新幹線コースの賞品は東京駅特設ゴールカウンターで受け取れました。スペシャル版スタンプ帳の賞品も東京駅特設ゴールカウンターで引き換えました(PR TIMES)。
研究所メモ: JR東日本は、グッズを買う場所ではなく、駅を回る移動そのものを楽しみの対象にしています。6駅から36駅まで、コースは段階的に分かれています。そのため、軽い気持ちの参加者から沿線を制覇したい熱心なファンまで、関心の度合いが違うファンが同じ企画に参加できます。
今週の所感
今週は、転売という副作用が、推し活マーケティングの新しい論点として浮上した週でした。
マクドナルドはポケモンカードキャンペーンの転売問題で謝罪し、より厳格な購入制限と、対象者へのアプリ退会処理の方針を表明しました。同じ週にはヤクルトの品薄やコメの転売規制の話題も並び、売れすぎた商品への対応が広報の共通課題になっています。ファンを増やす施策は、同時に転売という別の需要も生み出します。企業はこの二律背反にどう向き合うかを、これまで以上に問われています。
一方で、わかさ生活と先斗寧の3年目コラボや、丸美屋の140円ふりかけのように、無理のない規模でファンとの接点を積み重ねる動きも目立ちました。MyDearestの累計30億円調達は、推し活・VTuber経済がスタートアップ投資の対象にもなっていることを示しています。
自社のファン施策が転売リスクにどう備えているかを考える際は、推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングの実践とあわせて今週の動きを確認してください。
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