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大阪500カ所が​冒険体験の​舞台に​/G-SHOCKが​メタバースで​耐久テストを​疑似体験​【週刊推し活ニュース 2025年9月5日号】

2025年8月29日〜9月4日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。

今週のハイライト

今週は、企業がファンの生活導線の中に入っていった週でした。

大阪では、8shipsが主催し、8shipsとサントリーグループのGood Measureが企画・運営する都市型フェス「RIZE3x Expo」が始まりました。府内500カ所を舞台に、サンリオや東映アニメーションなど16の企業・自治体が参画していました。カシオ計算機は「G-SHOCK」でメタバース「The Sandbox」に参入し、9月24日には耐久テストを疑似体験できる専用エリアを公開しました。

森永製菓は、ファンが自主的に作った手づくりお守りをきっかけに、「inゼリー」の限定パッケージを商品化しました。有隣堂は、売ることを目的にしない公式YouTube「有隣堂しか知らない世界」で、5分でスケッチブック5000冊を完売させました。資生堂は椎名林檎さんとのコラボを、1本のミュージックビデオ出演から大型キャンペーンにまで広げました。

都市とメタバースが、ブランド体験の会場になった

8ships×サントリー「Good Measure」×サンリオ・東映アニメーション — 大阪の街をクエストの舞台に

都市型フェス「RIZE3x Expo」が8月30日、大阪で始まりました。主催は8shipsで、企画・運営は8shipsとサントリーグループのGood Measureです。舞台は大阪府内500カ所に及ぶ文化財や商店街で、街全体が参加型のクエストになりました。サンリオや東映アニメーションを含む16の企業・自治体と大学・専門学校など14の教育機関が参画し、期間は9月21日まででした。参加者は専用アプリでミッションをクリアしてバッジを集め、限定グッズやVIPイベントの参加資格と交換できました(Time Out Tokyo)。

サンリオはキャラクターの世界をVRゴーグルで体験する「Sanrio Virtual Festival」を、メイン会場のビル内特設ルームで9月13日・14日の2日間限定で実施すると発表しました。

研究所メモ: 500カ所という規模を自社だけで作らず、既存の文化財や商店街を舞台に借りている点が要点です。バッジ取得というゲーム的な仕掛けによって、街歩きそのものが参加体験になっています。地域の観光資源を持つ自治体や商業施設にとって、IPを呼び込む前に「巡らせる仕組み」を作る発想が参考になります。

カシオ計算機×The Sandbox — 「G-SHOCK」の耐久性をメタバースで疑似体験させる

カシオ計算機は9月3日から、「G-SHOCK」の限定アバターコレクション「G-SHOCK Droid」を販売しました。販売の場は、Web3ゲーミングのメタバースプラットフォーム「The Sandbox」です。9月24日には、ブランドの歴史や耐久テストを疑似体験できる専用エリア「G-SHOCK CITY」を公開しました。落下や衝撃、水没といった実際の試験を高難易度で再現し、プレイヤー自身が“壊れない構造”を体感できるゲームにしていました。アバターと組み合わせるNFTの追加装備も展開しました(AdverTimes.)。

グッチやラコステ、渋谷109など、有名ブランドのメタバース参入が相次ぐ中での発表でした。

研究所メモ: 耐久性という機能価値を、遊びながら体感できる形にした点が新しいところです。スペック表を読ませる代わりに、失敗できるゲームの中で製品の強さを知ってもらう。機能訴求が伝わりにくい業種ほど、メタバースを「体験型の説明書」として使う余地があります。

ファンの投稿とバンド活動が、公式のブランド企画に育った

アサヒ飲料×IKUSHAMO — コラボバンドの「努力のリアリティ」がファンの支持を集めた

アサヒ飲料は8月21日から、総集編動画「みんなの!澄みきる瞬間 The MOVIE」を公開していました。2025年の「三ツ矢サイダー」の取り組みをまとめた動画です。中心は、3月に結成された生田絵梨花さんとSHISHAMOのコラボバンド「IKUSHAMO」です。動画では、CM撮影からバンド練習、ライブイベントまでを振り返りました。生田さんはCM撮影に向けてギターを新調し、約1カ月練習を重ねました。コラボMVの再生回数は130万回を超えていました(AdverTimes.)。

3月28日の「三ツ矢の日」には特別コラボMVも公開され、音楽配信サービスでもリリースされました。

研究所メモ: バンド結成から練習の過程まで見せたことで、CM単体では出せない説得力が生まれました。完成した姿だけでなく、そこに至る努力を追わせる。タレント起用の効果を一過性のCMで終わらせず、練習期間そのものをコンテンツ化する発想は、他の飲料・食品ブランドにも応用できます。

森永製菓「inゼリー」— ファンの手づくりお守り投稿が公式パッケージを生んだ

森永製菓は2024年12月、「inゼリー」ブランドから期間限定で特別パッケージ「inゼリーエネルギー〈Win〉」を発売しました。きっかけは2023年頃から生活者が自然発生的に投稿していた、フェルト製の手づくりお守り「Winゼリー」でした。同社は反響を受けて、2023年12月に公式SNSで作り方を紹介し、2024年7月には店頭で「Win」ミニチュアキーホルダーを配布しました。生活者発の表現が、公式の限定商品にまで発展しました(AdverTimes.)。

同社マーケティング本部の担当者は、訴求してきたブランドイメージがお客様によって具現化されていると感じ、嬉しくなったと振り返りました。

研究所メモ: 企業が仕掛けたキャンペーンではなく、生活者の自主的な創作を起点にしている点が重要です。SNSでの話題を”回収”して終わらせず、公式の作り方紹介・キーホルダー配布・限定パッケージと段階を踏んで公式化しています。ファンマーケティングの基本にあるように、企業側が主導権を急がないほうが、結果的にブランドの親しみやすさを保てます。

周年の企画が、ファンを巻き込む仕掛けに変わった

うなぎパイファクトリー20周年 — 公募パフェと年齢連動キャンペーン

うなぎパイ本舗が運営する「うなぎパイファクトリー」が2025年で開業20周年を迎えました。来場者は2024年6月に1000万人を突破していました。同社は20周年企画として、2月〜3月にオリジナルパフェのアイデアを公募しました。204件の応募から2品を受賞作に選び、9月4日から施設内のカフェで販売していました。あわせて10月6日まで、年齢にひもづく3つのキャンペーンも実施すると発表しました。例えば施設と同い年の来場者は、新作パフェが半額になりました(AdverTimes.)。

受賞作は「ファクトリー賞」「うなくん賞」の2作で、いずれも一般公募のアイデアが商品化されました。

研究所メモ: パフェのアイデアだけでなく、来場者の年齢そのものを割引条件に組み込んだ点が独自です。施設と同い年、合計年齢が20の倍数など、参加条件を工夫すれば来場者自身が企画の一部になります。周年施策を単発のキャンペーンで終わらせず、来場動機に変える設計です。

カシオ計算機×エヴァンゲリオン — 30周年記念モデルに山下いくと氏の新規描き下ろし

カシオ計算機は10月17日、「G-SHOCK」の新製品「GA-110EVA30」を発売しました。「エヴァンゲリオン」テレビシリーズ放送30周年を記念したコラボモデルです。デザインには、シリーズのメカニックデザインを手がける山下いくと氏の新規描き下ろしを採用しました。初号機の角やロンギヌスの槍、使徒のモチーフなどを、腕時計全体で表現しています。ベースは2010年発売の初回コラボモデルと同じ「GA-110」で、G-SHOCKとして初めて4色プリントを採用しました。価格は37,400円(税込)でした(Impress Watch、KAI-YOU)。

同社は同時期に「The Sandbox」でもG-SHOCKの世界観を展開していました。リアルとメタバースの両方で、IP施策を同時に進めていました。

研究所メモ: 15年前の初回コラボモデルと同じベース機を使い、デザインだけを一新した点が周年企画の勘所です。ベース機を変えずに描き下ろしを更新すれば、当時のファンは「進化」として、新しいファンは「原点」として受け取ります。長寿IPとの周年コラボは、ベースの継続と表現の更新を分けて考えると設計しやすくなります。

アーティストとの協業が、ブランドの世界観を広げた

資生堂×椎名林檎 — 「ちりぬるを」から始まったコラボが大型施策に育った

資生堂は7月9日から、美容液「アルティミューン」と椎名林檎さんのコラボレーションキャンペーン「ストレス解放区」を展開しました。きっかけは、2024年5月リリースの楽曲「ちりぬるを」のミュージックビデオです。椎名さん側が、このMVでの「SHISEIDO テクノサテン ジェル リップスティック」の使用を提案しました。その後、ライブツアーのサポートを経て、今回のコラボに発展しました。7月10日〜18日には六本木ヒルズでイベントを開催し、7月〜8月には全国5店舗で限定キットを販売しました(AdverTimes.)。

椎名さんが日頃からSHISEIDOブランドを愛用していたことが、企画の起点になっていました。

研究所メモ: 1本のMV出演がきっかけで、翌年には楽曲制作からポップアップまで広がる大型施策になりました。最初から大きな契約を組まずに、小さな接点を重ねてから規模を判断する順序が読み取れます。アーティストとの協業は、初回の反応を見てから次を設計する余地を残しておくと無理がありません。

有隣堂「有隣堂しか知らない世界」— 売らない動画が5分でスケッチブック5000冊を完売させた

書店チェーン有隣堂の公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は、商品を売ることを目的にしていませんでした。それでも、視聴者と企画したスケッチブックが生配信で5分で5000冊完売するなど、チャンネルは高い販促力を持っていました。同社によると、話題化して売れる商品には「背景にストーリーがある」「そのストーリーに共感される」「話す人への信頼感がある」という3つの共通点があるといっていました(宣伝会議)。

出演するバイヤーやMCのキャラクターは、忖度なく本当のことしか言わない姿勢を貫いていたとのことです。

研究所メモ: 「売るための動画」ではなく「面白い動画」として作り続けた結果、販促力が後からついてきた事例です。企業アカウントが陥りがちな押し売り感を避け、視聴者の知的好奇心を満たすことを優先しています。ファンとの信頼を先に積み、購買はその副産物として設計する順番が参考になります。

飲食チェーンとスパが、ファンの日常導線に入り込んだ

日本ケンタッキー×『ウマ娘』— 「KFCさんぽ」を常設コンテンツに格上げ

日本ケンタッキー・フライドチキンは、ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』とのコラボレーション第2弾を発表しました。昨年8月に好評だった「KFCさんぽ」が復活すると発表しました。「ウマさんぽ」の中の、いつでも遊べるコンテンツとして、9月9日から常設すると発表しました。あわせて9月9日〜29日、KFCネットオーダー限定で「今日、ウマ娘とおさんぽしない?パック」(1,000円、税込)を販売すると発表しました。購入者にはジオラマアクリルスタンドなどが当たる抽選キャンペーンも実施すると発表しました(ファミ通)。

前回は101名のウマ娘が登場し、ファンの間で話題になっていました。

研究所メモ: 期間限定だった昨年の企画を「いつでも遊べる」常設コンテンツに格上げした判断が要点です。話題化した施策を一度きりで終わらせず、2025年9月9日からゲーム内の恒常コンテンツとして残すと発表しています。ファンは好きなタイミングで戻ってこられます。単発イベントの中から、残す価値のある要素を見極める視点が求められます。

ウェンディーズ・ファーストキッチン×ホロライブ、極楽湯×鬼滅の刃 — 飲食・入浴施設がキャラクターと組んだ

ウェンディーズ・ファーストキッチンは9月21日まで、コラボ企画「BAKATARE DINER」を開催しました。相手は、ホロライブ所属タレント3名によるユニット「バカタレ共」です。競馬場店を除く全店舗でコラボポテトセットを販売しました。対象6店舗ではノベルティ付きのコラボメニューを販売し、制服姿の描き下ろしビジュアルを使ったグッズはDMM通販でも予約を受け付けました(インサイド)。極楽湯はGK Marketingと共同で、「鬼滅の刃」とのコラボ第4弾を9月9日まで開催しました。ufotable描き下ろしの限定グッズや5種類のコラボ風呂、夜限定の“鬼”メニューを展開しました(インサイド)。

研究所メモ: どちらも、店舗そのものをキャラクターの世界観に合わせる方向で設計しています。グッズを売るだけでなく、制服や風呂といった「その場でしか体験できない要素」を用意しています。それによって、来店の理由が単なる購買から体験に変わります。飲食・入浴といった生活密着型の業態ほど、この置き換えは効果的です。

アパレルと鉄道が、キャラクターを商品棚に置いた

GU、阪急電車 — 『星のカービィ』を日常の動線に置く二社

GUは『星のカービィ』とのコラボレーションコレクションを9月12日に発売しました。「カービィカフェ」のブリティッシュなデザインを取り入れ、ニットベストやスウェットなどレディース・メンズ・キッズ全8アイテムをそろえました。価格帯は1,990円〜3,990円(税込)です(インサイド)。一方、『星のカービィ』公式ポータルサイトでは、9月登場グッズとして「阪急電車」コラボを発表しました。駅員の恰好をしたカービィとワドルディのぬいぐるみや、ガシャポン「しゅしゅぽぽごっこ」、タオルハンカチなどがラインナップされていました(インサイド)。

研究所メモ: 同じIPが、衣料品の棚と鉄道グッズの棚に並ぶ動きが続きました。着るもの・持ち歩くものという生活必需のカテゴリーにキャラクターを入れると、ファン以外の来店客の目にも触れやすくなります。IPコラボの成果は購入者数だけでなく、通常の買い物客への露出量でも測る価値があります。

アニメIPと先端技術が、新しい参加体験を生んだ

東映アニメーション×プリキュア — 仮想電話アプリで日常に寄り添う

東映アニメーションは、スマートフォンアプリ『もしもし!プリキュアでんわ』の正式サービスを開始しました。メディアアクティブとの共同プロジェクトで、プリキュアとの仮想電話を楽しめるアプリです。基本的な電話コンテンツは無料です。月額330円の「もしもし!コース」では、お気に入りのプリキュア1人との全電話コンテンツと、毎月更新の「モーニングコール」を楽しめました。月額660円のコースでは、喫茶店を舞台にしたミニゲームも遊べました(ゲームハック、東映アニメーション、gamebiz)。

研究所メモ: 視聴という受け身の関係を、電話という毎日の行動に変換した点が新しいところです。無料と有料の境界を「電話の内容」で分けています。まず無料で体験してもらい、深いファンだけが課金する導線です。キャラクターとの接点を番組視聴の外に持たせたい企業にとって、日常動作への変換は有効な手段です。

サンリオ「Sanrio Creator Performance Awards」— VRChatクリエイターに助成金30万円

サンリオは、VRChatで活動するアーティスト・クリエイターを対象にしたアワード「Sanrio Creator Performance Awards」を発表しました。対象は、バーチャルサンリオピューロランドを舞台にしたパーティクルライブ作品です。サンリオは選ばれた最大3作品に助成金30万円を贈り、次回の「Sanrio Virtual Festival」で作品を披露する機会も用意すると発表しました。応募期間は9月1日から30日まででした(Mogura VR)。

研究所メモ: 自社でコンテンツを作り切らず、ファンクリエイターに制作費を渡して舞台を用意する方式です。助成金という形でクリエイターの活動を支えれば、企業側は多様な表現を集めながら制作コストを分散できます。ユーザー生成コンテンツを本気で育てたい企業にとって、賞金ではなく「上演機会」を対価にする発想は参考になります。

Amplium×LiVS — Apple Vision Pro向け映像でライブ現場を再現

Apple Vision Pro向けプラットフォーム「Amplium」を展開するAmplium, Inc.は、Apple Immersive Video対応カメラで撮影したアイドルグループLiVSのミュージックビデオを国内で初公開しました。片目あたり約5,875万画素(8,160×7,200ピクセル)のセンサーを持つカメラで、8K級の立体映像と空間オーディオを収録。メンバーにはカメラをファンに見立ててパフォーマンスするよう依頼し、振り付けも距離感を重視して調整したといいます(Mogura VR)。

研究所メモ: 高精細さそのものより、「カメラ=ファン」という演出設計が肝心です。技術のスペックを追うだけでは体験は変わらず、パフォーマンス側を撮影に合わせて作り直して初めて没入感が生まれます。映像を高度化する投資は、演者の振る舞いまで含めて設計しないと効果が出にくいという教訓です。

シャープ×QT DIG∞ — プラズマクラスターのeスポーツ効果を検証しスポンサー契約

シャープは9月3日、独自技術「プラズマクラスターイオン」の効果に関する共同研究の成果を発表しました。実証実験は西日本工業大学の協力のもとで行われ、プロeスポーツチーム「QT DIG∞」の選手延べ10名が『VALORANT』で参加しました。同社は「判断力と立ち回り面で向上効果が確認できた」としていました。同日、QT DIG∞とのスポンサー契約も締結しました(Game*Spark)。

研究所メモ: eスポーツの環境投資は、高リフレッシュレートモニターなどの物理的な機材に集中しがちでした。シャープは、そこに空気清浄という異分野から参入しています。既存の自社技術を新しい競技コミュニティで再検証し、そのままスポンサー契約につなげました。自社の強みをファンコミュニティの文脈に置き換える動きとして、業種を問わず応用できます。

今週の所感

今週は、企業が自ら作った世界にファンを迎え入れるのではなく、ファンの生活導線の中に企業が入っていった週でした。

森永製菓の「inゼリー」では、ファンが自主的に作ったお守りから商品化まで進みました。有隣堂は売らない動画で5分完売を記録しました。資生堂は、1本のMV出演から始まったコラボを大型キャンペーンへと広げています。いずれも企業側は最初から大きな企画を用意せず、まずファンとの間に小さな接点を作ってから規模を広げました。大阪の500カ所もG-SHOCKのメタバースも、KFCの常設コンテンツも同じ順番で進んでいます。

一方で、サンリオのクリエイター向けアワードやAmpliumの没入映像では、企業が前に出ず、ファンやクリエイターの表現を見せる側に回りました。推し活マーケティングの設計原則にあるように、ファンを動かそうとする前に、ファンがすでに動いている場所や作っている表現を見つけられるか。この週の各社の分かれ目は、そこにあったと思います。


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