ECCが語る大谷翔平起用の効果/Even G2の最量販店は日本に【週刊推し活ニュース 2026年1月16日号】

2026年1月9日〜1月15日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードはファンの内輪ネタに、企業がどこまで踏み込めるかでした。
マクドナルドは、東方Projectの二次創作楽曲「Bad Apple!! feat. nomico」の影絵PVをオマージュした動画を公開しました。動画は約19時間で、表示回数1433.9万件、コメント2000件以上を集めていました。ECCは大谷翔平選手を起用したCMで、メガネ姿の「大谷先生」という新しい姿を見せていました。
小売と外食の企業も一斉に動きました。ファミリーマートは約16,400店舗で『呪術廻戦』コラボ第3弾を始めました。ローソンは『家庭教師ヒットマンREBORN!』、ココスは『ウマ娘』、牛角はホロライブの星街すいせいさんとのコラボを打ち出していました。「推しに会える店」が、もはや特別な存在ではなくなりつつありました週でした。
コンビニ・外食・量販店が、同じ週にキャラクター施策を並べた
ファミリーマート×呪術廻戦 — 約16,400店舗を舞台にする
ファミリーマートが1月13日から『呪術廻戦』コラボ第3弾を、全国約16,400店舗で開始しました。お菓子2種に加え、ジャンボフランクや鶏つくね串など4種を対象にした限定デザインの串もの袋を数量限定で用意しました。配布物は1週間ずらし、「切り取れるクリアシート」全5種は1月13日から、「オリジナルA4クリアファイル」全5種は1月20日から配布しました。ファミペイを提示して対象商品を購入すると、商品に応じて1個または2個のスタンプが貯まる仕組みも導入しました(GAME Watch)。
コラボは、TVアニメ第3期「死滅回游 前編」が1月8日に放送を始めたタイミングに合わせました。
研究所メモ: 配布物を1週間ずらすのは、来店回数を増やすための古典的な手法です。ファミリーマートが、串ものという「ついで買い」の商品にも限定パッケージを用意した点に注目しました。目当ての商品を買いに来た人がレジ横でもう1品手に取るよう、売り場の流れまで設計しています。
ローソン×REBORN!、モスバーガー×サンリオ、カントリーマアム×サンリオ
ローソンが1月13日から『家庭教師ヒットマンREBORN!』のグッズを展開しました。価格はアクリルスタンド全6種が各1,760円、缶バッジがランダム14種で550円(税込)でした。Loppi・HMV限定の予約商品は、5月28日から順次受け取れると案内されていました(アニメ!アニメ!)。モスバーガーはマイメロディ50周年・クロミ20周年の記念企画第3弾として、マスコット付きセット2種を各1,200円(税込)で2月5日から数量限定で販売すると発表しました。ネット特別予約注文は1月14日15時から受け付けました(インサイド)。不二家も、カントリーマアムとサンリオキャラクターズのコラボ全5商品を1月21日に発売すると発表しました(インサイド)。
研究所メモ: モスバーガーが1人1種類につき2セットまでと購入制限をかけている点に注目しました。購入制限は転売対策であると同時に、商品を行き渡らせる意思の表明でもあります。ランダムグッズに批判が集まりやすい今、確定商品に制限をかけて公平に配るやり方は、ブランドへの信頼を守る選択だと思います。
ココス×ウマ娘、牛角×星街すいせい — 4弾構成とアプリ連動
ココスと『ウマ娘 プリティーダービー』のコラボは、1月20日から3月16日まででした。メニューは4弾構成で、2週間ごとに切り替わりました。第1弾は「ココス流 にんじんハンバーグ」1,529円、第2弾は「やる気UPスイーツ」1,309円(税込)です。対象メニュー1品につきクリアカード全20種をランダム配布し、デザインは弾ごとに変わりました(インサイド)。牛角は1月21日から2月23日まで、ホロライブ・星街すいせいさんのLIVE「SuperNova: REBOOT」とのコラボを実施すると発表しました。メニューには「星街すいせいセレクト盛り」1,958円(税込)を用意しました。公式アプリのポイントでは、待ち受け画像20ポイント、ボイスドラマ40ポイント、オリジナルムービー80ポイントと段階的に特典を交換できました(インサイド)。
研究所メモ: 牛角のポイント設計が秀逸です。ポイントは会計の2%が貯まる仕組みなので、80ポイントのムービーと交換するには税込4,000円分の会計が必要です。牛角は特典を、客が店に通う理由として設計しています。ココスの4弾構成も同じ発想で、どちらも特典で来店回数を増やす工夫です。
しまむら×サンリオ — 5L〜6Lまで用意する
しまむらが1月14日15時から、公式オンラインストア限定でサンリオキャラクターズの大人エプロン全15種類を発売しました。価格はM〜Lと3L〜4Lが各2,189円、5L〜6Lが各2,420円(税込)でした。脇ボタン付きで、すっぽりかぶれる仕様でした(インサイド)。
研究所メモ: しまむらが5L〜6Lまで用意した点を評価したいと思います。キャラクター商品はサイズ展開が狭くなりがちで、着たくても着られない人が出ます。ファンであることに、体型は関係ありません。サイズ展開を広げれば、そのまま商品を買えるファンの層も広がります。
ファンの文化に踏み込む広告と、手間のかけ方で伝える広告
マクドナルド×東方Project — 1433.9万表示を集めた影絵PV
日本マクドナルドが1月13日、東方Projectの二次創作楽曲「Bad Apple!! feat. nomico」の影絵PVをオマージュした動画「Black Pepper!! PV」をXで公開しました。動画は期間限定商品「スパイシーチキンマックナゲット 黒胡椒ガーリック」をモチーフに、PVを再構築したものです。投稿から約19時間で表示回数は約1433.9万件、コメントは2000件以上を記録しました。マクドナルドは投稿内で、作曲のZUNさん、編曲のMasayoshi Minoshimaさん、ボーカルのnomicoさん、映像の安田現象さんに謝意を表明していました(AdverTimes.)。
同社はドラゴンクエストとのコラボでも「イオナズン面接」動画を公開しており、ネット文化を想起させる施策を続けていました。
研究所メモ: マクドナルドが二次創作の楽曲を、原作者・編曲者・歌い手・映像作家まで明記して使っている点が重要です。二次創作の文化に企業が入るとき、敬意の示し方そのものがメッセージになります。「ついにニコニコ全盛期の伝説を召喚した」という反応からは、ユーザーがその扱い方を受け入れたことがうかがえます。
ECC×大谷翔平 — メガネ姿の「大谷先生」
ECCが1月5日から、大谷翔平選手を起用した新CM3本を順次放映していました。3本は「ECC外語学院/ともに進もう篇」「ECCジュニア/教えて大谷さん篇」「ECCシニア/ともに進もう篇」です。「教えて大谷さん篇」では、大谷選手が初めてメガネ姿を見せていました。CMは子どもの相談に答える「大谷先生」という設定で、英語そのものに加え「人前で話すことへの自信」といった付加価値まで描いています。同社は2024年2月のブランドアンバサダー契約発表後、自社調査でECCの純粋想起が大きく向上し、これまで接点のなかった層にも認知が広がったとしていました(AdverTimes.)。
研究所メモ: アンバサダー起用の成果を「認知が上がった」で止めず、校舎への来訪という行動指標まで語っている点は誠実です。ECCは、挑戦し続ける大谷選手の人物像を、学びを後押しするメッセージに結びつけています。起用の理由と効果検証の指標が、一貫してつながっている好例だと思います。
ロッテ×今日好き、明治ミルクチョコレート100周年、森永ラムネ
ロッテが1月5日から、ABEMA『今日、好きになりました。』とのWebCM「チーム溺愛彼氏のバレンタイン大作戦」を公開しました。番組で成立した3組のカップルから「溺愛彼氏」3人が登場し、ガーナチョコレートで手作りチョコを作ってサプライズで渡す内容です(AdverTimes.)。明治は「明治ミルクチョコレート」100周年に向け、12組のアーティストが「明治チョコレートのテーマ」を歌い継ぐ「Melody of meiji」を毎月13日に公開していました。1月13日はこっちのけんとさん、2月13日は約29年ぶりとなる森高千里さんが登場すると発表されました(AdverTimes.)。森永製菓は受験生応援施策の第4弾として、コマ撮りアニメを1月9日から公開しました。直径13ミリの大粒ラムネ332粒の両面(延べ664面)に、美術大学の学生5人が延べ330時間かけて手描きしたアニメです(AdverTimes.)。
研究所メモ: 森永ラムネの「表面に受験生の娘、裏面に陰で支える父母」という構成が見事です。昨年は約4万個を並べる大きなアート、今年は13ミリの極小へ。同じ「手間をかける」施策でも、規模の方向は真逆です。手間が伝わること自体がメッセージになる商材では、有効な方法だと思います。
もう一度行きたくなる仕掛けを、店舗とテーマパークに仕込む
ちいかわレストラン沖縄、USJ×呪術廻戦
「ちいかわレストラン」の2店舗目が、2026年2月13日に沖縄PARCO CITYでグランドオープンしました。メニューは、グランドメニュー全8種と、日焼けシーサーのタコライスやシュノーケルクリームソーダなど沖縄限定メニュー全6種の構成でした。事前予約優先制で、営業時間は10時から22時でした(アニメ!アニメ!)。USJは「ユニバーサル・クールジャパン 2026」で、『呪術廻戦』とのコラボを1月30日から8月18日まで実施すると発表しました。完全新作の期間限定アトラクションは「呪術廻戦・ザ・リアル4-D〜廻る時計台〜」です。ストーリー・ライドは第一弾・第二弾で異なる物語を用意しました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: コラボカフェの2号店を東京ではなく沖縄に置いた判断が興味深いところです。沖縄限定メニュー6種があるので、既存ファンにも沖縄まで行く理由ができます。USJが7か月弱の会期を第一弾・第二弾に分けたのも、同じ考え方です。どちらも「もう一度来る理由」を最初から用意しています。
リ・ユニクロ スタジオ×ディズニー — 1,000円で自分のものにする
ユニクロが1月9日から、リペア・リメイクのカスタマイズサービス「RE.UNIQLO STUDIO」でディズニーの刺繍サービスを開始しました。対応は全国18店舗で、料金は刺繍1点につき1,000円でした。ミッキーマウス、ミニーマウス、ドナルドダック、デイジーダックなど全8種類のデザインから選べました。過去に購入したユニクロ商品にも施せたのが特徴でした(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: すでに持っている服にキャラクターを足せる設計が新しいと思います。このサービスは、コラボ商品を新たに売るのではなく、手持ちの服を推し仕様に変えるものです。痛バッグのように「自分で作る」文化と相性がよいサービスです。しかも1,000円という価格で、客に服を捨てずに使い続けてもらえます。サステナビリティとファン心理の両方に応えています。
VTuber事業が、スマホゲーム・大型イベント・海外へ広がった
ホロライブ初の公式スマホゲーム『hololive Dreams』
カバーとQualiArtsは、共同開発するホロライブ初の公式リズムゲーム『hololive Dreams』を発表しました。総勢50名以上のタレントが登場していました。各タレントにソロ楽曲が2曲ずつ用意されていて、初期収録曲は150曲以上です。基本プレイ無料で、公式MVやライブ映像を背景にプレイできました。自分で譜面を作れる「クリエイト譜面」機能も搭載していました。両社は世界同時リリースを目指していました。2026年2月末に公式番組を配信すると発表しました。3月6日から8日には幕張メッセのイベントで特別展示を行うとしていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 初期収録150曲以上という規模は、ホロライブがこれまで積み上げてきた楽曲資産があってこそです。特に注目したいのは「クリエイト譜面」機能です。ファンが譜面を作れれば、運営がコンテンツを供給し続けなくても、プレイヤーは遊び続けられます。ファンの創作を運営コストの外側に置く設計は、長期運営を考える企業にとって参考になります。
にじさんじフェス2026 — ソニーの裸眼立体ディスプレイを導入
「にじさんじフェス2026」は、ANYCOLORが2026年5月16日・17日に幕張メッセで開催したイベントでした。来場者がライバーと1対1で話せる「視聴覚室」ブースには、「立体視3D」コーナーを新設しました。使用したのはソニー製の空間再現ディスプレイで、市販されておらず、世界に複数台しかない大型モデルでした。専用のVRヘッドセットなしで3D映像が見えました。視線検出を使うため、サングラスなど目の検出を妨げるものは使用できませんでした(Mogura VR)。
研究所メモ: ANYCOLORは、ファンイベントの1コーナーのために世界に複数台しかない機材を持ち込みます。この投資判断から、企業がいまファンビジネスにどれだけ力を入れているかが分かります。ヘッドセット不要という点も重要です。装着の手間や衛生面の懸念がなくなるだけで、来場者はずっと気軽に体験できます。
b.stage — 有料購読者100万人、取引額800億ウォンの「スーパーファン経済」
グローバルファンダムプラットフォーム「b.stage」を運営するbemyfriendsが、2025年12月に月間アクティブ有料購読者100万人、累計会員550万人をを突破したと発表しました。2025年の年間総取引額は800億ウォンを超え、利用者の約70%は海外ユーザーでしたです。同社には、これまでに350以上のファンプラットフォームを構築し、1,000人以上のアーティストとコラボレーションした実績がありました。成長を支えたのは、G-DRAGON、ソン・フンミン、Netflix『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』などのファンプラットフォーム開設です(PR TIMES)。
代表のソ・ウソク氏は「スーパーファンビジネスモデルがグローバル市場で実際に機能することを実証した」と述べました。2026年は、事業をK-POPを超えて他産業へ広げるとしていました。
研究所メモ: b.stageの強みは、メンバーシップ購読、双方向コミュニケーション、コマース、データ分析、広告までを1つの基盤にまとめている点です。ファンクラブ、EC、SNSがばらばらに存在すると、誰がどれだけ支えてくれているかが見えません。ファンビジネスを本気で伸ばすなら、接点を横断してデータが繋がる状態を先に作る必要があります。
キズナアイ×フォートナイト — 史上初のVTuberスキン
Epic Gamesの『フォートナイト フェスティバル』に、フォートナイト史上初のVTuberスキンとしてキズナアイさんが登場しました。コラボスキンと楽曲は、現地時間1月16日、日本時間1月17日から配信される予定と発表され、スキンはバトルロイヤル本編でも使用できます。日本時間1月14日に開催された先行入手大会では、1位から250位のプレイヤーにコスチュームとバックアクセサリー「キズナアイの翼」がプレゼントされました(Game*Spark、AppBank、電ファミニコゲーマー)。
研究所メモ: 世界最大級のゲームプラットフォームが、初のVTuberとしてキズナアイさんを選んだ意味は小さくありません。VTuberは日本国内のカルチャーから、グローバルなIPの一つとして扱われる段階に入りました。海外展開を考えるIPホルダーにとって、参照すべき事例になりそうです。
カメラのないデバイスの最量販店が、日本にある理由
Even Realities — ライブ会場でも使える設計と、生産能力3倍
Even RealitiesのCEOウィル・ワン氏が、CES 2026でMogura VRの取材に応じました。2025年11月発表のスマートグラス「Even G2」について、「現在、最も売れている店舗は日本にあります」と明言しました。日本での取扱店はJUN GINZAとJUN GINZAヒルトンプラザ名古屋店でした。価格は税込99,800円でした。ワン氏は「注文数が予想をはるかに上回るペースで伸びているため、ローンチ時と比較して現時点ですでに生産能力を3倍に増やした」と述べました。2026年1月末までに、バックログのほとんどを解消できる見込みだとしていました(Mogura VR)。
ワン氏は「Even G2はまだ全ての人向けというよりは、プロフェッショナルなビジネスパーソン向け」と位置づけ、すでに次モデルのG3に着手しているとも語りました。
研究所メモ: 10万円のスマートグラスがいちばん売れている店舗が、日本の眼鏡店だという事実に驚きました。前号で触れたとおり、Even G2はカメラを搭載していません。撮られる不安がない設計が、プライバシー意識の高い日本で受け入れられている可能性があります。ファンが集まる場所でデバイスを扱う企業にとって、この売れ方は重要な示唆を含んでいます。
今週の所感
今週いちばん考えさせられたのは、企業がファンの文化にどう入っていくかという作法の問題でした。
マクドナルドは東方Projectのオマージュ動画で、原作者から映像作家まで名前を挙げて謝意を示しました。ユニクロは新しいコラボ商品を売るのではなく、すでに持っている服に1,000円で刺繍を足すサービスを始めました。しまむらは、5L〜6Lまでのサイズをそろえています。どの企業の動きも、ファンの側にすでにある文化や事情に合わせたものです。
一方でファミリーマートの約16,400店舗、USJの7か月弱の会期、にじさんじフェスの世界に複数台しかないディスプレイを見ると、投資の規模は明らかに大きくなっています。今週は、踏み込む深さと敬意の払い方の2つが揃った施策が強かったという印象です。
自社がどのコミュニティに、どんな顔で入っていくのか。推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングとあわせて、今週の動きを見てみてください。
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