ぐんまちゃんは8名体制で育った/推し活市場4.1兆円へ【週刊推し活ニュース 2026年2月6日号】

2026年1月30日〜2月5日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードはキャラクターを「担当者の兼務」から「専門組織の事業」へ引き上げることでした。
群馬県は、ぐんまちゃんを担当する「ぐんまちゃん推進室」を8名体制で運営し、コンテンツ係とプロモーション係に分けていました。担当者は、2021年のアニメ化がブランド価値を決定的に高めたと語りました。ClaN Entertainmentは日本テレビ放送網を引受先に約11.5億円を調達し、VTuberを使ったSNSプロモーションの制作体制を強化すると発表しました。
市場規模の数字も更新されました。推し活総研の第3回調査によると、推し活人口は約1,940万人、市場規模は約4.1兆円でした。市場規模は前年の約3.5兆円から伸び、4人に1人が推し活をしている計算になりました。
キャラクターを「担当者の兼務」ではなく専門組織で育てる
群馬県ぐんまちゃん推進室 — 8名体制と、アニメ全78話
群馬県のぐんまちゃんは、1983年の「あかぎ国体」に登場した初代から約40年の歴史を持ちます。現在の2代目の原型「ゆうまちゃん」は1994年、当時県職員だった中嶋史子氏が一般公募でデザインしたものでした。2008年に2代目ぐんまちゃんを襲名し、2012年に「群馬県宣伝部長」に就任しました。2026年1月の時点では、知事戦略部エンターテインメント・コンテンツ課のぐんまちゃん推進室が8名体制で、コンテンツ係とプロモーション係に分かれて運営していました。アニメは2021年にシーズン1、2023年にシーズン2が放送され、全78話にのぼります(宣伝会議、AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議)。
推進室の安藤淑恵氏は「ぐんまちゃんが頑張って認知度や好感度を上げれば、群馬県も引っ張られて興味を持っていただけるようになると考え活動してきました」と述べました。デザインの意図も引き継がれています。中嶋氏は「勝ち負けに関係なく、いつでも子どもたちの横にいて『いつもそばにいるよ』と語りかけてくれるようなマスコット」として生み出したと述べていました。
研究所メモ: 自治体マスコットの多くが広報担当の兼務で運営されるなか、群馬県が8名の専門室を置いている点は決定的な差です。しかも県は、アニメ化の狙いを、インターネットで世界に配信でき、PRツールとして何度でも使える点に置いています。キャラクター運用を成果の出る事業にするなら、専任の人員を置くところから始める必要があります。
ClaN Entertainment — 日本テレビを引受先に約11.5億円
ClaN Entertainmentが2026年1月29日、約11.5億円の第三者割当増資を実施しました。引受先は日本テレビ放送網です。同社は2022年設立で、VTuberを活用したSNSプロモーションの企画・運営を主事業としています。今回の調達により、タイアッププロジェクトの拡大と制作体制の強化を図るとともに、グッズ販売事業への投資と自社IPのグローバル展開を進めるとしていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 在京キー局がVTuberマーケティングの会社に出資する、という構図が象徴的です。テレビ局の制作力と、VTuberのコミュニティが組み合わさります。既存メディアとファンダム企業の資本提携は今後も続きそうです。自社にファンコミュニティがない企業にとって、ファンダム企業を買収するか提携するかは現実的な選択肢になります。
シブヤフォント — 累計756種、売上の10〜50%を事業所へ還元
一般社団法人シブヤフォントが、2025年12月に新たなフォント11種とパターン66種を公開し、累計756種になりました。フォントは、渋谷区内に在住・在勤する障害者が描いた文字や絵をもとに、桑沢デザイン研究所の学生がデータ化する仕組みです。シブヤフォントは、区内10カ所の支援事業所と連携していました。データ利用による売上は、10%から50%が事業所へ還元されます。2022年からは「ご当地フォント」として全国展開し、2026年1月現在で22地域に広がりました(AdverTimes.、PR TIMES)。
研究所メモ: シブヤフォントが2016年から続けて、756種まで積み上げた点に価値があります。単発の福祉連携ではなく、使うほど還元が増える仕組みを設計したので、継続できました。企業がこの種の取り組みを行うときは、寄付ではなく事業の一部に組み込めるかどうかで、続くかどうかが決まります。
推し活をする人が1,940万人に。市場は4.1兆円へ広がった
推し活総研 第3回調査 — 4人に1人が推し活をしている
推し活総研(CDG/Oshicoco)が第3回推し活実態アンケート調査の結果を公開しました。推し活実施率は24.0%で、2025年1月調査から7.3ポイント上昇していました。この実施率は推定で約1,940万人にあたっており、前回の1,384万人から556万人増えました。市場規模は約3.5兆円から約4.1兆円へ拡大していました。一方、年間出費額は全体平均で209,716円と、前年の255,035円から減少しました(PR TIMES)。
研究所メモ: 推し活人口が増え、1人あたりの支出は減っています。この組み合わせに、今の市場の状態が正確に表れています。市場の構成が、お金を深く使う少数から、広く薄く使う多数へ変わりました。高単価の限定品だけで設計していると、1,940万人に広がった層のほうを取りこぼします。価格帯の下限をどこに置くかが、これまで以上に重要になります。
AI推し活アプリ「Oshimy」 — 課金が本人へ還元される仕組み
Oshibloomが、AI推し活アプリ「Oshimy」で新機能「公認リクエスト」の提供を開始しました。公認リクエストは、ファンの声によって推しが「本人公認AI」になる仕組みでした。同社は、課金が本人に還元される新しい推し活モデルを実現するとしていました(PR TIMES)。
研究所メモ: AIキャラクターとファンの関係で最大の論点は、権利と収益の帰属です。本人の許諾なくAIが作られる事例が問題になるなか、公認と還元を仕組みに組み込んでいる点は評価できます。タレントやキャラクターを扱う企業は、AI利用の可否を契約段階で決めておく必要があります。
大学との連携と自治体の企画が、推し活のやり方で人を動かした
キユーピー×青山学院大学 — 3,000食完売、認知率28%が76%へ
キユーピーが青山学院大学と組み、プラントベースフードブランド「GREEN KEWPIE」の産学連携プロジェクトを約4カ月間にわたって実施しました。ターゲットは、学生がつくった造語「無意識タリアン」(健康や環境を強く意識しなくても、おいしそう・手軽と感じれば選ぶ層)です。2025年10月に青山キャンパスで10日間の喫食イベントを行い、約3,000食が完売しました。その結果、ブランド認知率は約28%から約76%へ48ポイント上昇しました。喫食者の92%が「今後購入したい」または「陳列されていれば考える」と回答しました(AdverTimes.)。
学生からは、「健康意識が高い青学生はサラダを好むはず」という仮説に反し、実際はパンや麺類の主食系メニューが早く完売したという報告もありました。
研究所メモ: 事前のペルソナと実際の購買行動がずれたという報告を、成果として出している点が誠実です。しかも48ポイントの認知上昇は、10日間のオフライン施策で得た数字です。デジタル偏重の反動として、実際に食べてもらう場をつくる価値が見直されています。
佐賀県×キングダム — 全長300m超の「読破堤」
佐賀県が、原泰久氏の出身地であることと『キングダム』連載20周年を記念し、プロジェクト「キングダム×(駆ける)佐賀県」を始動しました。県は九州佐賀国際空港の愛称を期間限定で「佐賀キングダム空港」とし、複製原画や有田焼コラボ作品を展示しました。有明海沿いの防波堤には全長300m超の「読破堤」を設置し、コミックス77巻までを一気読みできるようにしました。1月27日のオープニングセレモニーには本郷奏多さん、有田焼の井上祐希氏、山口祥義知事らが登壇しました(超!アニメディア)。
本郷さんは読破堤について「毎日行けばタダで全巻読めるんですよね? すごいことやってるなと思いました」と語りました。読破堤では作中の過激なシーンを佐賀県特産の有明海苔で隠しており、本郷さんはこれに「センスがある」とコメントしました。
研究所メモ: 防波堤を漫画で埋めるという発想は、非常に大胆です。無料で77巻分を読めてしまうのに、それでも人が集まる場所になっています。聖地巡礼の目的地は、作品の舞台でなくても作れます。佐賀県は、作者の出身地という縁だけでここまで企画を組み立てました。
大阪・関西万博メモリアルキャラバン — ミャクミャク約100体を全国へ
内閣官房国際博覧会推進本部事務局は、「大阪・関西万博 メモリアルキャラバン 未来につなぐ万博展」を2月19日から東京・丸ビルで開催しました。巡回先は福岡、札幌、仙台でした。入場は無料で、VR映像「EXPO2025 360°シアター」、「ミャクミャクハウス」、大屋根リング模型を展示しました。JR西日本の協力で約100体のペイント済みミャクミャクフィギュアを並べる「世界のミャクミャク展」も行いました(AdverTimes.、読売新聞)。
研究所メモ: 前号でミャクミャクが日本PR大賞を受賞した流れが、そのまま巡回展へつながっています。閉幕したイベントのキャラクターを、次の博覧会(GREEN×EXPO 2027)のプロモーションにもつなげています。周年や大型イベントを持つ企業にとって、終了後の資産をどう活用するかの参考になります。
テーマパークと飲食が、複数IPを展開した
USJ「ユニバーサル・クールジャパン 2026」 — 5作品が集結
USJで「ユニバーサル・クールジャパン 2026」が1月30日に開幕しました。今回は『名探偵コナン』『呪術廻戦』『葬送のフリーレン』『マスカレード』シリーズ『モンスターハンターワイルズ』の5作品が集結します。「名探偵コナン・ワールド」には、リアル脱出ゲーム、推理ライブ・レストラン、ストーリー・ライドの3つの新アトラクションを用意しました。『葬送のフリーレン』とのUSJ初コラボは2026年初夏頃に予定されていました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: USJは5作品を展開し、しかも会期を作品ごとに1月30日から6月30日、5月17日までとずらしています。1つの作品のファンを呼ぶだけでなく、来場者が期間中に何度も来る理由をつくる設計です。複数IPを扱える規模の企業は、単発ではなく「重ね方」で滞在価値を上げられます。
くら寿司×mofusand、サーティワン×サンリオ
くら寿司が「mofusand」との初コラボを2月6日から実施しました。コラボメニューは全5種で、にゃんこカップ寿司400円、ポテにゃげコンボ530円、くろにゃんチョコケーキ480円などです。「ビッくらポン!」のゲーム動画をコラボ仕様にし、当たり景品にラバーチャーム全6種を用意しました。会計2,500円ごとのプレゼント特典は第1弾・第2弾それぞれ先着30万名限定でした(アニメ!アニメ!)。サーティワンは2月15日から3月3日まで「サンリオキャラクターズ ひなだんかざり」を2,400円(税込)で数量限定販売すると発表しました。おひなさまが十二単のハローキティ、おだいりさまがシナモロールという構成です(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: くら寿司の「ビッくらポン!」は、もともと自社にある仕組みです。その仕組みにIPを組み合わせるだけで、コラボの体験ができあがります。サーティワンのひなだんかざりも、行事とキャラクターを組み合わせた商品です。新しい企画を作るより、既存の売り物にIPを組み合わせるほうが早く、失敗も少ないという実例です。
STRICT-G×ディッキーズ、はたらく細胞×サンキューマート
『機動戦士ガンダム』のアパレル「STRICT-G」が、1922年創業のディッキーズと初コラボしました。ワークパンツ「874」のディテールを踏襲した全2種は各15,400円、Tシャツは各6,380円、GIベルトは各3,850円(税込)です。地球連邦軍はブラック、ジオン軍はカーキで展開しました(アニメ!アニメ!)。一方、サンキューマートは『はたらく細胞』と初コラボしました。帽子キーホルダーやフレークステッカーは、各390円(税込429円)です。血小板の「通行止め旗」を再現した洗濯ネットも販売すると発表しました(超!アニメディア)。
研究所メモ: 同じ週に、15,400円のワークパンツと429円のキーホルダーが並びました。前者は「一生モノを買う層」、後者は「試しに1つ買う層」に向けた商品です。前段で触れた市場調査のとおり1人あたりの支出が減っているなら、後者の層に向けた商品をどれだけ用意できるかが重要になります。
今週の所感
今週いちばん考えさせられたのは、推し活市場が「深く」から「広く」へ移っているという事実でした。
推し活人口が1,940万人へ増える一方、1人あたりの年間支出は209,716円へ下がりました。この変化は市場が成熟する過程で必ず起きますが、企業側の設計は追いついているでしょうか。高額の限定品と429円のキーホルダーの両方を用意できているかが問われます。
もう一つ印象的だったのは、群馬県の8名体制でした。群馬県はキャラクター運用を担当者の熱意に任せず、専任の組織と予算を付けています。初代ぐんまちゃんの登場からは約40年です。ClaN Entertainmentが11.5億円を調達したのも、シブヤフォントが756種まで積み上げたのも、背景は同じです。続けられる仕組みを作った人が、成果を上げています。
推し活の市場規模や推し活マーケティングの設計原則とあわせて、自社の体制という視点で今週の動きを見てみてください。
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