ワークマンが「巨艦主義」へ転換/AIグラス年間700万本【週刊推し活ニュース 2026年2月20日号】

2026年2月13日〜2月19日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、看板をひとつに絞る勇気と、掛けるだけの端末が広がる速さでした。
ワークマンによれば、看板商品を問われると社内から約100の異なる答えが返る状態でした。同社は5つの重点製品に絞る「巨艦主義」への転換を発表しました。2028年3月期に全売上の5割をこの5製品で占める計画です。
デバイス側では、EssilorLuxotticaが2025年のAIグラス販売数700万本超を公表しました。売上高は為替一定ベースで前年比11.2%増の284億9,100万ユーロで、同社は初の年間二桁成長を記録しました。前号まで追ってきたEven G2では、Acalieが正規販売代理店となりました。2026年春から家電量販店・EC・法人市場で本格販売をすると発表しました。
5つの重点製品を育てる、ワークマンの決断
ワークマン — 5品目で売上の5割を目指す「巨艦主義」
ワークマンが2月9日、「マス化製品」を軸とした新成長戦略を発表しました。5つの重点製品で2028年3月期に全売上の5割を占める計画です。2026年1〜8月には、5製品合計で販売数2,475万点、販売金額520億円規模を見込んでいました。リカバリーウェア「メディヒール」は2,100万点規模へ増産し、販売金額は約350億円の見込みでした。専務取締役の土屋哲雄氏は、「ワークマンの看板商品は何か」と問われると約100の異なる回答が返ってくる状態だったと述べました。そのうえで「『巨艦主義』とも呼べる戦略への転換を決断した」と説明しました(AdverTimes.)。
同社は創業以来30年以上、作業用品を深掘りしてきました。2018年ごろにアウトドア分野へ、2020年ごろに「#ワークマン女子」へ、2025年2月ごろから「Workman Colors」へと業態を広げていました。
研究所メモ: 社内で看板商品の答えが100通りに割れる状態は、多くの企業に当てはまります。品揃えを増やすほど、ブランドの印象は定まりにくくなります。ファンが「あの会社といえばこれ」と言えるかどうかは、推される条件そのものです。品目を絞る目的は、覚えてもらう手がかりを1つに定めることにあります。
ジャパネット40周年 — 相葉雅紀を起用し、90秒の企業CMを打つ
ジャパネットホールディングスは2月12日、ジャパネットグループの創業40周年に合わせて相葉雅紀さんを新広告キャラクターに起用しました。同社は企業CM「毎日を、もっと特別に。」(90秒)とキャンペーンCM「春の下取り祭」(30秒)の2本を、同日から全国で放映しました。企業CMでは相葉さんがナレーションを担当していました。楽曲は、周年キャッチコピーとの親和性から竹内まりやさんの『毎日がスペシャル』を選びました。「春の下取り祭」では、相葉さんが吉瀬美智子さんと姉弟役で共演していました(AdverTimes.)。
研究所メモ: テレビ通販の会社が、商品を売らない90秒の企業CMを打ちました。周年は、普段の販売とは別のメッセージを出せる数少ない機会です。しかも同社は同日に30秒の販促CMも流し、ブランドと売上の両方を狙っています。周年施策を記念行事で終わらせないための、実務的な二段構えです。
SHISEIDO×BLACKPINK LISA — 2014年発売の美容液を再定義する
資生堂が2月9日、BLACKPINKのLISAさんを美容液「アルティミューン」シリーズの新グローバルアンバサダーに起用しました。あわせてキャンペーン「FAST. SLOW. FREE.」を開始しました。アルティミューンは2014年発売で、公式Xによれば世界で331のビューティーアワードを受賞していました(AdverTimes.)。
社長CEOの藤原憲太郎氏は「アジアにルーツを持ち、今や世界的に成功を収めているLISAは、私たちのブランドとアルティミューンという商品を体現する存在です」と述べました。
研究所メモ: 12年続く商品に、新しいアンバサダーで別の客層との接点を作る形です。長寿商品は認知があるぶん、印象が固まりがちで新規顧客に届きにくい。アンバサダーを替えれば、商品の意味を語り直せます。ロングセラーを抱える企業にとって、アンバサダー起用は認知獲得より「意味の更新」に効きます。
掛けるだけで使えるメガネ型端末が、想定より速く広がっている
EssilorLuxottica — AIグラス年間700万本、売上は為替一定ベースで初の二桁成長
EssilorLuxotticaが2025年度連結決算を公表しました。売上高は284億9,100万ユーロ(約5兆1,757億円)で、為替一定ベースでは前年比11.2%増です。年間売上成長率が二桁に達したのは、同社として初めてです。2025年のAIグラス販売数は700万本を超えました。同社は2025年6月にOakley Metaを発表し、9月に第2世代Ray-Ban Metaを発売しました。新製品では動画解像度が3Kまで上がり、第2世代Ray-Ban Metaは、通常使用で最大8時間稼働し、第1世代のほぼ2倍のバッテリー持続時間を備えていました。2025年9月には右レンズにフルカラーディスプレイを搭載したMeta Ray-Ban Displayを米国で発売しました(Mogura VR)。
研究所メモ: AIグラス事業の伸びも寄与し、EssilorLuxotticaの全社売上は為替一定ベースで初の年間二桁成長を記録しました。700万本という規模は、すでにニッチの域を超えています。ライブ会場やイベントを運営する企業では、来場者がカメラ付き眼鏡で来る前提の規則づくりが近い将来の実務課題になります。
Acalie×Even Realities — Even G2が2026年春から家電量販店へ
Acalieが2月5日、AIスマートグラス「Even G2」の国内展開を発表しました。同社はEven Realities社と正規販売代理店契約を締結しています。2026年春から家電量販店・EC・法人市場で本格販売をすると発表しました。Even G2は独自の空間フローティングディスプレイ技術「Even HAD 2.0」により、情報を3Dで表示できました。会話内容をリアルタイムに翻訳して表示する「字幕翻訳」のほか、音声アシスタント・ナビ・テレプロンプターの各機能も搭載していました。IP65の防塵・防水性能を備え、指装着型のスマートリング「Even R1」と連携してフレームに触れずに操作できました。日本での最初の販売店は銀座・名古屋のJUN GINZAです(Mogura VR)。
研究所メモ: 1月16日号では、CEOが「最も売れている店舗は日本」と語っていました。それから約1か月で、販路を眼鏡店から家電量販店へ広げる計画が発表されました。カメラを載せない設計が日本で受け入れられ、そのことが供給体制の整備につながっています。プライバシーへの配慮を機能で示すことが、そのまま市場拡大の条件になっています。
初音ミク V6 — 日本語・英語対応、中国語はアップデート予定で4月14日発売
クリプトン・フューチャー・メディアが、歌声合成ソフト「初音ミク V6」を2026年4月14日に発売しました。VOCALOID6に対応し、日本語・英語・中国語の3言語をサポートしました(中国語は正式リリース後の無償アップデート)。価格はスターターパックが24,200円、ボイスバンク単体が10,780円(税込)です。どちらの形態にもDAWソフト「Cubase LE」が付属しました。1フレーズから異なるニュアンスのボーカルを複数生成できる「TAKE機能」を搭載しました(Mogura VR)。
研究所メモ: 日本語・英語に対応し、中国語は今後の無償アップデートで対応予定です。多言語で創作できる環境は、キャラクターIPの海外展開を支える要素になります。ファンが自分の言語で創作できる環境を用意すれば、海外でも二次創作に加わる人が増えます。ツールを配ることが、コミュニティ拡大の手段になる好例です。
VTuberのイベントが、6年越しでリアル会場へ
あおぎり高校 — 13名総登壇の初の単独オフラインイベント
viviONが運営するVTuberグループ「あおぎり高校」が、初の単独オフラインイベント「あおぎり高校 入学祭2026!」を2026年5月21日にLINE CUBE SHIBUYAで開催すると発表しました。所属メンバー13名が総登壇し、先行抽選チケットは校章風ピンバッジ付きで13,000円(税込)でした。同日深夜には、後夜祭「本気(マジ)でギリギリNIGHT ~あおぎり高校 後夜祭2026!~」をSpotify O-EASTで開くと発表していました。後夜祭は5,000円(税込)で、angela、原口沙輔、DJ WILDPARTYらが出演しました。後夜祭にはあおぎり高校のメンバーは参加せず、20歳未満は入場できませんでした。初回イベントは2020年に計画されていましたが、感染症の影響でオンライン開催に変わりました。今回は6年を経て実現しました(PANORA)。
研究所メモ: 本編と後夜祭で出演者を完全に分けている構成が興味深いところです。運営は、推しに会う場と音楽で朝まで過ごす場を切り離しています。同じ日に2つの体験を用意すれば、遠征してきたファンの滞在価値は倍になります。会場を押さえる企業にとって、1日の時間帯をどう埋めるかは検討に値します。
猫の日を前に、コンビニと外食と施設が仕込みを始めた
セブン‐イレブン — 猫モチーフ全6品とアプリ限定キャンペーン
セブン‐イレブンが2月16日から、2月22日の「猫の日」に向けて猫モチーフの全6品を順次発売しました。商品には、3種のクリームで三毛猫模様を作った「三毛猫もちもちクレープ」、肉球をイメージした団子の「にゃんパフェ」、猫型どら焼き「にゃまどら ミルクキャラメル」などがありました。あわせて2月16日から22日の7日間限定で、アプリ会員限定の「サンリオキャラクターズ にゃんにゃんキャンペーン」を実施していました。キャンペーンでは、全5キャラクターのオリジナルグッズが当たりました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: セブン‐イレブンは6品の品揃え、7日間の期間、アプリ会員限定という3点を組み合わせました。この3点セットで、来店動機と会員登録の両方を同時に狙っています。記念日商戦は「その日だけ」に集中しがちですが、記念日までの1週間に販売期間を設ければ買い回りが生まれます。
松屋×ちいかわ、ローソン×銀魂、明治村×鬼滅の刃
松屋フーズが2月17日から3月31日まで『ちいかわ』コラボ第2弾を実施し、「松屋 ちいかわの鬼辛カレー」を投入しました。コラボメニュー1品でオリジナルフィギュア全6種からランダム1個が進呈され、おこさまメニューでスライドパズル全6種が進呈されました(超!アニメディア)。ローソンは『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』の公開に合わせ、2月17日から対象菓子2点購入でクリアファイル全8種を配布しました。ロッテ「トッポ」の銀魂仕様パッケージ2種を977円(税込)で展開しました(超!アニメディア)。愛知県犬山市の博物館明治村は、3月7日から5月31日まで『鬼滅の刃』とのコラボ「明治村特別任務録」を開催しました。コラボグルメは13種類で、謎解きゲームは難易度別の3コース構成でした(にじめん)。
研究所メモ: 明治村は60以上の建造物を移築保存している施設で、その広さを謎解きの動線に使っています。明治村は作品のために新しい建物を建てず、既にある建物を舞台として貸しています。歴史ある施設ほど、この形でIPと組める余地があります。
ホテルグレイスリー新宿×ゴジラ、PSYCHO-PASS×右田本店
ホテルグレイスリー新宿が、8階ロビーに『ゴジラ FINAL WARS』をテーマとした新ジオラマを設置しました。展示期間は2月1日から6月30日まででした。東宝監修のジオラマ演出は2023年から続いていて、今期で8期目でした。同ホテルは開業11年目でした。ラウンジではゴジラプリントアートラテ各1,870円、アート和パフェ2,420円(税込)などを提供していました(アニメ!アニメ!)。大阪市のグランマルシェは2月18日から、島根県益田市の右田本店が製造したブレンデッドウィスキー「Golden Whisky」を販売しました。『劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE』とのコラボ商品です(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: グレイスリー新宿は約12メートルのゴジラヘッドで知られ、ロビーでは8期目のジオラマを展示しています。3年続けて展示を入れ替えることで、一度来た人にも再び訪れる理由ができます。常設のシンボルと定期的に変わる展示の組み合わせは、集客施設の基本形として参考になります。
今週の所感
今週は、絞る動きと広げる動きが同時に目立ちました。
ワークマンは重点製品を5品目に絞ると宣言し、EssilorLuxotticaはAIグラスの販売を700万本まで伸ばしました。方向は逆に見えますが、両社には共通点があります。どちらも、自社が何で覚えられたいかをはっきり決めています。ワークマンは「リカバリーウェアの会社」、EssilorLuxotticaは「掛けるだけで使えるAIの会社」です。両社とも、その一点に資源を集めています。
一方で、看板商品が定まらないまま品数だけ増やすと、ファンは何を推せばいいのか分からなくなります。今週のワークマンの発表は、そのことを社内の「100通りの答え」という形で正直に示していました。
自社がファンから何と呼ばれているか。推し活マーケティングの設計原則とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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