横浜スタジアム隣に「試合のない290日」の施設/渡辺パイプ初CM【週刊推し活ニュース 2026年3月20日号】

2026年3月13日〜3月19日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、熱狂が起きていない日をどう埋めるかでした。
三井不動産ら8社が横浜スタジアム隣接地に「BASEGATE横浜関内」を3月19日に開業しました。DeNAの南場智子会長は、横浜スタジアムの公式戦開催日が年間70日ほどだと指摘しました。そのうえで「試合のない日が290日ある」と語りました。旧横浜市庁舎は星野リゾートのホテルになり、施設には常設型ライブビューイングアリーナも入りました。
広告では、水道・住宅設備の専門商社である渡辺パイプが、創業以来初のテレビCMをWBC放映枠に出稿しました。このCMはSNSで話題になりました。目的は新卒採用の強化です。
熱狂が起きていない日をどう埋めるか、という施設の設計
BASEGATE横浜関内 — 「試合のない290日」に向けた約13万平米
三井不動産を中心とする8社のコンソーシアムが、横浜・関内駅前の旧市庁舎跡地に複合施設「BASEGATE横浜関内」を3月19日に開業しました。開発規模は約13万平米です。旧横浜市庁舎行政棟は「OMO7横浜 by 星野リゾート」になりました(4月21日の開業を予定していました)。このほか、DeNAが運営する常設型ライブビューイングアリーナ「THE LIVE」、没入型体験施設「ワンダリア横浜」、新産業創造拠点、オフィス、商業施設が入りました。参画企業は鹿島建設・京浜急行電鉄・第一生命保険・竹中工務店・DeNA・東急・星野リゾート・三井不動産の8社です(AdverTimes.)。
DeNAの南場智子会長は「試合のない日が290日ある」とし、「ここが目的になるような新しい体験」を幅広い層に提供したいと話しました。星野リゾートの星野佳路代表は旧庁舎の活用について「新築で建てるのは簡単だが、歴史的に価値を生むプロジェクトだ」と語りました。
研究所メモ: 年70日の試合に依存する立地で、残る290日をどう使うかという問いの立て方が秀逸です。1月2日号では、有楽町マルイが8階をイベント専用フロアにした件を扱いました。ファンが集まる場所にも、人が集まらない時間は必ずあります。その時間の使い方まで設計できるかどうかで、施設の稼働率は大きく変わります。
ムーミンバレーパーク — 300席の全天候型劇場に3D音響を入れる
埼玉県飯能市のムーミンバレーパークは、パーク内の「エンマの劇場」を全天候型劇場にリニューアルしました。エンマの劇場は2026年3月14日にリニューアルオープンしました。劇場は高さ10メートル、最大幅30メートルの多角形テント構造です。4m×7mのLEDスクリーンと、地元飯能市の西川材を使った約300席分のベンチを備えます。SoVeCが提供する「XR Sound Experience」は、インタラクティブサウンドエンジン「VAUD」がリアルタイム生成する音をソニーの3Dオーディオプレイヤーで制御する仕組みです(Mogura VR)。
研究所メモ: 全天候型にしたことが最大の投資判断です。屋外施設は天候で来場者数が振れますが、屋根をかければ来場者数を見込みやすくなります。しかもベンチには地元の木材を使っています。演出への投資と地域との関係づくりを、同じ設備で兼ねているのが上手いところです。
採用のために打った初のCMが、思わぬ話題を呼び込んだ
渡辺パイプ — 創業以来初のテレビCMを、WBC放映枠に
水道・住宅設備・電設・土木資材の専門商社である渡辺パイプが、創業以来初のテレビCMを2月27日から全国放送しました。CMは「ススメ」篇「現場の最前線」篇で、オードリーがバグパイパーの衣装で同社の現場を行進する内容です。同社はTBS系のWBC放映枠に加え、Netflixにも出稿しました。3月2日から16日には、鳳駅(大阪府堺市)、若林駅(東京都世田谷区)、春日駅(東京都文京区)で屋外広告も展開しました。主な目的は2027年度新卒採用の強化です(AdverTimes.)。
SNSでは「WBCを見ていたら渡辺パイプのCMがよく流れる」「気になって検索した」といった投稿が広がりました。広報・社長室グループの野呂祐介グループリーダーは「ある程度の反響は予測していましたが、それ以上の反響をいただけた」と述べました。
研究所メモ: BtoBの専門商社が、国際大会の放映枠を使って認知を広げました。しかもコンビ名やメンバーの名字にちなんだ3駅を選んで屋外広告を出しています。自社の名前で遊べる余地を見つけ、それを実行に移した判断が効きました。BtoB企業の採用広報として、参考になる事例です。
ポカリスエット×安青錦 — 力士の稽古と「スエット」を重ねる
大塚製薬が3月6日、大相撲力士の安青錦さんが初出演するポカリスエットの新CM「たくさんスエットかきました」篇(15秒)を公開しました。「ポカリ、のまなきゃ。」シリーズの特別編で、稽古で流す汗と水分・電解質補給を結びつける構成です。安青錦さんは4月公開予定のシリーズ第25弾CMへの出演も決まっていました(PR TIMES)。
企画を担当した太田麻衣子氏は「英語のスエットは汗のこと。安青錦関は、毎日の稽古でたくさん汗をかきます」と説明していました。
研究所メモ: 大塚製薬は、商品名の一部である「スエット」を起用したタレントの日常と結びつけています。前段の渡辺パイプと同じく、企画のきっかけは自社の言葉の中にありました。すでに持っている資産を読み替えるほうが、新しい設定を作るより早く形にでき、覚えてもらいやすくなります。
『左ききのエレン』 — アニメ化を「最初の狼煙」と呼ぶ
3月15日、テレビアニメ『左ききのエレン』の先行上映記念舞台挨拶が開かれ、原作者のかっぴー氏が登壇しました。同作は累計約2億5000万PV、発行部数約410万部で、連載開始から10年目を迎えていました。3月27日からの1週間限定先行上映では、かっぴー氏描き下ろしの前日譚を収めた58ページの特典冊子を配布すると発表しました。テレビ放送は4月7日深夜からでした(AdverTimes.)。
かっぴー氏は「アニメ化を最後に『左ききのエレン』は終わりだという気持ちになっていた」と振り返りました。しかし完成作を見て「これで俺が辞めたらアニメの方が代表になってしまう」と考えが変わり、アニメ化を「最初の狼煙」と表現しました。
研究所メモ: 58ページの特典を先行上映に付ける判断について、かっぴー氏は「3話見てほしいって、どっちかっていうとこっち(製作側)の都合だなと思って」と語っています。送り手の都合をファンに負担させない、という姿勢が特典の厚みに表れている。 初動を作りたいときの誠実なやり方だと思います。
コンビニと温浴施設が、周年と新シリーズに合わせて動いた
ファミリーマート×ウマ娘 — 5周年を約16,400店舗で祝う
ファミリーマートは3月15日から、「ファミマで祝おう!ウマ娘5周年!」を全国約16,400店舗で実施しました。『ウマ娘 プリティーダービー』のリリース5周年を記念した企画でした。「はちみードリンク」「トレセン学園のはちみつパン」など、コラボ商品5種を展開しました。対象商品の購入でA4マジッククリアファイルを、3月24日からは缶バッジ全4種を配布しました。「ファミペイ」のスタンプ企画では特別仕様の「Chibiぬいおすわりマスコット」7体セットなどが当たっていました(Pouch)。
研究所メモ: ファミリーマートは配布物を3月15日と24日の2段階に分けました。さらに、ファミペイのスタンプ・ファミマプリント・一番くじと、参加の手段を重ねています。1月16日号で取り上げたファミマ×呪術廻戦と同じ設計です。同じ枠組みを、別のIPで繰り返しています。座組みを毎回組み直さないからこそ、施策の数を増やせます。
極楽湯×文豪ストレイドッグス — 10店舗で第3弾
極楽湯・RAKU SPAグループが、アニメ『文豪ストレイドッグス』とのコラボ「銭湯へようこそ〜猟犬休息編〜」を開催しました。期間は2026年4月2日から27日までで、会場は10店舗です。第3弾となった今回は、入館料に「猟犬休息編タオルセット」を加えると、マフラータオル全6種からランダムで1枚が付きました。コラボ風呂も5種類を用意しました。関連書籍はシリーズ累計1,700万部を突破していました(にじめん)。
研究所メモ: 極楽湯は、1月2日号で扱ったまどマギとのコラボでは19店舗、今回は10店舗と規模を変えています。作品ごとにファンの分布は違うので、全店一律で実施しない判断は合理的です。同じ仕組みを持ちながら規模だけを変えられることが、多店舗企業の強みになります。
リカちゃん×ザ ストリングス表参道 — 平日6,000円のアフタヌーンティー
タカラトミーの「リカちゃん」とザ ストリングス 表参道のカフェが、2026年4月21日から6月22日までコラボしました。コンセプトは“Sweet Picnic”で、アフタヌーンティーは平日6,000円・休日6,500円(税・サービス料込)でした。テラス6席限定の「スペシャルデコレーションシート」確約プランは平日10,000円・休日10,500円で、撮影用のリカちゃん人形を貸し出しました。本コラボ限定の「ストリングスリカちゃん」も登場し、5月26日からは一部メニューがピスタチオグリーンに変わりました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 撮影用の人形を貸し出すという一点が、このプランの価値になっています。人形は持ち帰れないので購入にはつながりませんが、写真は残ります。ファンが撮りたい状況を用意すれば、その写真がそのまま宣伝になります。1月9日号のピューロランド「推し色キャラルーム」と同じ考え方です。
アパレルと雑貨が、それぞれのやり方で本気度を見せた
ALPHA INDUSTRIES×逆襲のシャア、ちいかわ×Robert P.Miller
バンダイが企画するアパレル「STRICT-G」は、ALPHA INDUSTRIESと『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のコラボジャケットを予約販売しました。価格は46,200円(税込)です。ネイビー本体にアムロ・レイのパーソナルマークと地球連邦軍マークを配置し、1着購入ごとに描き下ろしアクリルスタンドが付きました(アニメ!アニメ!)。3月19日には、『ちいかわ』と「Robert P.Miller」「Talking Heads」のコラボTシャツなどが発売されました。商品はちいかわらんど14店舗などで扱っていました(インサイド)。
研究所メモ: STRICT-Gは、46,200円のフライトジャケットにアクリルスタンドを付けています。価格帯としてはノベルティが不要な水準ですが、それでも付けるのはファン心理を理解しているからです。高額商品ほど、ファンは「買った証」を残したくなります。単価の高いIP商品を扱う企業が見落としがちな点です。
フェリシモ×薬屋のひとりごと — 頒布会形式で雑貨を売る
通販サイト「FELISSIMO」が、TVアニメ『薬屋のひとりごと』との初コラボ雑貨を展開しました。処方箋袋が整理できる「せり上がりお薬箱ポーチ」が月1個3,740円、イメージフレーバーティーが月1セット2,750円、ジャカード織りハンカチが月1枚1,320円(すべて税込)という頒布会形式でした。フェリシモ「猫部」とも別途コラボしていました。同社は、チャリティーTシャツ3,030円のうち500円を「フェリシモの猫基金」に充てていました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: フェリシモの特徴は、商品を毎月届ける販売形式にあります。これにより、ファンとの接点が月1回、自動的に生まれます。1月9日号では、ローソン×学マスが受け取りを約9か月後にした話を紹介しました。買った時点で関係を終わらせない設計が、いろいろな形で試されています。
バーチャル領域では、話題づくりと買収が同時に動いた
にじさんじ関連の謎企画「Cellmates」、VESTAの新ライブイベント
3月、にじさんじ所属とみられるVTuber6名が登場する謎の企画「Cellmates」のXアカウントが開設されました。アカウントは3月13日から18日まで、毎日1名ずつメンバーを発表しました。メンバーは笹木咲・剣持刀也・椎名唯華・星導ショウ・月ノ美兎・葛葉の6名で、それぞれに“収監”設定が付いていました。記事時点で公式からの告知はなかったものの、フォロワーは9.8万人に達しました(Mogura VR)。バーチャルクリエイター支援チームのVESTAは、VTuberライブイベント「ばちゃすて!-Virtual Stage Vol.0-」を5月23日に渋谷で開催すると発表しました。音楽活動を中心とする9組が出演すると発表されました(PANORA)。
研究所メモ: 企画のXアカウントは6日かけて1名ずつメンバーを発表し、公式告知の前にフォロワー9.8万人を集めました。情報を小出しにして待たせる手法は古典的ですが、待つあいだにファン同士の会話が生まれます。発表の設計は、施策そのものと同じくらい成果を左右します。
Blippar×Plattar — AR企業がARコマース基盤を買収
AR・空間コンピューティング企業のBlipparが3月12日、Plattarを買収したと発表しました。Plattarはオーストラリアとニュージーランドを拠点とする、3Dプロダクト設定・ARコマースプラットフォームです。同社は小売・不動産・製造・EC分野で実績を持ち、Blipparは黒字事業だと説明していました。Plattarは買収後も完全子会社として運営され、既存顧客への提供に変更はありませんでした。Blipparはこの1年で、バンガロールに新開発拠点、ロンドンにグローバル本社を新設していました(Mogura VR)。
研究所メモ: 2月27日号ではEpic Games×Meshcapadeを、2月6日号ではClaN Entertainmentの資金調達を取り上げました。これらと並べると、XR領域は自社開発より買収・提携で機能を揃える段階に入っています。自社に技術がない企業にとって、この分野は組む相手を探すほうが早い局面です。
今週の所感
今週いちばん示唆的だったのは、DeNAの南場会長の「試合のない日が290日ある」という一言でした。
ファンビジネスでは、ライブ・試合・公開日・発売日といった熱狂の瞬間に注目が集まります。しかしその何倍もの時間が、何も起きていない日として過ぎていきます。BASEGATE横浜関内は、その290日を事業として設計した施設です。
同じ構図は、ほかのニュースにも見られました。フェリシモが月1回届く頒布会にしたのも、ファミマが配布を2段階に分けたのも、「Cellmates」が6日かけて発表したのも、イベントとイベントの間をどう持たせるかという工夫です。
自社のファンと、いま何日おきに接点を持てているか。推し活マーケティングの設計原則や推し活イベントの企画とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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