民放連が違法動画への広告費流出を約32億円と推計/日銀がVTuberを起用【週刊推し活ニュース 2026年3月27日号】

2026年3月20日〜3月26日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、コンテンツを作る側が対価の流れを守ろうと動いたことでした。
日本民間放送連盟が3月19日、違法アップロードに関する声明を公表しました。在京民放5局の25番組を対象にした第2回調査では、YouTubeに1万5,214本の違法アップロード動画がありました。累計再生回数は約111億回でした。TikTokには2万4,939本ありました。民放連は広告費の流出を約32億円と推計し、これを「氷山の一角」としていました。
同じ会見で早河洋会長は、WBCなど大型スポーツの放映権高騰にも危機感を示しました。今大会はNetflixが独占配信し、3月6日の日本対台湾戦の時間帯には、地上波全体の個人視聴率が5%減ったと説明しました。
コンテンツを作る側が、対価の流れを守りにいった
民放連 — 違法動画への広告費流出を約32億円と推計
日本民間放送連盟が3月19日、「違法アップロードコンテンツと広告に関する声明」を公表しました。第2回調査では、在京民放5局が制作する25番組を対象に、各300アカウントを調べました。YouTubeには違法アップロード動画が1万5,214本あり、累計再生回数は約111億回でした。TikTokで2万4,939本、Facebookで6,921本、Xで1,412本が確認されました。民放連は広告費の流出を約32億円と推計していました。人材サービス・食品・飲料・自動車・金融など多分野の大手広告主や、東証プライム上場企業の広告が違法コンテンツに表示される事例もありました(民放online)。
早河洋会長は、権利侵害コンテンツへの広告費流出を「単に民間放送の収入減の問題にとどまらず、日本のコンテンツ産業の持続可能性に影響を及ぼす問題だ」と述べました。民放連は32億円を「氷山の一角」と明記しました。
研究所メモ: 111億回という再生回数から分かるのは、ファンが正規のルートを探さなくても番組を見られてしまう現実です。しかも広告主は、意図せず違法コンテンツに出稿している状態になります。自社の広告がどこに表示されているかを把握する責任は、出稿する側にもあります。ファンが作るものと、無断で複製されたものは別物だという線引きも、改めて必要になっています。
民放連 — 放映権の高騰と、無料で見られる環境への危機感
同じ3月19日の定例会見で、早河洋会長は大型国際スポーツ大会の放映権高騰について「悩ましい問題」と述べました。今回のWBCはNetflixが独占配信し、東京ラウンドで日本戦が配信された試合時間帯のNHKと民放の視聴率は、3日間すべてで減少したと会長は説明しました。会長は「映像を無料で視聴者に届けることは、スポーツの発展と普及に寄与する放送の重要な役割だ」とし、英国型の「ユニバーサルアクセス権」に言及しました。ただし総務省や自民党への説明は非公式にとどまり、具体化を求める段階ではないとの立場でした(AdverTimes.)。
視聴者からは「WBCのような国民的関心の高い大会は地上波でも見られるようにしてほしい」「高齢者やネット非利用者にも配慮してほしい」といった声が寄せられていたといいます。
研究所メモ: 前号までに扱ったとおり、WBCは伊藤園がグローバルパートナーになり、Netflixが渡辺謙さんらを起用して盛り上げました。一方で、配信を見られない層が生まれています。ファンの入口を有料に寄せると、次の世代のファンが育ちにくい。 スポーツに限らず、無料で触れられる窓口をどこに残すかは、長期の顧客基盤の問題です。
公的機関と大手企業が、キャラクターで説明を試みた
日本銀行 — 経済系VTuber「MIRAI」で中学生に金融政策を説明
日本銀行が3月24日、経済系VTuber「MIRAI」が出演する教育ビデオ「経済探偵MIRAI」の配信を開始しました。対象は中学生で、クイズを交えた入門編の構成でした。全編版20分38秒と短編版5分22秒の2種類があり、いずれも日本語版と手話版を用意していました。全編版は「日本銀行の設立」「お札を発行する発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」「物価を安定させる」「金融システムを安定させる」「エンディング」の7チャプター構成です。2024年発行開始の日本銀行券の偽造防止技術にも触れていました(Mogura VR)。
研究所メモ: 中央銀行がVTuberを使うという組み合わせに、時代の変化が表れています。金融政策は言葉が硬く、中学生に伝えるには分かりやすい言い換えが必要です。説明したい内容が難しいほど、語り手の親しみやすさが効きます。2月27日号で取り上げた東京都「都星人」と同じく、公的機関がキャラクターを使って情報を発信する流れが定着しつつあります。
東京都庁 — 東京2020大会の体験を無料で残すXRエリア
東京都は3月27日に都庁第一本庁舎2階に入場無料のXRスポーツエリアを開設しました。目玉は、東京2020大会で使用されたスポーツクライミングウォールを再現した「TOKYO LEGACY XR MEMORIES」です。ほかにVRヘッドセットで江戸の街を走る「Virtual Edo Marathon」、複数人対戦の「Cyber Boccia」、スケートボード技を試せる「eSkatepark」を設置しました。3月27日から4月5日には18歳以下を対象としたスタンプラリーも実施すると発表しました(Mogura VR)。
研究所メモ: 東京都は、実際に使われた設備をXRで再現し、無料で開放しています。2月27日号では、三井不動産が協賛の価値を「場の活用」に置いていました。今回は公共施設が同じことをしている形です。大会が終わった後に何を残すかという問いに、東京都は体験という答えを出しています。
ジェイアール東日本企画×KDDI — 41項目のセグメントで駅サイネージを配信
ジェイアール東日本企画(jeki)とKDDIが、「ターゲティング配信 powered by KDDI」を2025年1月から提供していました。KDDIの位置情報・属性情報・興味関心データを、jekiのDOOHマーケットプレイス「MASTRUM」に組み込む仕組みでした。2026年3月時点で、興味関心などのセグメントは41項目ありました。配信面は首都圏20駅277面の駅縦型サイネージと、94駅184面の横型サイネージでした。データは個人を特定できない形式に加工しており、auユーザーの個別同意を得て取得していました(AdverTimes.)。
jekiの劉斌氏は、OOHやDOOHと生活者との親和性に触れ、精度の高いデータによって偶然を必然にしていきたいと語りました。
研究所メモ: 駅の広告は「たまたま目に入るもの」でした。この配信は、駅の広告をデータで特定の層に向けて出せるようにする仕組みです。例えば、イベント会場の最寄駅でその日の来場者層に向けて広告を出せます。ファンが移動する経路そのものが広告面になります。遠征を伴う推し活とは相性がよさそうです。
老舗と定番商品が、IPを使って新しい売り方を試した
日清食品×遊☆戯☆王 — カードの「簡易融合」を現実に召喚する
日清食品が3月18日正午、「遊戯王OCG カップヌードル 簡易融合 20食入り コラボカード付き限定セット」を日清食品グループオンラインストア限定で予約販売を始めました。購入は1人4セットまでで、カップ麺をモチーフにした魔法カード「簡易融合(インスタントフュージョン)」の実物カードが1枚付きます。パッケージイラストはKONAMIの描き下ろしで、段ボール梱包も遊戯王OCGデザインです。カードから「簡易融合」が現れる仕掛けを施していました(4Gamer.net)。
同社の石原亜希子氏は「『遊☆戯☆王』シリーズのカップ麺をモチーフにした魔法カード『簡易融合』を現実で食べられる商品として発売すれば、ファンの方に驚きと楽しさを提供できる」と説明しました。『遊☆戯☆王』シリーズ25周年と「カップヌードル」55周年が重なったことから、日清食品側から声をかけたといいました。
研究所メモ: 日清食品は、ゲーム内のカードに描かれたカップ麺を現実の商品として出しました。しかも梱包の段ボールまでカードに見立てています。開封する瞬間まで体験に含めた設計です。3月13日号で取り上げたチロルチョコと同じ構図です。自社商品がファンの文化の中でどう扱われているかを把握している企業は、こういう企画に辿り着けます。
BAKE「RINGO」×ハローキティ — 10周年を3段階で展開
BAKEが運営するカスタードアップルパイ専門店「RINGO」が、2026年3月に誕生10周年を迎えました。周年企画は3段階の構成でした。3月1日に人気フレーバー「焼きたて濃厚アップルパイ 3種のチーズ&はちみつ」を復刻販売しました。4月1日からハローキティとのコラボを始め、5月に周年記念商品を展開すると発表しました。コラボ商品はクーラーバッグセット・ポーチセット・ミニプレートセット(4月22日に発売)・フィナンシェ缶の全4種でした(ORICON NEWS)。
特設サイトには「ママの作ったアップルパイが大好きな“ハローキティ”をむかえ、RINGO10周年をお祝いする特別なコラボレーションがはじまります」と記されていました。
研究所メモ: RINGOは、ハローキティの設定にある「ママの作ったアップルパイが好き」という一点から、コラボの必然性を作っています。キャラクターを借りるとき、なぜその組み合わせなのかを説明できるかで説得力が変わります。設定を調べ込んだ企業だけが見つけられるつながりです。
ゴンチャ — 「お茶しよ?」でお茶を思い浮かべる文化をつくる
ゴンチャ ジャパンが3月25日から、新シリーズ「TEACRAFT(ティークラフト)」を全国で開始しました。コンセプトは「こころ、ときめく、香りのお茶。」で、第1弾は期間限定の「ストロベリー&ローズ ダージリン」です。ストレート・ミルク・アーモンドミルク、そして新たに加わったミルクフォーム使用の「ミルフォティー」という4種のティーをラインアップしていました(AdverTimes.)。
代表取締役社長の角田淳氏は「『お茶しよ?』と聞いたとき、多くの人がコーヒーを思い浮かべる現状がある」とし、「目指すのは一過性のブームではなく、『お茶しよ?』と言えば“お茶”を飲みに行く文化の定着」と語りました。
研究所メモ: ゴンチャは、自社の商品を売る前に言葉の意味を書き換えようとしています。2月20日号で取り上げたワークマンが5つの重点製品に絞って投資する方針を示したのと同じ構図です。どちらも、市場での立ち位置を言葉で決めにいっています。ブームで終わらせないという意思があれば、施策を長い期間で考えられます。
アパレルと雑貨が、IPの価格帯を大きく振り分けた
ユニクロUT×ブルーロック、CLAMP×CONVERSE TOKYO
ユニクロが2026年5月下旬、『ブルーロック』との初コラボによるグラフィックTシャツ「UT」を税込1,990円で発売しました。Tシャツには漫画のノ村優介氏による新規描き下ろしイラストを使い、潔・蜂楽・千切・凪・凛を前面に配置していました。同作は累計発行部数5,000万部を突破しており、実写映画は2026年8月7日に公開されました(アニメ!アニメ!)。一方、CLAMPとCONVERSE TOKYOのコラボ第3弾は、『東京BABYLON』『X-エックス-』をモチーフにしていました。価格はコーチジャケットが各30,800円、シルクスクリーンアートが110,000円と132,000円(税込)です。アーティスト直筆サイン入りの受注販売でした(PR TIMES)。
研究所メモ: 一方は1,990円のTシャツ、もう一方は132,000円のアート作品です。同じ週に、価格帯で66倍の差があるIP商品が並びました。ファンの支出には幅があるという前提に立てば、どちらも正解です。2月6日号では、「1人あたりの支出が下がり、人口が増えている」市場に触れました。こうした市場では、価格帯の両端を持つ企業ほど顧客を取りこぼしません。
リコリコ×TOYO、ハイキュー×Coleman、遊戯王×グラニフ
『リコリス・リコイル』が老舗ツールボックスメーカーのTOYOとコラボし、「ツールボックスDA」を5,280円(税込)で展開すると発表しました。秘密組織DAの支給品をモチーフにした、4mm径シリンダー錠対応のスチール製の箱です。AnimeJapan 2026(3月28日・29日)で先行販売すると発表しました(アニメ!アニメ!)。『ハイキュー!!』はColemanとのPOP UP SHOP「合宿バーベキュー!!」を4都市で開催すると発表しました。会場ではウォーカー25が9,900円、ルミエールランタン 烏野高校が6,380円(税込)などを販売すると発表しました(アニメ!アニメ!)。グラニフは3月24日から、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』とのコラボ商品全20アイテムを店舗で販売していました(超!アニメディア)。
研究所メモ: TOYOのツールボックスは、作中の設定を実用品に落とし込んだ好例です。鍵がかかる金属製の箱は、グッズを守りたいファンにとって実際に使えます。作品の設定と商品の機能が一致すると、ファンは飾るためではなく使うために買います。1月2日号で取り上げたキャプテンスタッグ×ゆるキャン△と同じ発想です。
ViXion2 — オートフォーカスの眼鏡が家電量販店へ
ViXionが、オートフォーカスアイウェア「ViXion2」を2026年4月17日に10万円(税別)で発売しました。焦点距離は5cmから無限遠まで自動で合っていました。レンズ径は9mmに広がっており、視野面積は従来モデルの約2.4倍になりました。本体重量は外枠なしで約40gでした。USB Type-Cで約3時間充電すれば、最大約15時間使えました。ビックカメラ21店舗、ヨドバシカメラ22店舗で体験・購入が可能でした(Mogura VR)。
研究所メモ: 2月20日号で取り上げたEven G2と同じく、10万円前後の眼鏡型デバイスが家電量販店の店頭に並ぶ流れです。ピント調節を機械が行うので、遠征先で双眼鏡とスマホを持ち替える場面などにも使い道があります。ファンが会場で使う道具の選択肢は、この1年で確実に増えました。
今週の所感
今週のニュースは、コンテンツを作った人が対価を受け取れる仕組みが危うくなっていることを正面から扱っていました。
民放連が示した111億回という再生回数と32億円という推計は、無断複製がすでに常態になっていることを表しています。同時に、放映権の高騰で正規の視聴手段は有料に偏り、無料で見られる機会は減っていました。この2つは、同じ問題の表と裏です。正規の手段で見にくくなるほど、違法な複製の需要は増えていました。
一方で日清食品と遊戯王、RINGOとハローキティのように、権利を持つ者同士がきちんと組んで作った商品には明確な価値がありました。ファンは、誰が作ったものかを見ています。
自社のコンテンツが、どこで、誰の手で流通しているか。二次創作や推し活マーケティングの設計原則とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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